第13話 説明できない正しさ
不合格者が消えた席は、すぐに「無かったもの」になった。
誰も話題にしない。
誰も目を向けない。
それが、この場のルールだった。
残った人数は、明らかに減っているのに、空間はむしろ窮屈に感じる。
――理由を説明できない正しさは、罪になる。
さっきの不合格理由が、それをはっきり示していた。
俺は端末を伏せ、周囲を観察する。
発言を控える者。
逆に、急に饒舌になる者。
どちらも危険だ。
沈黙は「逃げ」と見なされる。
饒舌は「誘導」と見なされる。
正解は――整合性。
自分の行動が、すべて一本の線で説明できること。
「ねえ」
声をかけてきたのは、例の女だった。
「さっきの入力、何書いた?」
「評価構造への影響度」
事実だけを返す。
女は一瞬黙り込み、唇を噛んだ。
「……それ、分かってる人の言葉だよ」
「そうか?」
「うん。だから怖い」
怖い。
そう言われるのは、悪くない。
ここでは、「分からない人間」より「分かっている人間」が先に狙われる。
壁面が再び光った。
『次の課題を提示します』
『本試験:相互評価フェーズ』
空気が張り詰める。
『あなた方は、互いを「合格」「不合格」に分類してください』
『ただし』
一拍。
『今回は、全員を合格にすることも可能です』
ざわめきが走る。
「全員……?」
「そんなこと、できるのか?」
画面が続く。
『ただし、その選択が妥当であると、全員が説明できた場合に限ります』
俺は、内心で笑った。
――無理だ。
全員合格は、理論上は可能。
だが、感情が邪魔をする。
誰か一人でも「こいつは違う」と思えば、その瞬間に破綻する。
これは、善意の罠だ。
全員合格を選んだグループほど、内部崩壊が早い。
俺は、静かに次の手を考え始めた。




