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Solve  作者: 黒藤紫音
仕事風景
44/77

どうした?

9章終了です。

ようやくです……

「素行調査か何か?」

「ノーコメントだ。つかお前マナーはどうした」


 詩歩が離れて行った後、汐那が声をかけてきた。

 そのくせ返答は期待していなかったらしく、汐那は涼護の言葉を聞いてもにこにこ笑っているだけだ。


「……で、お前この後どうするんだ?」

「うん?」

「まだ仕事残ってるから、詩歩さん戻ってきたら俺らまた移動するぞ?」


 車を取りに行かないといけないので一度戻る必要はあるが。

 涼護がそう言うと、汐那は唇に指を当てて考えるような素振りを見せた。


「ん、それなら私もそろそろ家帰るよ。ありがとうね、付き合ってくれて」

「気にすんな。またなんかあったら言えよ」

「うん、ありがとう」


 そうしているうちに詩歩が戻ってくるのが見えた。

 涼護が詩歩のほうに足を向けると、汐那は別の方向に足を向けていた。


「それじゃあ、私ここで」

「おう」


 そう言って汐那と別れると、涼護は歩き出した。

 すぐに詩歩と合流し、二人並んで歩く。


「綺麗だったわねェ、さっきの子」

「そりゃ現役モデルですからね」

「あら意外。涼護が素直に認めるなんて」

「うっせェ」


 何かを誤魔化すように早足になる涼護。

 そんな涼護を見て詩歩はくすくすと微笑い、追いかけるために駆け足になろうとして。


「きゃあ!?」


 悲鳴が聞こえ、涼護と詩歩が振り返った。

 汐那が自転車に乗った男に突き飛ばされていた。

 男の手には明らかに女物のバッグ。見間違えでなければ、あのバッグは汐那のものだったはずだ。


「ひったくりかよ!」

「みたいね!」


 涼護が舌打ちと共に走りだし、詩歩もそれを追うように走りだした。

 自転車はスピードを増して向かってくる。


「どけえ!」

「どかねえよ」


 涼護は臆することなく自転車の前に躍り出て、叫んでいる男の顔面に拳を叩きこんだ。

 空中に投げ出された男の身体が地面に叩きつけられると同時に、乗り手を失った自転車が倒れる。


「うぐ……」

「逃げられるわけないでしょ?」


 鼻血を噴きつつも逃げようとしていた男の腕を詩歩が極めた。

 その腕から、ゴギンと何かが外れる音がした。


「わざわざ肩外さんでも」

「後ではめるわよ」


 言いつつ、詩歩は激痛に悶えている男の手からバッグを奪い取った。

 それを認めつつ、涼護はこちらに向かっている汐那に声をかけた。


「蜜都、怪我は?」

「平気。ありがと」

「はい、これどうぞ。蜜都さん」

「ありがとうございます」


 詩歩からバッグを受け取りつつ、汐那はじっと涼護を見た。

 涼護は身じろぎしながらも、その視線を受け止めた。


「なんだよ?」

「捕まえてくれたのはありがとう。でも自転車をパンチで止めるとか……バカ?」

「バカ言うな。正面から衝突するわけにもいかないだろうが」

「そういう問題?」

「こいつにとってはそういう問題なのよ」


 けらけらと笑いながら、詩歩は涼護の頭に手を置いた。

 ぐっと押さえつけながら、その頭を撫でまわした。


「なんにせよよくやったわ愛弟子!」

「ちょ、褒めるにしてもやり方考えてください痛いんですけど」


 口では憎まれ口を叩く涼護だが、決して嫌がってはいないことがその口調と様子から見て取れた。

 それを詩歩もわかっているのか、にこにこと笑いながらぐしゃぐしゃと頭を撫でまわしていた。

 二人のその姿は、まるで母親が息子を褒めているような光景で。


「……っ」


 二人を見る汐那の顔が、一瞬悲しそうな顔をしたのが涼護には見えた。

 詩歩の手を頭からどけて、涼護は口を開く。


「蜜都、どうした?」

「なにが?」


 汐那は笑顔だった。先ほどの悲しげな顔は、涼護の気のせいだと言わんばかりに。

 一瞬気のせいだったのかとも思いそうになったが、絶対に気のせいじゃないという妙な確信が涼護の中にあった。

 それは詩歩も同じだったようで、じっと汐那を見つめていた。

 そして、唐突に口を開いた。


「んー……ねえ、蜜都さん」

「はい?」

「GW、暇?」

「え?」


 誰かが呼んだのか、パトカーのサイレンの音が聞こえた。


次章はいつになるかわかりませんが、早めにしたいと思います。


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