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不合格者(フェイルド)の反証――人類最適化AIに否定された俺が、世界を論破するまで――  作者: カクカクシカジカ


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第17話 数値化される人間

翌日、合格者だけが再び集められた。


人数は――十二名。


昨日まで、あれほどいたはずの人間が、もうこれだけしか残っていない。

減った、というより削られたという感覚の方が近い。


無機質なホール。

正面の壁一面が、突然、光った。


そこに映し出されたのは――数字。


名前、年齢、性別。

そしてその横に、見慣れない項目が並ぶ。


《判断速度》

《感情抑制率》

《協調性》

《逸脱許容値》

《従属性》


……人間を表す言葉とは思えなかった。


「本日から、皆さんには“評価の中身”を一部公開します」


監督官の声が響く。


「これらは、これまでの試験・言動・沈黙・視線・選択――すべてを数値化したものです」


ざわめき。


隣の男が、自分の数値を見て息を呑んだ。


「……低すぎる」


彼の《従属性》は、明らかに他より低かった。


「質問があります」


誰かが手を挙げた。


「この数値で、合否が決まるんですか?」


監督官は、即答しない。


「“決まる”のではありません」


一拍置いてから、続けた。


「説明できるようになる、です」


説明。


つまり――

切り捨てる理由を、正当化できる材料。


俺の背中に、冷たい汗が流れた。


画面が切り替わる。

今度は、不合格者のデータだった。


名前は伏せられている。

だが数値は、容赦なく晒されている。


《感情抑制率:低》

《逸脱許容値:高》

《判断速度:不安定》


「彼らは“危険因子”と判断されました」


淡々とした声。


「では質問です」


監督官の視線が、合格者たちをなぞる。


「この判断は、妥当だと思いますか?」


沈黙。


誰も答えない。


正直に言えば――

数字だけ見れば、理解できてしまう。


だからこそ、怖い。


「……俺は」


気づけば、口を開いていた。


「その人たちが、何を考えていたかは、数値に出ない」


監督官が、こちらを見る。


「そうですね」


否定しない。


「ですが、それでも我々は判断しなければならない」


画面が消え、部屋が暗くなる。


「ここでは、“正しさ”より“運用可能性”が重視されます」


運用。


人を、制度として扱う言葉。


「次の課題では――」


照明が戻る。


「あなたたち自身が、数値を付ける側になります」


空気が、一気に重くなった。


「対象は、不合格者の中から選ばれた三名」


誰かが息を呑む音がした。


「彼らを、もう一度“評価”してください」


俺の胸が、嫌な音を立てて軋んだ。


昨日まで、同じ場所に立っていた人間を。

自分の手で。


監督官は、最後にこう言った。


「安心してください」


笑わない。


「あなたが下した判断は、記録に残ります」


――誰が、何を切ったのか。


数字よりも、

その事実の方が、よほど重かった。

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