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85 男たちが出航して行った

 私たちは集会場から港に向かっている。

 男どもはやはり一人くらいを負ぶったくらいで、歩くスピードは落ちない。

 私たちは港に着いた。


「どうかなぁ」

「以前と変わらないぞ」

「いや、はめ込みはこの方がしっかりしているぞ」

 各々感想を言っている。

 素直にすれば、きっと良いヤツナンだろうなぁ。


 男どもが乗船して中を見ている間、私はビブラエスに聞いた。

「普通だったら何日掛かるの」

「ここまでか」

「そう」

「そうだなぁ三週間くらいだ」

「たった、それだけなの? ナンヶ月とかじゃないの」

「どうして、そんなに掛かると思った?」

「ヴェルゼーアが食べ物をやらないから、在庫以上だと思ったよ」

「そうだな。保存食を少しくれてやれば良いよな。それと酒も」

「どうせなら、腐りそうなモノとかを持って行って貰おうよ。カレーやご飯もまだ余ってるんでしょ」

「それもそうだな」

 ビブラエスはそう言って笑った。


「オーラガニアとハルメニアって近いの?」

「直線では遠くはないが、陸路で行けないから交流はないな」

「そっか、もしあったらハルメニアに酒も運んでくれるかなぁって思ったけど、それじゃ無理だよね」

「確かにオーラガニアの船がここに酒を取りに来て、一度戻るにしてもハルメニアに行った方が、ハルメニア自体がここまで来られる船を造るより早いかもなぁ」

「ヴェルゼーアはどう思う」

「あのモノたち次第だな。私たちが直にオーラガニアに行って、交渉をすることは出来ないからな」

「そうですね。ひと言でも詫びてくれれば、ヴェルゼーアもそこまで邪険にしないですよね」



 船を一通り見たようで、男たちが下船して来た。


「今まで済まない。オレはカペランドと言う、今までのことを許せと言うのは流石に虫が良いと思うが、本当に悪かった」

 カペランドがそう言うと、男たちが一斉に謝りだした。


「お前たちを女だと言うことで侮っていた。スマン」

「ここまで凄い魔法を使えるし、戦いも圧倒的だったよ……」

 最初からそう言えば良いんだよ。


「判れば良い。私はここの(おさ)をしているヴェルゼーアと言う。それで、いつ出て行く」

「航海で使う道具が一切無い。それなので我々も外洋を進むことはできない。日数が掛かる陸沿いを行くことになるので、直ぐにでも行きたい」

「そうか」

 ヴェルゼーアがそう言って、私たちの方を振り返って続けた。

「だそうだ、みんなどうする」

 面倒くさくなったから、ここで私たちに投げたよ。


「良いですよ。直ぐに行くならね」

「それじゃ、少しばかしの食い物と水を分けてやる。足りない分は自分たちで調達しろ。そのくらいはできるだろう、私は準備をするからここで少し待ってろ」

 ビブラエスはそう言って、レファピテルとお店に行った。

 私たちもそれぞれの店に戻り、痛みやすいモノを中心に見繕っていく。

 水も忘れずに樽に詰めておいたよ。

 アークシュリラとヴェルゼーアは酒を吟味している。

 各人が不要なモノを持ち寄ったので、9人分に満たない量のモノも当然ある。

 それでも結構な量である。


 私たちは港に戻ってきた。

「水はこれだ、そして保存食。それ以外の食料だ。食糧は4、5日は持つが早く食べた方が良いな」

 男たちはダガーで品目を彫り込む。


「それと酒だ。余り飲み慣れていない種類の酒だから、普段呑んで居る酒の様に浴びる様に飲まないで、味わって呑むようにしろよ」

 男どもは喜んでいるけど、ヴェルゼーアの言っている意味がきちんと理解出来たのかなぁ。

 今回の蒸留酒の中には、醸造酒の倍以上のアルコールを含んだモノもあるけど……

 流石に今回の酒には、消毒にも使える火の着くヤツは入れてないよ。


「後は鍋と食器だ。これだけ有れば平気だろう。それとお前らから回収したギルドカードだ」

「ありがとうな」

 男たちは出航していった。


「行っちゃったね」

「あの酒を呑んだら直ぐに戻ってくるさ」

「酒だけでなく料理もだな、その時までにオーラガニアが運べる手筈を整えてもらう様に依頼しておくよ」

「ビブラエス、それじゃまた行くのか」

「最近はちょくちょく来るから、私は行かないで済むと思うけどな。でも二週間経つ間に来なかったら、少し行って指導してくるよ」

 ハルメニア王国ではいざこざがあって、ビブラエスが知恵を貸してやっている。

 その手のモノがナン日ごとにここに来ているのかを私は知らないが、結構頻繁に来ている感じがする。

 本当はビブラエスが影の宰相……いや、国王じゃないよね。


「オーラガニアが運搬だけをしてくれるのなら良いですが、あすこも結構大きな国ですよ。そこでも消費されだしたら今の生産体制では追いつきませんね」

「そうだな。西のハルメニアと東のオーラガニアの両国が相手となるからな。これは困ったなぁ」


 そんな2つの大国が近くにあっても戦もせずに栄えているのは、その間に海があるかららだとビブラエスが教えてくれた。

 言い換えれば2つの国はそれぞれの半島にあって、その中央に湾では無く地中海があると言えるのかなぁ。

 あっそうだ、陸路ではジャイアントヴェスペが居るから、お互いに行き来出来ないんだった。


 カペランドたちが出航して二週間以上が過ぎたが、ビブラエスはハルメニアへ旅立っていない。

 そうなると誰かが来たと言うことになる。


 今回のことで小型より少し大きい船を造って、岩場に置いた。

 でも、専らそれを使っているのは、アークシュリラとビブラエスの2人だ。

 一日中船を浮かべて釣りを楽しんでいる。

 しかし、二人は釣果を全く気にしていない。

 それは魚が掛かって釣り上げたとしても、その都度針から外して逃がして上げているからね。

 私からすれば、魚を逃がしたら釣りをする意味がない様な気がする。


 二ヶ月近くが経った頃、一艘の船がやって来た。

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