氷の魔女
「突然失礼します」
いきなりの土下座に思わず後退りしてしまった
一体なんなんだろうか?
「俺、カイって言います」
そのカイさんがなんの用なんだろうか
「どうか俺を
あなたの
弟子にして下さい。」
はぁ?
意味が分からない
「貴方ここがどこで私が誰か分かってるの?」
「勿論です!!」
本当なのだろうか?
「貴方が今噂に聞く。
ギルド[牙雷]の『氷の魔女』サリアさんですよね?」
どうやら本気らしい
「生憎弟子は取るつもりはない」
だからこそ、きっぱりと断る。
「どうしてですか?
強くなりたいんです、だから」
「強くなりたいのは、分かった。」
「じゃ」
期待に輝く瞳には悪いが
「親の脛をかじる子供は強くなりはしないから
だから
帰りなさいお坊ちゃん」
はっきり言ってやるのも大人の務めだ。
将来有望な少年を危険極まりない世界に身を置かせていけない。
「分かったなら帰るんだ。」
そう促して、身を翻した。
仕事はまだある。
急げば夕刻までには間に合うだろう
もはや少年の事は忘れ、頭の中は仕事の事になった。
だからだろうから
少年が小さく呟いた事を聞き流してしまったのは
「諦めません。絶対に貴方を手にいれるまで」
不気味に笑ったことも
「あらあら、『氷の魔女』も厄介な者に好かれたわね」
独り言のように老女が木陰から姿を現す
そして去って行ったサリアを見て
「予言しよう
『氷の魔女』サリアよ
汝、進む先に黒曜の翼に囚われる
しかし、同時に太陽を授かるであろう」
優しく囁き、次にカイに向ける。
「予言しよう
魔女を追いしカイよ
汝、歩むは覇の理に彩られる道
望みはその身に捧げられるであろう」
厳しく断言する。
「全ては太陽の覇道のままに」
小さく呟いて、老女は跡形も消えた。
そして、ここから
『氷の魔女』と呼ばれしサリア
と
後に『理の覇王』となるカイ
二人の伝説が時を刻み始めたのは
END