8 不思議なモノを見付けた
アークシュリラのしゃべる部分でおかしな所を変えました。2023-12-29
翌朝になって私たちは荷造りをしてから、部屋の鍵を宿屋の人に渡した。
そして朝食を食べてから宿屋を出発する。
この街の周囲にも城壁があるから、街から外に出るのは門のある所しか出来ない。
私たちは門を警備している人に出街をすると伝えて、その人がナニやら確認してから門の外に出た。
そして私たちは、再び街道を南に向かって歩き出す。
今日も一日ナニも起こらなければいいなぁ。
それにしても魔法使いって、ずっとこれを持って居るんだよね。
ずっと手ぶらだったので慣れていないこともあるが、腕が疲れないのかなぁ。
邪魔だったら、元の枝に戻して捨ててもいいかなぁ。
それとも特別な性能はナニもないから、このまま捨てても平気かなぁ。
まだ、半日も経っていないのにそんなことを思うようだから、私は絶対に魔法使いには向いてないよね。
一日目は特段何事もなく過ぎた。
まぁ、ここでも街の周辺は冒険者ギルドとかが、魔物を退治してくれている。なので、街道を歩いているだけならば、それほど心配をする必要はない。
それに掲示されていた依頼の内容も、凶悪な魔物の駆除はなかったからね。
思った通りで、全く魔物は出てこない。
3日目に、街道が二股に分かれているところに差し掛かった。
右側の道を行くと、結構大きな街に行き着く。反対に左側は、毎年冬を迎えるこの季節になると私が通る道だ。
「アークシュリラ。本当に剣の研修を受けなくても大丈夫なの?」
「平気だよ。全く魔物も居ないから、剣を使うコトもないしね」
まぁ、私が一人でも、ナニも問題なく往復することが出来る道だからね。
本人がそう言うならば、今は無理に行かせる必要はない。
「じゃ、その分岐は左側だからね」
「左だね。判ったよ」
また、何事もなく私たちは、街道を進んでいく。
道すがら右側にある街のことやこの周辺の地理などを、私はアークシュリラに話した。
アレっ、道は一本道で迷いようがないはずだが……
「どうしたの? まさか一本道で迷ったの?」
「道は有っているけど、あすこに見たことの無いモノがあるんだよ」
壁などは無く玄関扉と思われるモノが、ただぽつんと置いてあった。
その扉の周囲にはツタが覆い茂っているから、ずっとここにあったが風かナニかで見える様になったのかも知れない。
「扉だよね」
アークシュリラが楽しげに答えて来た。
「ナンで扉だけあるのかなぁ」
「だったら、時間もあることだし、あの扉を調べようよ」
私としては家や牢に閉じ込められた訳でないから、そんな危険なモノは無視して先に進みたい。
「調べないの?」
もう一度、アークシュリラが私を急かす様に聞いてきた。
「じゃ、少し調べて見ようか」
「うん」
一枚の扉が地面に刺さって居る訳では無く、下の方は基礎にしっかりと固定されている。
その基礎の周囲には草が生い茂っている。
基礎があるのだから周囲にはきちんと枠もあるし、扉の反対側にもいける。
誰かが扉を一枚だけ落とした訳ではなさそうだ。
「じゃ、扉は開くのかなぁ」
開くかも知れないが、こんな魔道具は見たことはない。
こんな魔物ならミミックがいるが、あれは宝箱で扉だけのは聞いたことも無い。
でも普通だったら建物を壊して、玄関だけ残す様なことはしないだろ。
「急に吸い込まれやしないと思うけど、気を付けてね」
アークシュリラは剣を抜いて身構えた。
「えっ、私が開けるの?」
「そうだよ。私が魔物が出てきたら攻撃をするんでしょ」
そうだが、ぜんぜん納得がいかない。
しかし、ここでやり合っていても仕方ないので、私は扉を開けるために取っ手に手を掛けた。
「じゃ、開けるよ」
「いつでも、良いよ」
その扉を私は開けた。
その扉の中は薄暗い空間がある。
「魔物は出てこなかったね」
「入らないの?」
「ナンでこんな怪しいモノの中に、私たちが入らないといけないの?」
「ゼファーブルはこれがなんだか判るの?」
「いや。判らないよ」
「だったら調査しようよ。放置したらこれから先も気になって仕方ないよ」
「判った、入るよ。でも、倒せそうもない相手がいて、逃げられたら逃げるからね」
「うん、判ったよ。それじゃ、早く入ろうよ」
私がこの中を探検はしないと告げて、無理矢理にでも先に進むことも出来た。
アークシュリラの言うとおり、数日間は気にもなるだろう。
これから先で遭遇する様々なモノが、この様に選べるとは限らない。
無条件で巻き込まれることもあるから、ここで経験するには良いのかも知れない。
更に、アークシュリラはこの世界のことで、判って居ないことの方が多い。
いくら小さい子供に、火や水とかの怖さを言ったとしても、自分が怖い目に遭うまでは判らないのと同じだ。
こうなれば半分やけだよ。
強い魔物や変なんモノが、この中に住んで居ませんようにお願いしますと、私は心の中で神様に祈った。
「その前にランタンを用意するから待っててね。アークシュリラは持ってないんでしょ」
「私は持ってないよ」
私はアイテム袋からランタンを準備して、再度アークシュリラとこの周囲に異常がないかを確認する。
人が出入りしたような形跡は、私たちが周囲を踏み付けたので判らなくなった。
しかし、生えていた草の種類から言ってなさそうだ。
手にしている杖で地面とかを突いて行くが、音の異なるところはなかった。
私はランタンに火を灯して、アークシュリラと恐る恐る扉の中に広がる空間に入った。
そこには荷物が一切ない空間があった。
その空間の奥には扉が一つだけある。
この空間は部屋の様だけど、ナニも無いってことはまだ住んで居ないのか、出ていったかのどちらかだ。
それとも泥棒が侵入したのかもしれないが、普段使いの食器や家具一式を持ち去る泥棒は少ない。
扉の感じから云って、可能性としては家主が出ていった方かなぁ。
アークシュリラは歩幅でこの空間の大きさを確認してから、壁を調べている。
石で出来た壁には私たちの入って来た扉と窓がある。
窓には鎧戸がしてあり外は見えない。
それ以外の壁は、きっと隣の部屋に行ける扉が一つあるだけだった。
私も床を調べることにした。
そして2人で天井を眺める。
ナニもおかしなところはなかった。
「ゼファーブル、ナニもないね。ここには隠し部屋とかはないのかなぁ」
「隠し部屋が有っても、私たちじゃ判んないよ」
「そうかぁ。じゃ、扉の先を進もうよ」
私が扉に聞き耳を立てて、扉の向こう側を確認する。
アークシュリラもそれをまねて同じことをする。
「音はしないね」
「そうだね、じゃ扉を開けてね」
「はい。はい。開けますよ」
私が扉を開けて、ランタンの灯りで先を照らした。