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Solve  作者: 黒藤紫音
一息ついて。
21/77

「信じるよ」「信じろ」

前に投稿してから一週間越えてるぞ!


別の小説書いてました。

それに夏休みも終わったので、これからは更新遅くなると思います。



 などとしていると、唐突に車の音が聞こえてきた。

 音のしたほうに目を向けると、その車はこちらに近づいてきて、汐那や涼護の前で止まった。

 そして、運転席の窓から、妙齢の女性が顔を出した。


「無事に助けたみたいね、涼護」

「ええ、まあ」


 どうやら涼護と知り合いらしい彼女は、車から降りると、こちらを見た。


「初めまして。貴女が蜜都汐那さんね?」

「そうですけど……?」

「私は、詩堂詩歩(しどう しほ)。涼護の上司」


 詩歩は、端的にそう名乗ると、今度は涼護に向き直った。


「犯人は?」

「中で伸びてます」

「そう」


 それだけ確認すると、詩歩は、廃工場へ向かって駆け出した。

 中に入っていくのを見た涼護は、汐那に話しかけた。


「後処理はこれで良し。俺らはこのまま帰るぞ。送っていく」

「……いいの?」


 汐那は、詩歩が入っていった廃工場を見てそう言うが、涼護はくく、と喉で笑った。


「大丈夫だ。詩歩さんだし。……道すがら、色々説明する」


 そう言って涼護は自転車に跨った。

 そして、後ろの部分を叩く。


「乗れよ。こっちのほうが速いし。……まあ、クッションとか、気のきいたもんはないけどな」

「出来ればあって欲しいけど……まあ、いいわ」


 歩くのも面倒だし。

 内心でそう思い、汐那は涼護の後ろに横座りで座り、涼護の背中に腕を回した。


「落とさないでね」

「いいからお前はしっかり掴まってろ。行くぞ」


 そう言って、涼護は自転車をこぎ始めた。



「警察に連絡入れなかったのは、依頼主の意向なんだよ」

「依頼主って――――私のお母さん?」

「ああ」


 涼護と汐那を乗せ、二人乗り状態になっている自転車は、夜の道を走っていた。

 たまにライトを点け忘れている莫迦がいるが、涼護はちゃんと忘れずに点けて走っている。

 そして、自転車を走らせながら、涼護は事情を説明していた。


「あんまり大事にしたくなかったんだろ、ストーカー被害を受けてたとかさ」

「まあ……確かに、プラスの印象受ける人は少ないと思うけど……」

「それにしたって過剰な気がするが……まあ、それはいいよ」


 そう言って、涼護は面倒くさそうに会話を切り上げた。

 が、横座りで座っている汐那は、まだ気になることがあるのか、涼護に向かって口を開いた。


「けど、それにしたって危ないよね。君たちが」

「うちはそれなりに実績あるからな。あんな行動に出た奴もいなかったわけじゃないし」


 涼護はその時のことを思い出しているのか、少し懐かしげな声だった。

 何があったのか、少し興味はあったが、それよりも気になることを訊く。


「でも、あいつどうなるの?」

「詩歩さんがどうにかするだろ。まあ、その辺りの詳しい事情知りたかったら、後処理が終わった後に説明する」

「そう……」


 そう言った汐那は、一見何も気にしてないように見えた。

 それを知ってか知らずか、涼護は言う。


「心配すんな。お前には、絶対に二度と手を出させないから。俺が護る」

「……乙梨君」


 安心させるように、笑っている涼護に、汐那は微笑んだ。

 ……不思議だ。

 ほとんど面識もないのに、どうして、こんなにも安心できるんだろう。

 汐那は、涼護の背中に頭をとん、と押し付けて。


「うん。信じるよ」

「ああ。信じろ」


 汐那が言った、「信じる」というその言葉に。

 涼護は、臆面もなく、「信じろ」と返した。


「……ふふ」

「なんだよ」

「何にも」


 汐那は柔らかく微笑んでいた。

 前を見ている涼護には、その顔は見れない。


「っていうかさ……私、今胸押し付けてる状態よね」

「指摘するな、人が必死に無視しようとしてんのに!」

「それはそれでむかつくなぁ……えい」

「さらに押しつけんなー!」

「ひょっとして、狙ってた?」

「んなわけあるか!」


 夜の道、自転車を二人乗りしている男女が、そんな痴話喧嘩を繰り広げていた。



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