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92 ジャイアントヴェスペに会う

 私たちは全員で草原の海岸沿いを南に進んでいる。

 歩きで無いのだから、遠回りに成る街道を進む必要はない。

 ファリチスを出てから数日が過ぎて、その間に幾つかの村も通り過ぎた。


 もう遠くに森が見える。

「ゼファーブル。あの森までは来たことあるよね」

「そうだね」

「このまま、森の中に入らず周辺を行く」

 ヴェルゼーアが私たちの会話に入って来た。

「ナンで?」

「あっちはオーラガニアではないからだ」


 森の向こうは広大な草原が有る。

 そこにもジャイアントヴェスペが居る様なことを、ビブラエスは言っていた。


「森の先には河や草原が有るよね」

「そうだ。そして、小さい国が幾つかあるだけだ」

「そこにはジャイアントヴェスペは居ないの?」

「アノートギャスターがいるから、居たとしてもそれほど多くは無いぞ」


「私はジャイアントヴェスペと戦いたいけど、アノートギャスターとも戦いたいんだよね。ここまで来たんだから行こうよ」

「アークシュリラ、ジャイアントヴェスペを退治したら戦いに行こうか」

「本当に」

 アークシュリラはそう言ってヴェルゼーアたちの方を見た。

「良い経験になるから、少しなら構わないぞ」

「やった!」

 アークシュリラは満面の笑顔でそう言った。


 森を避ける道を私たちが進と、そこには数匹のジャイアントヴェスペがスパイダーを食べていた。


「うっ、気持ち悪い」

 思わず口から言葉が出た。


「既に、ここまで来ているのですね」

「じゃ、レファピテル、話を付けて来てくれ」

 レファピテルが食事中のジャイアントヴェスペに語りかけて、それにジャイアントヴェスペが答えている。

 あれが蜂族(アベイユ)語なんだね。

 私はその言葉を知らないから、レファピテルがジャイアントヴェスペとナニを話しているのかさっぱり分からない。


「ヴェルゼーア、どうするの?」

「先ずは蜂たちの世界を知るために、巨大な巣や凶悪なグループの在りかを聞き出す。それで我々が凶悪なグループをやっつけることにする。そうすれば、あのジャイアントヴェスペたちも人のそばに居ないでも済むからな」

 ジャイアントヴェスペにしても、危険を冒してまで天敵のそばで、わざわざ生活はしたくないだろうと言うことらしい。


「ヴェルゼーア。ここいらに居るのは小さな集団だそうです。この先の洞窟に居るのが最も大きいらしいですね」

「それを我々が退治しても良いのか」

「居なくなってくれれば良いそうです」

「判った。それで捕まっている仲間は、助けられなくても平気なのか」

「ここのモノたちも、捕まった時点で諦めて居るそうですね」


「捕まっている仲間って?」

 アークシュリラがレファピテルとヴェルゼーアに聞いた。

「我々で言う捕虜だが、何日かすると、それを自分たちの兵隊として活用をしだす。そうなると死ぬまで闘う様になるぞ」

「もう仲間の元には帰れないの」

「連れて来ても、もう仲間とは思わないで闘うから無理だな」

「そうナンだね」

「アークシュリラ、勘違いをするなよ。その集団だけでなくジャイアントヴェスペ全てが行うことだぞ」


 私たちの魔法と違い、躰自体にナニかをしているのだろう。

 だから二度と元には戻らないんだね。

 そうなる前に助ければ、元の様に仲間の処で暮らすことも可能だろう。

 しかし、私たちにジャイアントヴェスペの個体差を識別して、捕虜か倒すモノかを見分けるのは不可能だ。


「じゃ、洞窟に居るのを全てやっつけるの?」

「そうだな。出入り口が一つなら火の魔法で焼くのが一番手っ取り早いが、行って確認しなければそれが有効とは言えないな」


 またしばらく歩くと、道の脇に黒い靄のかかった様な洞窟がある。


「思ってたのより居るね」

「ゼファーブルはどう思ってたんだ」

「二、三匹が出入りしている感じだよ」

「それなら、冒険者たちでも駆除するだろうよ」

 低レベルの魔法が聞かなくても、それ以外なら有効なのだから駆除をしてても良い。

 そう成っていないのは、それが出来ないからこんなにも増え続けている。

 高位の冒険者たちは普通の森や草むらの周辺に居るジャイアントヴェスペよりも、珍しい魔物を退治したがるからね。


「そうだね。これとも話すの?」

「話が通じれば話す。その方が、我々が知りたい情報を早く入手出来るからな」

 レファピテルが洞窟の方に近付くと、ジャイアントヴェスペが羽を力強く羽ばたかせて威嚇してきた。

 レファピテルがナンかを言っているが、ジャイアントヴェスペが応じている感じは今回はしない。


「話し合いは無理ですね。少し引きましょう」


 私たちは洞窟がかろうじて見える位置に戻った。

「私があれを切ったらたくさん出てくるの」

「あの巣に何匹居るか判らんが、普通のサイズだと5、60匹は直ぐに出てくるな。それでも三分の二以上は巣に残って居るから、女王を捕まえることは無理だぞ」


「多分、仲間の体液の臭いを嗅いで出てくると思います。ですから、居るのを全て切ってもダメですよ」

 呼びに行くのなら、行かせなければ良い。

 アークシュリラなら、それも可能かも知れない。

「臭いだと風の魔法で防げないの?」

「それはやりましたが、ビブラエスやヴェルゼーアが立っていられないほどの風でもダメでした」

 立っていられないほどの風を起こしてもダメって、臭いじゃないかも知れないね。


「火も確かに有効だが、自分から燃えている火に飛び込んでくれる訳ではない。最後は刺される覚悟で闘うしかないな」

「雷系の魔法はどう?」

「雷系の魔法では、一度にやっつけられる数に限りがあります。それに周辺に及ぼす影響も限定的ですね」

 アークシュリラが全力で放った雷撃(ライトニングボルト)一発で終わりそうだ。

 私の広範囲に影響が及ぶ雷撃(ライトニングボルト)でも良いかも知れない。


「レファピテルは凍らすことは出来るの?」

「周辺の温度を下げるなら出来ますよ。ジャイアントヴェスペを凍らすのですか?」

「そう、アークシュリラが少し戦って、私たちが出てくるジャイアントヴェスペを凍らすの、ダメかなぁ」

「2人でそんなことしたら全部凍るよ。そしたら私は戦えないじゃん」

「アークシュリラ、平気だよ。ピンポイントなら完全に凍るけど、範囲だと7、8割くらいしか凍らないよ。女王はびくともしないんじゃないの」

「そうですね。そんな感じでしょうか。それに洞窟内が思ったよりも、複雑で高温と言うことも有ります。ですから2人でかけても、洞窟の中に居るモノたち全てを凍らすことは出来ませんよ」

「そうだな。あの洞窟を巣にしてるのだから、内部はラビリンスかダンジョンの様に成っているかもな」

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