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Solve  作者: 黒藤紫音
一息ついて。
23/77

『乙梨涼護』だから

書き直しました。


でも、これもなんか違うんですよね。

「おはよう、蜜都さん」

「おはよう、笹月さん」


 翌日。

 陽羽学園、2-2の教室。

 汐那は、何事もなかったように登校していた。


「昨日はありがとう。楽しかったわ」

「そっか、なら良かった」


 汐那は、未央とそう話しながら、自分の席に着く。

 鞄を置いて、ちら、と前を見ると、そこは空席だった。


「あれ、乙梨君、まだ?」

「ああ、涼護、結構遅刻するから」


 しょうがない奴だよね、なんて未央の言葉に、あはは、と笑う。笑いながら、内心で思う。

 ……なるべく、早めに話したかったんだけどな。

 もちろん、昨晩のことだ。

 あのストーカー――――引っ越し先のこの陽羽市にまでついてきて、汐那をさらった男――――がどうなったのか、気にはなる。

 それに、涼護が言っていた『Solve』も気になる。汐那の母親からの依頼とか言っていたが。

 汐那は当事者のはずなのに、どこか蚊帳の外だ。

 それが気に入らない。


「どうかしたの、蜜都さん」

「あ、ううん、何にも」


 少し考え込んでいたのが顔に出ていたのか、未央が少し心配そうにそう声をかけた。

 一瞬素で返しそうになるが、すぐに猫を被ってそう返した。

 ……未央なら、素で接しても、変わらず接してくれそうではあるが、けれど、もし変わってしまったら。

 それは、怖い。

 なんて考えていると、次の未央の言葉に、心を読まれたのかと思った。


「……涼護と何かあった?」

「……どうして、そう思うの?」


 冷や汗を、一筋かいた。驚きや戸惑いが、顔に出ていないか、心配になる。

 未央は、そんな汐那の内心を知ってか知らずか、うーん、と唸って、口を開いた。


「涼護だから、かなぁ。すぐに厄介事に巻き込まれるし」

「……そう」


 厄介事というなら、昨晩とんでもないことに巻き込まれてましたが。

 同時に、彼のそういう性質は、周知の事実なんだとわかった。

 面識がほとんどない相手だろうが、その相手がどんな危険な状況になっていようが、助けようとする。

 彼のそんな性は。


「なんか、わかるなぁ、それ」


 ぽつり、とそう呟いてしまう。

 しまった、と思った時には、もう遅かった。


「やっぱり、何かあったんだね」


 未央は確信を持った声で、そう言った。

 あ、と気づいた時にはもう遅い。


「……えっと……」

「あ、大丈夫。別に何があったか、なんて訊くつもりはないから」

「……そう?」


 ……それはありがたいが、けれど、それでいいのか、とも思う。


「涼護のことだから、きっと蜜都さんの事情に首突っ込んだんでしょ? いつものことだよ」

「……まあ、うん」


 どうせ何かあったこと自体はバレてしまっているし、そこは肯定する。 

 ……まあ、いつものことなんだ、とは思ったが。


「涼護のあれは、もう病気だからね。……でも」


 そこで、未央は一度言葉を切った。

 そして。


「それが『乙梨涼護』だからね」


 そう言い切った未央の顔は、苦笑しながらも、けれどどこか誇らしげだった。


「……そうだね」


 汐那も、同意する。 

 くす、と微笑いながら。 


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