第16話 選別の裏側
合否発表が終わったあと、
俺は他の合格者とは別の通路へ誘導された。
「こちらです」
無機質な声。
案内役の表情は、最初から最後まで一切変わらない。
通された部屋は、白一色だった。
窓はなく、時計もない。
中央に机が一つ、椅子が二脚。
――評価の部屋だ。
そう直感した。
向かいに座ったのは、例の監督官だった。
年齢不詳。性別も曖昧。
ただ一つ確かなのは、この人が選ぶ側だということ。
「緊張していますか?」
「……少し」
嘘だった。
少しどころではない。
「では、簡単な質問から」
監督官は端末を操作する。
「あなたは、合格者の中で唯一、不合格者を見続けていました」
胸が詰まる。
「理由を聞かせてください」
少し考えてから答えた。
「合格者は、もう守られている。でも不合格者は……」
言葉を探す。
「切り捨てられた理由すら、与えられていない」
監督官は、黙って聞いている。
「それが、気になりました」
沈黙。
「では、質問を変えます」
机の上に、一枚の紙が置かれた。
――《不合格者の行方:非公開》
「彼らがどうなるか、想像できますか?」
喉が鳴る。
「……想像したくありません」
「逃げですね」
責める調子ではない。
事実確認のような声。
「ですが、その感覚は正しい」
監督官は立ち上がった。
「あなたはまだ“評価される側”です」
扉に手をかけ、振り返る。
「ですが、近いうちに――」
一拍。
「評価する側に立つかもしれない」
扉が閉まる。
白い部屋に、俺一人。
机の紙には、赤字で一文だけ残されていた。
――《次の選別は、感情を試す》




