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勇気の書 1

 次の日は、大雨だった。

 土砂降りの雨の中。

 第三カリタス学園のキリスト教学科へと向かう。


 校舎は学園から少し離れ、小山に挟まれるかのような形で建っている。別にぼくたちはキリスト教徒ではないし、キリストを崇拝してもいない。ただ、その思想は尊んでいて勉学に励んでいるけど……学費がすごく良いからだ。


 この校舎には、片隅にいつも憎まれっ子がいる。可愛い容姿とは裏腹で毒舌が多い女だった。


 なんでも、一流大学を受けて、即合格し、いつでも進学できる頭なんだそうだ。


 名前は確か、藤崎 弥生だったっけ?

 古来から妖怪や鬼を退治している一族の出だった。

 もっとも、ぼくとしては体育館で木刀を振り回している姿くらいしか、見ていなかった。ぼくは通り過ぎただけだし。


 少し困っていた時に、手助けをした時もあったけど。

 それ以上でもそれ以下でもない。


 後は筋骨逞しいガテン系のバイトばかりしている。口煩い角刈り頭の悪友が一人。大津 克志かつしだ。力と体力以外には何の取り柄もない男だろうけど、そいつにはいつも学校以外でも、力仕事では助けてもらっている。


 この二人は、ぼくと同じなんだ。お互い知らないはずだけど、マレフィキウム古代図書館にある魔術書を知っているはずなんだ。


 そう、ぼくはそのことを親同士の親睦で知っていた。

 ぼくの家。斉藤家は、太古から魔術書を見張る役目を持った一族だった。弥生も克志も何かしらの役目があるのだろう。


 父はきっと、二人がこの先で起こる危機で、ぼくを必ず助けてくれると言っていた。

 そして、魔術書は最初に開いた人にしか使えない。

 そう、父と母が言った。


 珪素は石化の魔術。空気中にある腐食バクテリアは、毒よりも強力な腐食の魔術だ。雷は膨大な生体電流を空気中に放って、大気による摩擦を誘発して発生させる。


 自分の席について科学の授業と母から開いて覚えたことだった。

 今後の策を練ることも忘れていない。

 魔術書は後、九冊。


 誰の手に渡ったのかは、まったくわからない。

 けれども、放っておくと世界が必ず変わりを告げるんだ。


 ふと、頭にシャーペンの芯が突き刺さっているのに気が付いた。

 かゆいが痛みはない。


 振り向くと、後ろで弥生がぼくをバカにしたようにニコニコとしている。


 ぼくの成績は両親の遺伝子を生体電流と魔術に必要な科学の知識以外はまったく受け継いでいないかのようで、学園では史上最悪の最下位だった。そのことで弥生の奴は、またぼくにちょっかいをだしているんだ。


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