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Solve  作者: 黒藤紫音
歓迎会
13/77

登校

 翌日。

 今日も二度寝をした涼護は、欠伸をしながら登校していた。


「あ、おはよう乙梨君」


 涼護がまた出てきた欠伸を噛み殺していると、汐那が声をかけてきた。

 汐那はそのまま涼護の隣に並ぶ。


「おう、おはよう。蜜都、こっち側なのか?」

「うん。住んでるところからだと、こっち方面になるかなー」

「ふーん。……そういや、陽羽の街のこと、知ってるのかお前」

「どこに何があるかってこと? あー……そんなに知らないかも」


 陽羽市はすごく大きいというわけでもないが、かといって狭くもない。

 涼護も越してきた一年目は、どこにどんな店があるのかわからなかった。


「そうか。ま、住んでるうちにわかるだろ。未央辺りなら案内するとか言いそうだし」

「それ、ちょっと悪いような……」

「人の世話焼くのが趣味みたいな奴だから、好きにさせとけよ」


 実際、越してきたばかりの涼護に街を案内したのは未央である。

 この街で生まれ育ったわけあって色んなところを知っており、おかげで買い物やら何やらが楽になった。

 流石に路地裏などの危険な場所は教えてくれなかったが。


「そっか……。じゃあ、好意に甘えさせてもらおうかな」

「そうしとけ」


 会話が途切れた。

 何か話そうかと、涼護は会話のネタになりそうなものを探そうとして、別にいいかと思い直した。

 これからどうなるかはわからないが、少なくとも今現在、涼護にとっての蜜都汐那とは、その程度の存在だった。

 そうして会話もなく歩いているうちに、校門が見えてきた。



「あ、おはよう、涼護……って、蜜都さんも」

「おはよ」

「おはよう、笹月さん」


 流れで教室まで一緒に来た二人に、未央が声をかけた。

 それにつられ、教室中の視線が涼護たちに集まる。


「え、なんで二人で登校してんの?」

「まさか蜜都さん、乙梨の毒牙に……!?」

「おのれ乙梨、笹月さんだけでなく、蜜都さんまで……!」


 何やら非常に不愉快なことをほざいていた奴らを、涼護は思いっきり睨みつけた。

 一瞬ですべての視線は逸らされた。


「あ、そうだ。蜜都さん」

「何か?」

「今日の放課後、都合いい?」


 未央の言葉に、その場で考え込む汐那。

 それを何か不都合があると受け取ったのか、未央が慌てた様子で付け加えた。


「あの、無理ならいいよ。あ、ひょっとしてお仕事とか……」

「ううん、こっちに慣れるまでは仕事は入れないようにしてもらってるから。うん、放課後は大丈夫だと思うけど?」

「そっか。良かった」


 そう言い、未央はほっと安心したように息を吐いていた。


「でも、何の用なの?」

「それは……できれば、秘密にしたいな。あ、でも教えてくれないと駄目って言うのなら……」


 空回りするほど気遣っているのがよくわかる未央の様子に、汐那がくすりと微笑ったのが見えた。


「ううん。それなら秘密でいいよ。大丈夫」

「良かった。なら放課後、『(うち)』に来てくれる?」

「うん、わかった」


 汐那がそう頷いたのを見てから、未央は涼護のほうを向いて言った。


「涼護もね」

「……へーい」


 涼護としてはここでごねることもできたが、どうせ未央に押し切られ、結局は『桜』に行くことになることが簡単に予想できるので素直に頷いた。

 そもそもこういった場面で男が女に勝てるわけがない。

 などとしているうちに、チャイムが鳴った。


「おーい、立ってる奴ら、席に座れー」


 斑目が入ってきて、立っていた生徒が各々の席に座っていく。

 未央や汐那、涼護も自分の席に座った。


「……じゃ、ホームルーム始めるぞー」


 そうして、今日の陽羽学園は始まった。



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