第4話 評価を拒む者
それから俺は、意識的に“人を評価しない”ようにした。
仕事の出来。
将来性。
向き不向き。
頭に浮かびそうになるたび、強引に思考を切り替える。
これは偶然だ。関連なんてない。
そう言い聞かせながら。
だが、世界は俺の都合なんて待ってくれなかった。
昼休み。
オフィスの給湯室で、後輩の西野が愚痴をこぼしていた。
「正直、向いてない気がするんですよ。この仕事」
以前の俺なら、こう返していただろう。
――向いてないなら、別の道もある。
だが今回は違う。
「……わからないな。向き不向きなんて」
逃げるように言って、その場を離れた。
その夜、夢を見た。
白い空間。
文字が浮かぶ。
【判定進行中】
【補助者の介入を確認】
【評価拒否を検出】
評価拒否。
その単語が、やけに胸に残った。
翌朝、嫌な予感は的中する。
西野が来ていない。
遅刻かと思った。
だが昼になっても、夕方になっても現れない。
「西野くん? そんな社員、最初からいないけど」
上司は即答だった。
社内システムにも、履歴はない。
写真も、連絡先も、記録も。
――消えた。
俺は何も言っていない。
評価を避けた。
それでも、結果は変わらなかった。
その夜、夢はさらに鮮明になる。
【判定結果:不合格】
【対象:西野 恒一】
【理由:判断不能】
判断不能。
ぞっとした。
評価したから消えたんじゃない。
評価しなかったからでも、消える。
つまり――
俺に拒否権はない。
画面の端に、新しい項目が追加されていた。
【補助者ステータス:固定】
【解除条件:未設定】
固定。
逃げられない。
やめられない。
目が覚めても、心臓の鼓動が収まらなかった。
俺は理解してしまった。
この“判定”は止められない。
関わるか、関わらないかではない。
すでに関わっている。
そして、世界は次の段階へ進もうとしている。
【次回判定対象:集団】
文字を見た瞬間、背筋が凍りついた。
――個人じゃない。
次は、もっと大きい。
世界は、容赦なく選別を続ける。
俺を、補助者にしたまま。




