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Solve  作者: 黒藤紫音
自分勝手なお人好し
55/77

いいよね

この章はこれで終わります。

 

 涼護たちが大男や黒服たちを倒してからしばらくすると、通報された警察が店内に突入してきた。

 とはいえもう事件は解決してしまっていて、彼らの仕事は事件解決から事情聴取になっていた。

 詩歩が警察の相手をしている間に、汐那や涼護たちは医務室へと向かわされた。

 手当てを終えた医師が席を外したのを見計らい、医務室のベッドに寝かされている涼護を見ながら汐那は口を開く。


「わかってはいたけどさ、君ってバカだよね」

「これは名誉の負傷だってェの」


 ベッドに寝転がっている涼護が、唇を尖らせてそう言い返してくる。

 その言葉に汐那はくすくすと笑う。


「まあ、護ってもらった立場の人間がいうことじゃないけどね」

「“護ってやった”つもりはねェぞ。俺が勝手に護りたいと思ったから護っただけで」

「あ…………、……うん」


 言葉の微妙なニュアンスの違いを察し、汐那は俯く。

 “もらった”“やった”だと、まるで「仕方がない」から護ったように聞こえてしまう。涼護は「仕方がない」から護ったのではなくて、「そうしたい」と思ったから護った。それだけなのだろう。

 あの巨漢に見栄を切った時のように、ただそうしたいと思ったから。


「…………やっぱり、違うなぁ」

「あん?」


 誰に聞かせるつもりでもなく呟いた汐那の独り言は、涼護の耳に届いていたらしい。

 寝転がったまま、顔だけが汐那のほうを向く。


「何がだ?」

「あ、聞こえてたの?」

「この距離で、二人きりなのに聞こえないわけないだろが」

「……ああ、たしかに」


 その通りだった。自身の不手際に、知らず汐那の内心に苛立ちが募っていく。

 涼護のほうは、続きを話せと言わんばかりに汐那をまっすぐに見つめている。


「……で、なにがだ?」

「あはは、大したことないよー。それに乙女の秘密は聞いちゃだめだよ?」

「茶化しても引いてやらねェぞ」

「…………」


 涼護の目は真剣だった。そんな目に射抜かれ、汐那は竦んでしまう。

 それを敏感に感じ取ったのか、涼護は身体を起き上がらせると、汐那の頭に手を置いた。


「…………ふぇ?」

「怯えんな。落ち着いて話せ」


 ゆっくりと涼護の手が汐那を撫で始める。

 撫でられる心地よさからか竦みが解け、汐那は口を開いた。


「……君と、私が違うなって」

「なんだそりゃ。当たり前だろ」

「……うん」

「男と女だし、違ってるだろうよそりゃ。けど、それが何か悪いってことじゃない」

「……そう、いうことじゃ、ないよ」


 言葉の意図がわからないようで、涼護は片眉を釣り上げた。

 汐那は撫でられながらも、涼護のその仕草に失望を感じた。


「私は、君みたいに、“そうしたいから”なんて理由で、動けないから」

「……はァ?」


 そんな声をあげ、涼護は撫でるのをやめて怪訝そうな顔をした。

 その表情が、仕草が、声が、汐那の琴線に触れた。


「……君はいいよね」

「あ?」

「…………支えてくれる友達がいるのが。したいことができるのが。したいと思えることがあるのが!」


 悲痛な声でそう叫び、汐那は荒っぽく立ち上がるとそのまま医務室から飛び出ていく。


無理やりだったかな、展開……

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