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勇気の書 5

「ほら、ここ。空間に穴が空いてる。見える? 昨日はなかったのに」

「……?!」

 

 よく見ると、空間、空気、後ろの本棚。それらを繋げる小さな空間がごっそりと抜け落ちていた。まるで、水に沈んだ拡大鏡で見たかのように後ろの本棚が歪んで見える。


 昨日は気がつかなかったようだ。


「変なの? 誰よこんな奇妙なことをしたのは?!」


 弥生が仰天しているが、的確なことを言っているように思う。


 そうだ。

 これは誰かの仕業だ。


 白花の方を向くと、わからないといった顔をしている。


 弥生と敦は興味深々で、抜けた空間に手を入れようとした。


「駄目!! 危ない!! 手が無くなるわよ!!」


 咄嗟に白花が警告をした。


「なんなんだ。これ?」

 敦の顔が見る見る険しくなった。

 不可思議なものへの警戒心が出たのだろう。


 弥生は竹刀袋を持って辺りを警戒しているようだった。


「この先に何かある。私は見てみるわね。」

 白花が抜けた空間に顔を近づけた。 


「大丈夫か?」

「大丈夫よ。私は自分のどんな怪我も癒せるの」


 白花が屈むように抜けた空間に顔を入れた。


 途端に、「ワッ!」と驚いて顔を引っ込めた。


「この空間の先はとても……危険そうよ! おどろおどろしい邪教団みたいな魔術師たちの部屋があったの! それに、一人に気がつかれてしまったわ!」

「?!」

「みんなきっと逃げたほうがいいわ!! 急いで!」


 弥生と敦は、落ち着いた白花の剣幕に気押されて、すぐさま逃げ腰になった。

 突然に抜けた空間から顔がニュッと出て来た。

 

「やあ、君たち。こんにちは。どこから来たのかい?」


 ぼくたちは一斉に男の顔を見た。20代半ばの男性だった。とても紳士的で、どう見ても邪教団の一人には見えなかったが?! 


「全員! 顔は覚えたぞ!!」


 すぐに紳士的だった男の顔が醜く歪み抜けた空間に引っ込んだ。


 それを見たぼくたちは、恐怖して一目散に古代図書館の出入り口へと駆け出した。


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