何でも屋『Solve』
ばたばたしてて投稿できませんでした。
「――――っ、ここか!」
自転車を乗り捨てて、走る。
もう使われていない、チンピラがたむろしているような廃工場。
大扉の前には、車が止めてあった。
おそらくは、これで汐那をさらったのだろうが、今はそんなのどうでもいい。
閉じられている大扉を、力いっぱいこじ開ける。
大扉はすんなり開いて、ガン、と大きな音を立てた。
そして広がった光景には、男が十数人立っていて、そして、正面の柱に、汐那が縛り付けられていた。
「――――蜜都!!」
叫んで、廃工場の中に飛び込んだ。
汐那の真近くにいた男が、涼護を見て怯えていた。
「な、何だお前……」
「……誰でもいいだろ、それより蜜都、大丈夫か」
つかつかと、汐那に向かって歩いていくと、男たちが立ちふさがった。
「……どけ」
そんな男たちに、涼護は一言だけそう言うが、男たちがにやにやと笑うだけだった。
どうやら、どく気はないらしい。
「どけ、って言ってんだろ」
「……ああ、お前、汐那ちゃんのクラスメイトだっけ?」
男は落ち着いたのか、にやにやと笑って言った。
「助けに来たの? 騎士気取り? 恥ずかしい奴……」
「黙れ」
まだ何かを言おうとしていた男を、強く睨んで、一言で黙らせた。
「う、く……お、お前ら、やっちゃえ、そんな奴!」
明らかに涼護に怯えているその男は、そう言った。
その言葉を受けて、男たちは、涼護を取り囲んだ。
にやにやと笑うその様子からすると、自分たちが負けるとは、露ほども思っていないらしい。
「……蜜都」
「ぇ?」
「……すぐに助けるから、待ってろ」
汐那のほうを見て、そう言った。
そして、囲んでいた男の一人が、涼護に殴りかかった。
涼護はそれを軽く避けて、鳩尾に肘を叩き込んだ。
男は肺の中の空気をすべて吐き出して、鳩尾を押さえて、その場にうずくまった。
足を振り上げ、その頭を、上から下に容赦なく踏み抜く。
ガン、と床と頭部がぶつかり合った。
「……さあ、来いよ!」
そう叫んで、涼護は男たちに殴りかかった。
○
圧倒的だった。
数としては、明らかに涼護のほうが不利だった。
おそらくは十人以上対一人だ。
だというのに。
「っふ!」
綺麗な孤を描いて、足は振り落とされた。
頭にヒットして、その男は崩れ落ちる。
男の拳を避けたと思ったら、次の瞬間には、その男の顔面に腰の入った拳を叩き込む。
鼻血を吹いて、その男は吹っ飛んだ。比喩ではなく、2メートルは吹っ飛んだ。
まるで嵐のように、足技、拳を繰り出し、その度に、男たちは吹っ飛んでいた。
そして、また一人、男が崩れ落ちた。
「……すご」
汐那は、今自分がどんな状況にいるかも忘れて、そう呟いた。
それほどまでに、涼護は圧倒的だった。
確かに、これだけ強ければ、強盗犯の一人くらい、楽に捕まえられるだろう。
……などと思っている内に、最後の一人が倒れた。
「……な、あ……ぇ?」
汐那の近くにいて、涼護を倒すのには参加しなかった男が、茫然とそう呟いた。
「……これで、お前一人だな」
ぽき、と拳を鳴らす涼護。
その様子からは、ついさっきまで十数人の男相手に大立ち回りしていた風には見えない。
まだまだ余裕そうだった。
「……な、何なんだよお前」
つかつかと、汐那に向かって歩いていくと、男はそう言って怯えた。
「く、来んな! 汐那ちゃんがどうなってもいいのか!?」
そう言って、男は懐からスタンガンを取り出して、汐那に向ける。
ついでに口を塞ごうとしたのか、汐那の口に手をやって――――、その指を、思いっきり噛まれた。
「いった……!」
「触んな!」
そう叫んだ汐那に、涼護が思わず吹き出した。
そして足を強く踏み込み、駆け出す。
「……ああ、そういやお前、何なんだとか訊いてたな。いいぜ、教えてやるよ」
走りながら、拳を握りしめて、力を込める。
「『Solve』」
射程距離まで詰め寄り、腰をひねって、思いっきり頬に拳を叩き込んだ。
拳の威力で、男はくるくると回りながら吹っ飛んで、そのまま回りながら倒れた。スタンガンも、床に転がる。
「――――何でも屋『Solve』従業員、乙梨涼護だ」
展開がベタなのは目をつぶってください…!
文才が欲しい…