知恵の書 4
「触媒は硝酸アンモニウムさ」
純一郎は床から埃を叩いて立ち上がった。未だ落ち着いていて試験官を机に戻しに行った。硝酸アンモニウムは、 主に農業の肥料にもなるようだ。
「これが……王者の書」
…………
壮大な破壊の後、第三カリタス学園は半壊になるはずだった。大雨に埋もれた学園は学びの泉とは到底機能しない瓦礫の建造物となったはずだ。ぼくは凛と、魔術師たちがいなくなった校庭で、怪訝に思いながら学園を見つめていた。
「え? ナニナニ? 直っているわね学校……」
「……修復されている?!」
広大な第三カリタス学園は、いつの間にかその機能を回復したかのように、窓や壁などの外観が修復されていた。
「弥生と敦は大丈夫かしら? ねえ、零。これからも戦いは激しくなるわ」
白花は新調した白いハットを被って校舎から何事もなく歩いて来た。
「まさか、奴隷の書か?!」
「そうよ」
「ええええええーーー?! 冗談よね?!」
白花の言葉にぼくは絶句し、凛は驚きのあまり更に混乱したようだ。考えてみると、凛には驚きと混乱の連続だったのだろう。学園長室で寝ていたら、いきなり魔術師たちと戦うはめになるのだから……それも、わけもわからずに……。
「どんな傷でも癒せる。けれども、建物もなの……これからとても辛いでしょうけど、一緒に世界の破滅を避けるための戦いをしていきましょう……」