破壊神アレス
・・・
・・・・・
・・・・・・・・・・・!
俺はどうなったんだ?
突然の目眩に襲われて目を開けると異世界が広がっていた。
見渡すと15世紀ぐらいのヨーロッパの街並み。人の服装も皆、現代のものとかけ離れている。
本当に何が・・・、、
***
宗二(そうじ)は気付いていなかった。
この世界が神々が当たり前のように住む世界であることを――――――
そして、それは今宗二がいるこの場所さえも神々が訪れることを。
周りの空気が一瞬濃くなり、辺りにいた人間は全員地面に頭をつける。
その中で黒髪の少年・・・宗二だけが立ちつくしていた。
――――――――何でみんな頭を下げているんだ?
勿論宗二にも空気の変化には気づいていた。
だが、動けなかった。これが幸運なのか、不運なのか――――――
周りの人間たちは宗二の行動に驚いていた。
それも当然。この世界は『神』という人間を超えたものに礼儀を尽くすのが一般的だ。
それを『神』の目の前に立つという行為をしている人間がいるのだ。驚いて当然だ。
――――――――誰だろう?この鎧の人?
それは目の前にいる『神』と呼ばれる者に向けた疑問だった。
そして、
「あの、、ここがどこだか教えてもらえませんか?」
その場にいた人間全員が驚いた。「罰あたり」だの「殺される」だの物騒な言葉を宗二は浴びていた。本人はその言葉に気付いてすらいないのだが。
「我の前に立ち、尚そのような問いをするとは・・・・」
――――――――話し方も変わってるな。偉い人なのかな?
「あ、失礼しました、、他の人に聞くのでいいです」
それでも既に遅かった。
「『神』の前に現れたということは死は覚悟はしているのであろう」
「え?!」
「運が良ければ死なない可能性もあるかもしれんがな!」
黄金の鎧に包まれた神はその体の周辺から影を放出し、宗二に巻きつけていった。
「・・・・ッ何だ、、これ?、、、、」
「我は神なのでな、色々都合があるのだよ。」
「・・・・・・・答えになって、、ない・・・・・」
そこで宗二は意識を失った。その後何もなかったのように神は消えた。
***
俺の中で何かが語りかける。
『意識はあるか』
あるのかな?
『こうやって我の問いに答えることが出来るのはあるということだろう』
あれ?そもそもアンタと会話しているの当たり前になってるけど、誰?
『破壊神アレス』
・・・・・神様?
『お前のような奴でも神の道具として使ってやるだけ感謝しろ』
・・・・道具って、、いくらなんでもそれはどうかと思うが・・・・・。
神様って・・・・・俺死んだの?
『いや、こうして話が出来るのは生きている証拠だ』
よかった。。とりあえず生きているのか。。。
『ただ、お前は誰の加護も受けていないが・・・。それは何故だ?』
加護?それは何だ??
『そのおかげで俺の影を取り入れて尚人格が保てるのかもしれんがな』
影?
それにしても、何で心の中で会話が出来ているんだ?
『それは我がお前自身だからだ!』
え!?何そんなことになったの、、
『我が・・・もういいか。俺が自由に動くためには人間の駒が必要だからだ』
それがさっき言ってた理由か。
でも、自由を手に入れたとして何がしたいんだ?
『大したことでもない。戦を探すだけだ』
探してからどうするの?
『勿論。戦うだけだ!!』
戦の神様何だっけ?
『簡単に言えばそうだ』
『話が長くなったがこれは協力ではなく強制だ』
拒否権がないのらしょうがないし、
『物わかりがいいな。だが、俺も他の神共に見つかるのは色々とマズイ。俺は戦があるところでしか出て・・・・・後は・・・・・・・・・好きに・・・・・・す・・』
「おーーーい!!」
ん?あの声ではない別の声を聞いた俺はとりあえず、ベッドから起き上がることにした。
「誰?」
「ああ、俺はこの街に住んでいるトゥーイット・バーン。よろしく」
「よろしく。ところで何で俺がここにいるの?」
俺は確か・・・倒れて。それから神様と話して・・・・。
「え!?あぁ、、アレス様が来てその後倒れたんだけど、、、」
とにかく目的はないから。しばらくのんびりしてこうかな?
『目的ならあるだろ。俺の戦だ』
「あー、、この辺りで戦とかないかな?」
「戦?何で??働くとこないなら俺が紹介するけど、、」
「そういうことじゃなくて、単に俺が行きたいだけなんだ」
厳密には俺じゃなくて―――
「珍しいな・・・。やっぱり――――――――。まあいいや。聞いた話だと、ここからかなり離れてるけど『ネスト』ってとこで戦が起こりそうなんだって。国境付近だし、やっぱりいつ起こってもおかしくないらしいよ」
じゃあ、とりあえずそこに行くかな。
「ありがとう」
「いいよ。俺も付いて行かせてもらうし」
「付いていく?誰が??」
「俺が」
「えw」
どうやら親に既に承諾を貰ったらしい。何故俺と一緒に行くのか、疑問は多いが、あえて聞かないことにした。俺も一人だと何かと心配だ、この世界のことは何も分かんないし、
『この世界?』
なんか一人で考え事出来ないよな。今の状態だと・・・。
『やはり、そうか。この世界の人間ではないとは思っていたが・・・』
そんなに変?
『違和感は感じないが、お前のその服装や加護のこともあったからな』
そういえば加護って?
「準備できたし行こうぜ」
「ああ、、」
『その話はまたの機会にしてやる』
「その前にその服はやめとけよ、目立つぞ」
そんなに変なのか?
今の服装は赤と黒の無印Tシャツに黒のベスト、下は白黒チェックのズボンといった感じだ。
「分かったよ、」
手早く着替えを済ませた。
「とりあえず、次の目的地は隣町の『ベニト』だ」
大して俺の世界の服装から離れているわけではないが・・・俺は赤のワンポイントアクセントの付いた白いマントを見て考えていた。
これは痛々しいな。
「ベニトってとこは何が有名なんだ?」
「俺のいた街とそんなに変わんねぇよ」
そういえば、俺・・あの街は何も見てないな。
「って、言ってもあんま分かんないか、、」
「まあ、」
しばらく沈黙が続き、何を考えていたのか重々しく口を開き始めた。
「あの街には、多分お前は二度と戻れないと思う。あんな場面見た人もいたし、色々と・・・・」
「そんなもんなのか、」
まあ、予想は出来ていた。だから・・なるべくあの街から早く出たんだろうな。俺のために。
ありがとう。
「でさ、俺たちも『お前』とか呼ぶの止めようぜ。名前で呼ぼうぜ」
「俺は名前長いからトトでいいよ。お前は?」
「俺は
『待て!!』
『本名は言うな。偽名を使え』
偽名って・・・この世界のこと知らんし、どんな名前が一般的なの?
『仕方ない、アレウス・エリュトロンにでもしておけ。俺がたまに人間に化けるときの名前だ』
「どうした?」
「・・・・・・・俺は、アレウス・エリュトロンだ。。アレウスって呼んでくれ」
「アレウスね・・・。」
歩いている最中は考え事で時間を費やした。
一つ聞いてもいいか?
『・・・・』
さっきは、人間に化けるって言ったけどそれすれば俺なんかに憑依っていうかそんなことしなくてもいいんじゃないのか?
『人間相手ならな。それが神相手であれば気付かれるから無理だ』
俺の中に居ればどうなるんだ?
『人間どころか神にすら気付かれない』
そういえば、さっきは何で俺が名前を言うのを止めたんだ?
『加護がない人間はこの世界には少ない』
スルーかよ、、まあ、いいや。
加護?さっきも言ってたけど、それって・・・
『加護というのは、生涯で神一人から神の加護を受けることだ』
具体的には?
『俺だったら体が丈夫になるとかだったと思うぜ。最近は加護なんて与えてないから俺の加護持ちなんて
世界で数人ぐらいしかいないと思うがな』
俺って口調が微妙に変わってないか?
『人の前だったからな・・・少し気取った言い方をしていただけだ、、』
へえ・・・w
『・・・』
で、最近って?
『数千年ぐらいか・・・・例外もあるが―――』
『俺がこうやって人間の中に入れるのは加護持ちじゃない奴又は俺の加護持ちの奴だけだ。それ以外の加護持ちの奴でも中には入れるがソイツの人格が壊れて俺の気配が他の神にばれちまうからな』
『お前に入ったのは一時的なもののはずだったんだが・・・』
俺が加護持ってないからそのままってわけか。
『まあ、ちょうどいい駒が見つかったってわけだ』
駒って、、人をそんな風に・・・
「誰だ!!」
トトが叫んだので現実に引き戻された。
「どうした?」
さっきから周囲で誰かが見張っていたらしい。
コソッと伝えられた。
(逃げるぞ)
(了解)
一瞬でその場から離れたが、そんな俺らよりさらに行動が早かった追跡者。
囲まれた・・・・、、
(どうする?)
(俺は戦えないぞ)
大人しく・・・・してるか。
「金目のものを出せ」
黒ずくめのローブをした男達がくぐもった低い声で話しかけてきた。
(なぁ金持ってる?)
(俺は持ってない?)
(俺も)
「何をこそこそしている!!とりあえず、一人人質にしておくか」
俺は引き寄せられ首元に小型ナイフのようなものを当てられた。
「コイツが殺されたくなかったry
一瞬俺は意識を失った。
そして、口が自分の意識以外で動いた。
『寝ていろ!』
その一言と同時に黒ずくめ全員が意識を失ったように倒れた。
「何が起こったんだ?」
トトには言うべきかな?
いや、こんなことをむやみに話すものではないな・・・。
「さあな・・・何があったんだろうな」
「・・・・」