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Solve  作者: 黒藤紫音
身体測定
33/77

『情報屋』

ネタ的にどうなんだろうこれ。下手したら公開停止?



「お前ら元気有り余ってるのはいいが、使う場所を考えろ、三馬鹿共」

「へーい」

「はい……」

「うす」


 取っ組み合いを始めた三馬鹿を止めたのは、斑目だった。さすが担任と言うべきだろうか。外れクジ引かされただけとも言えるかもしれないが。

 まあそれはそうと、普段目立つこの三人がおとなしく説教を受けている図というのは、それなりに滑稽なものだった。

 パシャリ、とシャッターを切る音が聞こえた。

 涼護が音のしたほうを向くと、赤茶の髪をした男子が携帯を向けていた。


「……ブンヤ先輩?」

「ああ、乙梨。どうかしたか?」

「どうかしたかじゃねえです。アンタ何してんスか」

「滑稽なこの光景を撮ってる。来週の新聞の三面記事くらいにはなるだろう」

「せめて二面にしてくださいよっていうか肖像権の侵害で訴えますよアンタ」


 携帯電話を操作している彼の名前は、宮都伊鶴(みやといづる)

 涼護が先輩と呼んでいることからわかるだろうが、三年生だ。

 新聞部の部長である。

 ちなみに“ブンヤ”というのは彼のあだ名だ。意味は推して知るべし。


「ふむ。それなら弱みにでもするか。笹月にでも渡せば説教だろうな」

「頼みますから未央にゃ言わんでください」

「お前の態度次第だな」


 言いつつも、伊鶴は携帯を操作するのをやめない。

 涼護ははあ、と溜息をついた。


「ちなみに乙梨。身長はいくつだった?」

「……180スけど。そんな情報知ってどうするんスか?」

「どんな情報も知っておく必要があるのさ。『情報屋』としてはな」

「……俺みたいなのの情報が需要あるのか甚だ疑問ですけどね」


 『情報屋』。

 涼護が『何でも屋』、“トラブルバスター”であるように、伊鶴もまたこの陽羽学園であるポストについている。

 伊鶴は『情報屋』の名の通り、陽羽学園の情報を主に扱っている。

 生徒たちの生年月日血液型身長体重スリーサイズ(男のスリーサイズなんぞ需要はないだろうが)などのパーソナル情報から始まり、誰が誰を好きだとか、知られると恥ずかしい秘密だとかなどもだ。

 その情報の精度は誰もが認めるところで、涼護も仕事の関係で情報が必要になった時は伊鶴から買っている。


「まあ、これくらいは知っておかないと、『情報屋』なんて名乗れんさ。……ああ、後ろの二人も教えてくれるか」

「俺らもスか?」

「別に構いませんが……」


 伊鶴は深理と夏木にも声をかけた。

 まあこの二人の情報なら需要があるだろうなァ、と涼護は思う。

 深理は美形な上に文武両道なほぼ完璧超人なため、女子生徒たちにかなり人気があるし、夏木もチャラいが、所属しているサッカー部ではエース級の活躍をしていることもあって、実は隠れた人気がある。

 少なくとも自分の情報よりは、欲しいと思う生徒はいるだろう。


「179ス」

「181です」

「そうか。……しかし二人とも、二年のくせに俺より高いとかむかつくな。微妙に嫌な噂流してやろうか」

「勘弁してください」

「ホントお願いします」


 二人とも頭を下げた。

 まあ伊鶴にかかれば、ちょっとした噂なんて一日二日あればすぐに学園中に広まるだろう。

 逆もまた然りだが。


「冗談だ。ちょっと仕事を手伝ってくれればそんなことはしない」

「それ軽い脅迫でしょうが」


 苦虫を噛み潰したような顔で涼護はそう言うが、伊鶴は別段堪えた様子もなかった。こいつもたいがい図太い。


「あ、そうだブンヤ先輩」

「どうした?」

「蜜都ちゃんや朝雛先輩のスリーサイズとかわかりません?」


 がくん、と脱力した。隣では、深理も同じように脱力している。

 軽い調子で何を訊いてるんだこいつは。

 そして周囲の男子共も耳を傾けているんじゃない。


「ああ、蜜都のスリーサイズは上から――」

「何言おうとしてんですかアンタ!?」


 全力で止めた。

 スリーサイズなんて、女性にとっては体重と並ぶくらいのトップシークレットだろうに。


「別に蜜都のは問題ないだろう。HPのプロフで公開されてる」

「それはそうかもしれませんけどそうじゃなくて。アンタ、あのままだったら妃先輩のスリーサイズも話しませんでした?」

「心配しなくても、勇谷にしか聞こえないように言うさ。不特定多数にスリーサイズなんて何に使われるかわかったもんじゃない」

「……いやそもそも話さんでくださいよ」


 不特定多数にスリーサイズなんて知られたら、性質の悪いプレゼントが彼女の元に届きかねない。

 実際、『Solve』で働いていて、そんな事例に立ち会ったこともある。


「勇谷になら大丈夫だろう。信用できる」

「いやそれはそうですけど」


 確かに夏木は信用できる相手だとは思うが、周囲の人間に聞こえないとも限らない。そして周囲の人間皆が、信用できるかどうかはわからない。

 降りかからないで済む悪意は、降りかからなくていい。


「ああ、ちなみに笹月のは――」

「未央のスリーサイズ公開しようとしたら潰しますよアンタ」


 一応そこには太い釘を刺しておいた。



次話もたいがいだけど……。


感想、レビューもらえると嬉しいです。



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