表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
  作者:
1/9

果てある者

『創世の光 一筋瞬く


始まりの闇 生を授ける


風が起き 水が泣き 火が走り 大地は開く


すべてが目覚めた時


混沌は静かに無を連れ、眠りの淵へと下る


そして世界が産声をあげた


最初の智を宿した者は世界に愛された者


無と対をなす有の存在


その者、名を


          <創世書>第一章抜粋』    




何度も教えられた


諳んずる事が出来るまで


だから貴重な存在だと理解はした



何故?


王女と言われるはずの私が


手足を枷に繋がれ、瞳の光を奪われなければならないのか


悔しい、悲しい、怒り


しかしそんな思いも徐々に薄れていく


失われていく


これも


なにもかも


私が


[創世の御子]だからだ


幾年が過ぎただろうか


私がこの塔に幽閉されて


肩ぐらいだった髪は床に付き、最初はまったく届かなかった本棚の上段


大きいと思っていたベットは窮屈になってきた


瞳の光を奪われて以来、朝も夜も分からなくなった


時折やって来る人や食事を持って来る人も何も自分に話さない


ただ、感じるのは


私を人としてではなく、そう道具の様子を窺う視線だけだ


そして


今日もまたこちらに近付いて来る足音が響く


もう慣れきっていた私にはその足音などどうでも良いことだった


だから床に描かれた魔法陣に座り込み、ただ空を見上げていた


だから気付かなかった


この足音の人物が自分をこの小さな世界から救い出してくれる人物だと


だから静かに入ってきた人物が、自分の後ろに来ても振り向かなかった


また自分を観察して出ていくだろうと


すぐに居なくなるのだからと


しかしいつまで経っても立ち去る様子がない


しかも自分を見つめる視線はいつもとは何かが違った。


だからだろうか、重たい身体に力を入れて振り返ったのは


視力は無くしたが、他の感覚を強めて後ろの人物を視た


若い


自分よりは年上だろうが、いくつか違うだけだろう


雰囲気からして青年だ


それにやはりこの青年が私を見る目はいつも来る人達とは違う


なんと表現すればいいのか


ちゃんと人として見ている、道具を見るようなではなく


だが一歩退いたところから接している気がする


だからと言って嫌悪は感じない


一体なんなんだろうか?


不思議としか思えない


そして、ついに青年が動いた。


風の動きからして、青年は自分の前に膝を付いたようである


「はじめてお目にかかります、御子様


今日より貴女様の騎士を拝命しました


ケネス・ウィーラと申します」


何を言ってるのだろうか?


「誠心誠意務める所存です」


何故この方、ウィーラ様は私に膝を付いている


私の騎士?


声を出そうと口を開く


「一体、分からない?、理由」


しかし上手く話せない


声は奪われなかったが、誰かと話す事を奪われていたので、声はかすれ聞きたい事が聞けない


「何故とは異な事を、この国をその力で守護される、御子様をお守りするのは当然の事」


その言葉は何かストンっと胸に落ちてきた


「分かった、よろしく」


そう頷いて身体を元の位置に戻す


「御子様、何かあればお呼び下さい」


声を再び掛けられたが、軽く首を縦に振り、また空を見上げた


「綺麗な人だったな


あの方が『創世の御子』様であり、我が国の第一王女ジャスティナ様


幼い身で一人、祈りの塔に入られた方

今日から自分の主となる方か」


手を握り締め、ケネスが笑う


「あの小さな身体でこの国を守護する御子様を精一杯の力で支えて差し上げなくてはな」


そして今、出て来た扉の向こう側にいるだろう新たな主に向かい一礼し、階段を下りて行ったのだった


彼はまだ知らない、真実を


捩曲げられた事実


『創世の御子』と言う存在


まだ幼かったはずの王女の幽閉手足の枷と視力の封印


国の守護とは


突然の騎士の配置


たくさんの謎を問い掛けながらも


物語は始まった


悲しみと涙と愛に彩られた二人の数奇なる運命の歯車が


ゆっくりと回り出した


彼女達が辿るのは


幸せの未来?


悲哀に泣く未来?


それとも





END

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ