96 冒険者ギルドに売りに行く
なんとか私たちはオーラガニアに入る事が出来た。
先ずは退治したジャイアントヴェスペを売るために、冒険者ギルドへ向かった。
「ジャイアントヴェスペを退治したので、買い取って欲しいがここで良いのか」
「量にもよりますが、どれほどですか」
「ざっと一万くらいだ。しかし、全て解体はしてある」
「でしてら、こちらにどうぞ」
私たちは奥の部屋に案内をされた。
この部屋で、私たちは担当者が来るのを待つんだね。
そして一人の男性が入って来て、私たちに語りかけた。
「お待たせして済みません。私が当ギルドのマスターをしているソルシードと言います。ここに居るのが査定をする者たちです。それではジャイアントヴェスペを退治したそうですが、早速見せて頂けますか」
「良いですよ。それでどの部位から出しますか」
「頭から順にいきます。先ずは牙でお願いします」
牙や甲殻とか針などとギルド側が云った部位を、それぞれ別けて持って居るので各自がアイテム袋から取り出す。
そして、その部位をギルド側が確認して、金額を算出していく。
全ての査定が終わって、ギルド側の提示した金額の合計を私は見た。
その金額の多さに言葉を失った。
「では、支払いは金貨かプラチナ貨のどちらが良いですか、それとも延べ棒ですか」
「金貨やプラチナ貨のどちらでも、その金額だと枚数が有りすぎて困る。ここではミスリル硬貨での支払いは出来ないのか」
「ミスリル硬貨ですか。その枚数だと、全てを直ぐに用意することは出来ません」
「直ぐには無理でも、何日か待てば用意ができるのか」
「国に頼んで見ますから、午後には用意が出来ると思います」
「午後ならば、また出向くから用意しておいてくれ。それで品物はどうしたら良い」
「一応、換金の出来る手形を発行しますから、お金を受け取りに来たときにそれを受付へ渡して下さい」
「その手形はどこのギルドでも換金が出来るのか」
「出来ますが、金額が金額ですから来て頂いても何日か要します」
「そうか、やっぱり今日で頼む」
「判りました、では準備をしますね」
査定をしていたモノたちは部屋から出ていった。
「それとあなたたちのランクですが、特1に成ることも出来ますが如何しますか」
「ランクは気にしていないから、しなくても良い」
「そうですか。我々はこれから書類とかの準備がありますから、この部屋でお相手をすることは出来ません。しかし、先ほどまた出向くとおっしゃっていましたが、あなた方は旅をされているとお見受け致します。もし、午後まで行く処がなければここに居ることも出来ますが、如何なさいますか」
「そうだな。街を散策して、午後にまた来ることにするよ」
部屋の扉がノックされた。
「失礼。用紙が出来たようです」
ギルマスは扉の所へ行き、用紙を受け取った。
金額とかを確認してから席に戻ってくる。
「でしたら、午後にこれを持って、また来て下さい」
私たちはもうここに居る必要は無いので、席を立って冒険者ギルドをあとにする。
ソルシードは玄関まで私たちを見送ってくれた。
「ゼファーブル。特1ってナニ?」
「ナンだろね」
「特1は1の更に上のランクですよ。あとは増えるだけです。アークシュリラも2くらいですか」
「私はランクは無いよ」
「無ランク……」
「ゼファーブルもそうだよ」
「それではギルドで依頼を受けるのに困りませんか」
「受けるときは困るけど、勝手に退治をするには困んないよ」
「勝手にって……」
午後まで時間が出来たので、カペランドに会っていこうと言うことになった。
それで港の方に向かっている。
街の人に教わった通りに行くと、結構大きな倉庫が幾つも並んでいる。
儲かっている様だね。
私たちを見付けてカペランドが声を掛けてくる。
「お前さんたちは船で来たのか? 言えば俺の船に乗せてやったのに」
「イヤ、船でなく馬で来た」
「馬だって! ジャイアントヴェスペたちはどうしたんだ」
「進むのに邪魔なモノは、少しは退治してギルドに売った。そしたらお金の準備をすると言われたので、お前さんがきちんと約束を守っているか見に来たんだよ」
「守って居るとも。俺らがお前さんたちとの約束を破っても、良いことは何に一つもない」
私たちは倉庫で保管してある酒などを確認していく。
言っては無かったが、カペランドたちは商品をしっかり搬入日とかで別けていたし、倉庫内も綺麗になっている。
これなら私たちが保管するより良いね。
港に係留中の船の中には、結構大きな船も何艘もあった。
その中にヴェルゼーアが渡した旗を掲げている船もある。
その景色を見ると、なんだか嬉しくもなった。
港に余りいると作業の邪魔だろうから、適当なところで港を出て軽めの食事を取った。
「やっぱり、ここでも魚はこういう感じなんですね」
「そうだな。これでは香草臭くて、魚の味が判らんな」
「このスープの魚は、何種類も入っていそうだけど、全部同じ味に感じるよ」
どこでも、料理はこんなモノだった。
港があれば魚を料理したモノはあるが、それは肉の代わりでしかない。
素材の味などは関係無く、香草やコショウなどの香辛料と一緒に煮込むか焼くだけだ。
たまに焼いたモノで、そう言うモノの匂いがしないモノもあった。
それだと、素材の味が判るんだけどね。
この世界の食事は、美味しいとか美味しくないは二の次で、空腹が満たされればいい。
私たちは港の傍なのに、美味しくない魚料理の食事を済ました。
そして、街を見て回ることにする。
ここでは香辛料は薬としてではなく、調味料として売っている。
なので匂いが良いモノが店頭に並んでいて、完全に乾燥し切った香りのしなくなったモノはない。
多分、乾燥して香りがしないモノは、捨てることをしないで薬屋に売っているのだろう。
バナナやパインアップルと言う果物を、アークシュリラは味見もせずに購入している。
私たちの住んで居る処では入手が出来ない、こう言ったモノも売って居る。
なのでたまに来るのには良いかもね。