九条
帽子を外し、髪をほどく。
「お疲れ様でございます」
にっこりと笑う侍女に上着を渡す。
「若葉、一体いつまで兄上のふりを続けなければいけないと思う。」
かなりウンザリとした様子で問いかけに若葉と呼ばれた侍女は少し困り顔で首を振る。
「分かりませんわ、多分兄君様が見つかるまででございましょうか?」
身を投げ出すようにベッドに倒れ込み、忙しく立ち回る若葉をぼんやり見つめる。
「やはりそうか」
ダランとしながらベッドの横にあるチェストの引き出しから一枚の写真を取り出す。
「兄上、なんで消えてしまったの?
何故妹の私にも話してくれなかったのだ」
悲しげに見つめるのは瓜二つの男女の写真
どうやら兄と自分が並んだ写真だったようだ
「海馬兄上・・・・」
写真をなぞる指を悲しげな表情で見つめる若葉
「満琉様・・・・、もう少しの辛抱でございます。」
「若葉、ありがとう」
起き上がり、若葉の手を握る。
「海馬兄上はすぐに見つかるし、私は私の生活に戻った時の心配でもしよう
さすがに男言葉だと嫁にも行けないしな」
肩をすくめ笑い
若葉が持つ服を受け取り着替え出す。
「この後はなにもなかったはずだかは休む
悪いけど夕食まで一人にしてくれ」
「かしこまりました。」
素直に出ていった若葉に感謝し、満琉は部屋着に着替え終えるとベッドに横になり目を閉じた。
今は知らないが、この後も兄は見つかる事はなく
満琉は数年間兄の身代わりを続けるはめになった。
END
このお話はめっちゃ短いです。