93 ジャイアントヴェスペとの戦い
私たちはジャイアントヴェスペと、どの様に戦うかを検討している。
「それならアークシュリラとヴェルゼーアが先ず警戒をしているジャイアントヴェスペたちを切れば、奴らはでてくる。それらが出てきたところで、今度はゼファーブルとレファピテルが魔法を放てば良いと思う。それなら初めの戦いだけは、寒さの所為で動きが鈍っていないモノとやり合えるからな」
ビブラエスがみんながイロイロ言っていた意見の最大公約数的な、それぞれの希望に出来るだけ添った作戦をしゃべった。
「私は別に戦いたい訳では……」
ヴェルゼーアの発言をレファピテルが遮って言う。
「そうですね。それならみんなのやりたいことを満足させますね」
「私はそれで良いけど、ヴェルゼーアは不満そうだよ。なんなら剣で戦うのは私だけでも良いからさぁ」
「一人なんて無理ですよね、そうですよね、ヴェルゼーア」
「まぁ、そうだな」
足取りがとても軽いアークシュリラと、非常に重いヴェルゼーアが巣の近くに行く。
これほど両極端だと、見ていて楽しい。
「ヴェルゼーア、最初の一匹を切るのは、気持ちの整理がついたらあなたがやってね。イツでも良いからね」
「そうか。判った」
ヴェルゼーアはゆっくりと深呼吸をして、それからおもむろに一匹のジャイアントヴェスペ目掛けて剣を振った。
「えい、ウルサイ蜂どもめ! おとなしく出来ないのか」
ヴェルゼーアに対して威嚇していた一匹のジャイアントヴェスペが、その一振りで両断されて地面に落ちてくる。
それを合図に、巣からたくさんのジャイアントヴェスペが姿を現してきた。
もう2人はジャイアントヴェスペに取り囲まれている。
その中で一生懸命に剣を振って、ジャイアントヴェスペを切って居る。
パッと見、剣を闇雲に降っていても当たる感じだね。
でも、空振りや打ち損じはなく、どれも確実に仕留めている。
さすがに、剣の技に自信があって、日頃から大口を叩くことだけのことは有る。
既に物凄い数のジャイアントヴェスペが落ちていて、2人もそれに足を取られながら戦っている。
「ヴェルゼーア、アークシュリラ。魔法を放って良ければ言ってね。準備だけはしておくからね」
「判った」「判ったよ」
「レファピテル。私たちも準備をしようか」
「そうですね。先ず戦いにくそうですから、足元に有るのを吹き飛ばしますね」
「その魔法って、あの2人は平気なの」
「そんな強い風は起こしませんよ。ちょっと端に除けるだけですね」
「2人とも、レファピテルが足元に風を送って掃除をするから、飛ばされない様に注意してね」
「ゼファーブル、その言い方は失礼ですよ。私だってそのくらいの分別はありますよ」
「そう。じゃ、お願いね」
「つむじ風!」
足元に落ちているジャイアントヴェスペの遺体は、端の一カ所に集まっていく。
2人を中心とした戦闘場所は、綺麗に片付いて再び戦い易くなった。
「レファピテル、ありがとう。戦い易くなったよ」
アークシュリラがレファピテルに御礼を言って、また、剣を振っている。
「レファピテルも、やれば出来るじゃん」
「からかわないで下さい!」
巣からはまだまだ出てくる様で、戦っている2人の相手は全く減る気配はない。
「ゼファーブル。一発くらい矢を放ったら」
「良いよ」
「お試しだよ」
「ゼファーブル。お前、弓を扱えるのか」
ヴェルゼーアが剣を振りながら言ってくる。
2人に取って、この戦いは児戯にも等しいことだけど、切られる為に2人に迫っていくジャイアントヴェスペが可哀想で仕方ない。
「一本だけだよ、矢はそんなにないんだからね」
私は杖を弓に変えて、薬草入れから一本の矢を弓につがえる。
そして、狙いやすいモノに標準を定めて、力いっぱい弓を引いた。
そして、ゆっくりと指を矢から離す。
弓は一直線にジャイアントヴェスペを居抜き、その後ろにいた数匹も射抜いた。
どのジャイアントヴェスペも破裂はしてなく、矢で射られたジャイアントヴェスペは地面に落ちてくる。
ヴェルゼーアたちはナニが起きたかが、一瞬判らなかったようだ。
「ゼファーブル。やれば出来るじゃん」
「まぁね」
「じゃ、私としてはわかったから、もう冷やして良いよ。ヴェルゼーアはどう」
「私は最初から冷やしても良かったんだぞ」
「レファピテル。じゃ、やるよ。巣の中と飛んでいるヤツらだからね」
「絶対零度」
レファピテルが巣の中を中心に魔法を放った。
「絶対零度!」
私が二人を中心に周辺に魔法を放つ。
動いているモノをヴェルゼーアとアークシュリラが始末している。
ビブラエスは、こう言う乱戦の時には余り役に立たない。
乱戦以外なら戦えるけどね。
なのでレファピテルが吹き飛ばしたモノを、一人で黙々と隅で解体作業をしていた。
「倒したジャイアントヴェスペの解体は、全て終わったぞ」
全てのジャイアントヴェスペは、部位ごとに綺麗に整理されている。
ビブラエスが小さな瓶を、私に渡してくる。
「ジャイアントヴェスペの毒だ」
「ありがとう」
これでジャイアントヴェスペ専用の解毒剤が作れる。
「少し休んでから、女王を見に行くか。その間にビブラエスは残っているモノの解体を頼む。解体したら全部をしまって置いてくれ」
「判った」
ビブラエスは洞窟の手前までにいる、凍ったジャイアントヴェスペを同じ感じで解体をしていく。