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Solve  作者: 黒藤紫音
身体測定
32/77

平均180センチ

一週間ぶりです。

このネタで一章持つかな?


 本日、陽羽学園では身体測定が行われることになっていた。

 この学園では、身体測定と共に、体力測定も行われている。

 今日一日は授業をせずに、丸一日使って全ての生徒が身体測定と体力測定を行う。

 男女に分かれ、片方が体育館で身体測定をしているうちに、片方はグラウンドで体力測定をする。

 つまり、身体測定をする時、陽羽学園に通う1000人近くの生徒の約半分が、第一体育館に集まることになる。ちなみに男子が先に身体測定をしている。


「非効率的な気がするな」

「そうかァ?」


 深理の言葉に、涼護はそう返した。

 二人とも、当然ながら体操服姿である。

 手には測定結果を書きこむカルテがある。


「人数が多い。学年別に日を分けてやったほうがいいと思うが」

「まあ確かに、一度に全校生徒を測るのは非効率的だけどな。でもその分一日で終わるぜ?」


 俺はそっちのほうが楽でいい、と涼護は言う。

 その気持ちはわかるけどな、と深理は同意しながら苦笑していた。


「おーい、何の話?」


 二人が話していると、夏木が声をかけてきた。

 何やら楽しそうに笑っている。


「ちょっと効率の話してた。つか、お前こそどうした?」

「おお。聞いてくれよ涼護」


 尋ねられると、夏木は破顔して涼護の肩に腕を回した。

 訊かなきゃよかったかもしんねぇ、と涼護は内心で思ったが後の祭りである。


「身長2センチ伸びてて、179センチになった。あと1センチで180センチだ」

「さよか。そりゃ良かったな」

「あと1センチ……伸びるのか?」

「大丈夫だろ、あと1センチくらい。すぐに伸びるだろーよ。運動してるし飯食ってるし」

「だといいがな」


 嫌味っぽい深理の言い方だが、特に夏木は気分を害したわけでもないようだった。笑っている。

 まあそれはいいから、いい加減離せ、と言わんばかりに、涼護がその笑い顔に軽く裏拳を入れる。

 ぐは、と大げさな動きで夏木は涼護から離れた。


「つーか、お前らまだ身長測ってないのか?」

「あー、そういや忘れてたわ。行くか?」

「そうだな」


 涼護がそう提案すると、深理は頷き、二人とも身長測定の列へと向かって歩き始めた。

 夏木はその姿を一瞬だけ見送ると、次の測定へ向かって、こちらも歩き出し始めた。



「180センチ。伸びたなぁ、お前」

「ういす」


 身長測定を担当していた斑目の言葉に、涼護はそう返した。

 なんとも適当というかぶっきらぼうな言い方だが、これはまだ、涼護としてはかなり好意的に返したつもりである。

 斑目は、涼護が一年生だった時も担任を務めていたこともあって、涼護のそういった性格には慣れていて、気分を害した様子もない。

 涼護は、斑目のそういう話のわかるところが気に入っていた。授業中寝てても文句言わないし。その代わり、課題を山ほど出されるが。

 だがそういうところも、涼護を問題児扱いする教師たちとはまるで違っていて、そこもまた気に入っていた。


「次、枝崎」

「はい」


 斑目の言葉を聞いて、涼護は深理と場所を交代する。

 ついでに置かれている机でカルテに身長の測定結果を書きこむ。

 そして列から離れ、次はどの測定に行こうかと考えながら周りにふと視線を向けると、茶髪が視界に入った。

 向こうもこちらに気付いたようで、歩いてくる。


「涼護、何センチだった?」

「180センチ。去年と比べると2センチ伸びたな」

「マジかよ!」


 夏木が大声でそう言う。

 視線が一瞬集まるが、二人の姿を見て、すぐに離れる。

 なんだかんだ目立つ二人なので、周囲も慣れているようだ。単に関わりたくないだけかもしれないが。


「うーわー、先に180の大台乗られたか……」

「別に落ち込まんでも。さっきお前が自分で言ってただろが、あと1センチくらいすぐだとか」


 珍しく、本当に珍しく涼護がフォローした。

 とはいえ、夏木も本気で落ち込んでいるわけではなかったようで、すぐにけたけた笑っていたが。

 そうしているうちに、黒髪がこちらに近づいてくる。


「何やってるんだ?」

「深理。いや、涼護が先に180の大台に乗ってやがったことに憤りを感じてただけ」

「いや落ち込んでたろ。つか、乗ってやがったってなんだ」


 そう指摘する涼護だが、夏木は気にしたようでもない。

 深理は、二人のやり取りを聞いて、そっと目を伏せた。


「どうした、深理」

「いや、その……俺は夏木に謝らないといけないかもな……」

「……どうしたんだよ?」


 何やら深刻な様子の深理に、夏木も真面目な顔をしたそう訊いた。

 悲壮な顔つきで、深理は口を開いた。


「俺、身長181センチだったんだ……」

「自慢かよ1センチ寄越しやがれ女顔がああああ!!」

「誰が女顔だ!!」


 がば、と取っ組み合いが始まった。

 涼護ははあ、と溜息をつく。また周りの視線が集まってるだろが。


「おいやめろお前ら」

「不良は黙っていろ。いい加減ケリをつける」

「バカは黙ってろ。この野郎仕留める」

「オーケーその喧嘩買ったぜ」


 そして、止めに入ったはずの涼護も取っ組み合いに参加した。

 さすがは三馬鹿。莫迦である。




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