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Solve  作者: 黒藤紫音
身体測定
36/77

「感謝する」「お互い様」

更新ー。

さてはて。


 汐那は、自分の体力測定を一通り終わらせた。

 周囲を見渡すと、ほぼ全ての女子の測定が終わったようだ。

 涼護たちのほうへ向かっていた未央もすぐに戻ってきて、残っていた測定を先ほど終わらせていた。

 そろそろ男子と女子の交代である。


「次身体測定かぁ……伸びてるかな……」

「別にもう充分じゃないの?」

「……せめて160はほしいの、何かある度に涼護に「平均身長もないチビ」とか言われるし」

「笹月さん、今何センチ?」

「…………152です…………」

「あー……」


 汐那が何かで読んだ本によると、高二女子の平均身長は150後半だったはずだ。

 それを考えると、未央の身長は確かに低い。 


「ふーん……蜜都は?」

「前に測った時は、170……だったと思う」

「170!?」


 高二女子の平均身長から考えると、10センチ以上上の数値だ。

 汐那自身、高い方だとは思う。


「モデルってそれくらいないと映えないんだよね」

「それはそれは……私は168くらいだったかな、前は」

「初見さんも充分高いよ……羨ましい」


 羨むような声で晶を見る未央(152センチ)。

 そんな彼女を汐那(170センチ)と晶(168センチ)が微笑ましい目で見ていた。


「そういえば、和泉さんは?」

「さあ?」

「さあって……」


 苦笑しつつ、汐那は周囲を何気なく見渡すが、見当たらない。

 汐那自身、菜摘とは面識もほとんどない上に、彼女の髪色も別に珍しいものでもないので、殊更見つけられない。

 涼護なら、すぐに見つけられる自信はあるが。


「蜜都。に、未央に初見か」


 今だってそうだ。

 涼護が気付いて声をかける前には、汐那はもうその姿を見つけていた。


「おう、乙梨」

「ん」

「涼護、さっきのことは後でまたお説教だから」

「いや今回俺は悪くねえから」

「お黙りなさい」


 二人のやり取りに噴き出しそうになるのを必死にこらえる汐那。

 そして、深理が眉間を寄せているのに気付いた。


「どうかしたの、枝崎君?」

「……別に」


 ずいぶんと素っ気ない返答である。

 晶の言っていた通り、深理は女性が苦手、というよりは関わり合いになりたくないようだった。

 事実、深理の視線は、汐那にはまったく向いていない。


「そういや勇谷、アンタ身長何センチだった? ついに180に到達したか?」

「うるせえほっとけ」

「してないのか」

「ほっとけいいだろああ到達してねえよ!」


 夏木がノンブレスでそう言い切った。

 どうやらこの二人もそれなりに親しいらしい。


「未央、話後でいいだろ。俺ら測定行くから」

「ああ、うん。じゃあ後で覚悟してなさいね」

「全力で逃げ出したい所存」

「ちょっと!」


 また口論が始まりそうになっていた。

 汐那としてはそれ自体は構わないのだが、涼護の言う通り、今は測定をしてしまったほうがいい。

 そのためにも今は体育館である。


「笹月さん、それは後にして、先に体育館で測定しない?」

「え、あ、うん。いや、でも」

「乙梨君捕まえるのなら私も手伝うから」


 ね、と未央を見て言う。

 まだ少し悩んでいる様子の未央の背中を、汐那はもう少しだけ押すことにした。


「枝崎君たちも協力してくれないかな?」

「は?」

「俺らも?」


 聞き返してきた深理と夏木に、汐那はこくんと頷いた。

 そしてちらり、と深理に視線を向ける。

 それだけで、汐那の意図は伝わったらしい。


「……そうだな。涼護が逃げるようなら、捕まえるのを手伝おう」

「おい」

「俺は蜜都ちゃんのお願いならいくらでも喜んで!」

「待て」


 涼護が何か言っているが、聞き流すことにする。

 ちら、とまた深理に目を向けると、向こうも汐那を見返して、にや、と笑っていた。

 

「……そうね、捕まえるの手伝ってくれるのなら、まあいいかな。今は測定終わらせたほうがいいでしょうし」

「まあ、ここで止まってるのも迷惑っちゃ迷惑だよなぁ」


 未央の言葉を補足するように、晶が言う。

 そして軽くパン、と手を叩いて、汐那が場をまとめた。


「行こうか、笹月さん、初見さん」

「ん、了解。じゃあね三馬鹿」

「また後でね、涼護、枝崎君、勇谷君」

「ああ」

「ういうい」

「えー、あー……おう……」


 不承不承ながらも頷いた涼護を連れて、深理と夏木は止めていた足を動かし始めた。

 汐那たちも歩き出し始める。

 と、すれ違う瞬間に、深理が声を顰めて、汐那に言った。


「……感謝する」

「何が?」

「話をさっさと終わらせたことと、二人のやり取りを止めたことだ」

「お互い様でしょう?」

「……だから、色んな意味を込めて、感謝してるんだ」


 お互い、相手のほうを向かず、前を見ながら話していた。

 短い会話を終え、歩いていた二人の距離は開いていく。


「蜜都さん?」

「蜜都?」

「すぐに行くよ」


 距離が開いてしまった未央と晶に追いつくため、汐那は少しだけ足を速めた。

 向こうも似たようなことになってるんだろうな、と思いながら。




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