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Solve  作者: 黒藤紫音
転校三日目
31/77

三馬鹿

高校生っぽいネタです。

「ごちそうさまでした」

「おそまつさまでした」


 買ったコッペパン、妃のサンドイッチ一箱分を綺麗に食べ終わり、涼護は手を合わせた。

 微笑みを浮かべながら、妃がランチボックスを仕舞っていく。


「マジで旨かったです。機会があったら、また食べさせてください」

「ええ、いいですよ」


 涼護と妃がそう仲良く話しているのを、氷実が不機嫌そうな様子で見ていた。

 その視線から目を逸らしついでに涼護は生徒会室にかけられている時計を見る。


「それじゃあ俺、教室に戻ります」

「そうですね、それじゃあ、私たちも戻りましょうか、五月雨君」

「……そうだな」


 広げていた弁当を片づけ、氷実は立ち上がった。涼護や妃もそれに倣う。

 生徒会室から出ると、涼護は妃や氷実とは違う方向へと向かった。


「妃先輩、氷先輩。それじゃあ、また。何かあったら呼んでくださいね。手伝いますから」

「ええ。その時はよろしくお願いしますね」

「はい。あ、サンドイッチ、ありがとうございました。本当に旨かったです」


 そう言い残して、涼護は自分の教室に駆け足で戻っていった。

 ふと振り返ると、妃が手を振っていたのが見えた。



「あ、涼護。おかえり。どこまで行ってたの?」


 教室に戻ると、未央が出迎え、そう尋ねてきた。

 別に隠さないといけないことでもないので、そのまま何があったか話す。


「妃先輩と飯食ってた。あの人のサンドイッチマジで旨かった」


 自分の席に戻りながら、涼護はそう言った。

 すると、教室の空気が一瞬固まり、そして次の瞬間、爆発した。


「涼護羨ましすぎるぞオイ!」

「死にくされ乙梨!」

「殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺殺」


 夏木を筆頭に、教室中の男子生徒から怨嗟の声が上がる。

 涼護はそれらに呆れながら言う。


「お前らそんなに羨ましいか? 食べてる間中、氷先輩がこっち睨んでくるんだぞ?」

「あー……」


 その言葉に納得したのか、怨嗟の声は収まっていった。

 そんな男共を尻目に、汐那は未央に尋ねる。


「妃先輩って誰?」

「朝雛妃さん。この学園の生徒会長なの」


 未央が簡潔に説明する。汐那もそれに納得したのか、それ以上訊こうとはしなかった。

 そして教室の空気が柔らかくなっていく中、夏木がけらけら笑いながら口を開く。


「あの人の前ではおとなしいんだよなー、涼護」

「仕方ないだろ、あの人の前でいつも通り振る舞うとすごい悪いことしてる気分になる」


 拗ねたような口調でそう言う涼護。

 どうでもいいが、涼護のような不良面だと、拗ねたような口調はいっそ笑えるほどに似合わない。


「何かあったの?」

「あー……。俺一年の頃、三階からダイブしたことあるんだけど。その時に涙ながらに諭されたからな」


 汐那にそう答えながらその時のことを思い出したのか、涼護は苦虫を噛み潰したような表情をしていた。所在無げに首を掻きつつ言葉を続ける。


「なんつーか、罪悪感がすごいんだよ。それ以来、あの人の前でバカはできねェ」

「……とか言いつつ、あの人の前以外じゃバカやってるけどな。エロ本持ってきたり」

「そりゃお前もだろうがァ!」


 夏木の発言に、涼護が食ってかかる。

 確かに昔その手の本を持ってきたことはあるが、それは夏木も同罪だ。


「んだよ、あれ良かっただろ?」

「そうだけど、そうじゃねえよ。お前も持ってきてたのに、自分は関係ないみたいな言い方したのがむかつくんだよ」

「そりゃわるうござんした」


 反省してるようには聞こえない夏木の口調だったが、これ以上この話を続けたくないので涼護は口を噤んだ。

 さっきから女性陣、特に未央の視線が痛い。

 そんな涼護と夏木を見て、深理がぽつりと呟いた。


「バカ二人だな」

「なんでお前は無関係みたいな顔してるんだムッツリが!」


 今度は深理の言葉に噛みつく。

 深理は、自分はまったく関係ないと言いたげな表情で涼護を見た。


「なんだ」

「なんだじゃねえよ。自分は関係ないみたいな言い方すんなムッツリ」

「何の証拠があって……」


 深理のその言葉に、夏木がくくっと喉で笑う。

 涼護が夏木のほうを向くと、夏木もこちらに目を向けていた。


「深理のパソコンの中にはー、秘蔵フォルダがあるんだよなー?」

「ちなみに中身は黒髪の……」

「オイ待てェ!」


 涼護と夏木の言葉に、深理が血相を変えて立ち上がり、そう叫んだ。

 教室中の視線が深理に向くが、それを無視して深理は二人に詰問する。


「なんで知ってる!?」

「前に泊まりで遊びに行った時、パソコンの中身をちょっとな」

「プライバシーの侵害だド阿呆が!」


 夏木にそう叱責すると、次いで深理は未央のほうを向いた。

 突然自分のほうを向かれて、未央は驚いて目を見開いていた。


「笹月、違うからな!?」

「なんで未央に言い訳してんだよ」

「女顔でも男なんだよな」

「誰が女顔だ不良面とチャラ男がァァァ!!」


 深理の地雷を踏んだ。

 普段の彼からは想像できないような、荒い口調が飛び出る。


「俺が不良面で」

「俺がチャラ男なのは事実だけど」

「「お前の女顔も事実だろ?」」


 明らかに憤慨している深理に、涼護と夏木は軽い口調で言い放った。

 ぶちり、と何かが切れる音がした。


「お前ら二人とも表に出ろ決着つけてやる」

「上等だコラ」

「やるか、アァ?」


 深理の売り文句に、まず涼護が立ち上がった。

 続いて夏木も立ち上がる。

 教室の中が不穏な雰囲気になっていく中、それを破ったのは、その場にそぐわない軽い声だった。


「おいそこの三馬鹿、その辺にしとけ」


 いつの間にか教室に入ってきていた斑目が、涼護、深理、夏木をひとまとめにしてそう呼んだ。

 案の定というべきか、彼らはそれに噛みついた。


「誰が三馬鹿か!」

「まとめないでくださいこいつらと!」

「言うに事欠いて三馬鹿って!」


 さっきまでの不穏な雰囲気が嘘のような息の合い方である。三人からすれば不本意極まりないだろうが。

 そんな三人を見ても、斑目はからからと笑うだけだった。


「仲いいなぁ、おい。三人仲良く廊下に並ぶか?」

「だからまとめないでください!」


 深理がそう叫ぶ。

 涼護は無言で半ばキレかけていた。

 夏木もぎゃーぎゃーと騒いでいる。

 なんともまあ、バカな光景である。

 ちなみに。


「あっははははははははは!」


 汐那はエロ本のくだりくらいから笑いをこらえていたが、斑目の「三馬鹿」のフレーズとその後のやり取りに、ついにこらえきれず、大爆笑していた。


 結局、斑目曰くの「三馬鹿」たちは廊下に立たされ、汐那は爆笑し、未央は呆れていた。

 そうして、今日という一日は終わった。


無理矢理な終わり方です。

次回投稿は未定です。


推敲やらでいつになるかわかりませんが、なるべく早く投稿したいと思います。

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