第15話 それぞれの別れ
グリフィン事件からまだ二週間しか経っていない。
傷を負ったザックは峠を越え、少しずつ回復の兆しを見せている。
しかし、ひだまりの村では新たな動きが待っていた――娘たちの旅立ち、そしてカエデの新しい日常の始まりだ。
ベッドの上で横たわるザックの呼吸は落ち着きを取り戻していた。
「……カエデ、今日は……どうなってるんだ?」
「大丈夫、ザックさん。皆、元気よ。でも今日はちょっと特別な日です」
リヴィアは、事件後すぐに帝都へ向かい、メイの魔法学校マギカへの推薦手続きを進めていた。
「リヴィア先生も、もう帝都で動いてくれているはず……」カエデは心の中で安堵する。
その日の午後、ひだまりの村の入り口に、もじもじと少年が立っていた。
「は、初めまして……ぼ、僕、ロイっていいます」
ポルカに連れられた十四歳の少年、ロイ。メイと同い年だが、その雰囲気は頼りなく、自信のなさが透けて見える。
「ロイくんは勇者見習いなんだよ」ポルカが説明すると、メイは驚きの声を上げる。
「ゆ、勇者見習いって……すごいじゃない!」
「ち、違うよ!全然すごくなんかない!」ロイは慌てて首を振る。
メイは微笑みながら言った。
「でも、それでも勇者を目指してるんだよね?」
ロイは小さくうなずく。
「……うん。僕、強くなりたいんだ。でも本当に才能のある人って、メイちゃんみたいな子のことを言うんだと思う、だってメイちゃんは僕と同い年なのに飛び級であのマギカにはいるんでしょ?」」
メイは驚きつつ少し照れ臭い表情したあとすぐに真剣な表情に変わる。
「じゃあ、約束しよう」
「や、約束……?」
「うん。私は魔法学校で強くなる。ロイくんは勇者になるために頑張る。そしていつか……お互いに胸を張って会えるようになろうよ!」
二人は小指を絡めた。未来への小さな誓いだった。
一方、リンはメイの安全を気遣い、帝都まで同行することに。その後、森で幼少期に出会った師匠、ユイリに会い、修行をつけてもらう予定だ。
「カエデ、一人で大丈夫?」
「うん、大丈夫。ひだまりも皆で支え合ってくれる」
カエデは微笑むと、村での新たな日常の始まりを胸に刻む。
ポルカは相変わらず世話焼きで、メイのことをあれこれ説明しながら見守る。
「メイはん、14歳で風の攻撃魔法使えるんやで、天才や、て・ん・さ・い!魔法学校行っても、しっかりせんとあかんで!」
「うん、頑張る!」メイは元気に答える。
カエデはその光景を見ながら寂しさを感じていた。
「もう、皆とお別れか~」
レオがそばに寄ってきた。
「カエデ、別れは出会いや、これからは鑑定の能力で相手を見抜き、より良い人材を仲間にするのじゃ」
自然とカエデはうなずく
「でも、少し不安だな~」
いつもの元気なカエデの口調ではなかった。
「カエデ、わしが案内人でおるじゃろ~」
カエデにこやかに微笑む
「よ~し、皆に負けないように私も「ひだまり」を巨大ギルドにしてみせる!!
その言葉がギルド中に響き渡り歓声があがる。
こうして全能力Gのカエデの第一章は幕をとじるのであった
ひだまりを巻き込んだ、とんでもない事態がすぐそこまで来ているとは誰もしらない・・・
今回の物語は、ひだまりでの一つの区切り。
旅立つメイとリン、そして小さな約束。
カエデは一人でギルドを守る日常が始まる。
新たなる仲間「ロイ」を中心に物語は進んでゆく、
第二章もおたのしみに