7 魔法使いの杖を作る
杖の先端で、上部と下部が分かりにくい箇所がありましたので追記しました。2023-12-29
私は宿屋に戻ってきた。
「アークシュリラ、ただいま」
「お帰り」
「どう、少しは捗ってる?」
まだ少ししか経っていないから、それほど変わらないと思うけどね。
「だいたい読み終わったよ。それでゼファーブル。銀貨を一枚も置いていって、私にナニを買わしたいの?」
この短時間で、この星の物価は理解したみたいだ。
ならば大丈夫そうだね。
「じゃ、冒険者ギルドへでも行こうか?」
「そうだね。行こう!」
アークシュリラは、やはり外出したかった見たいで、私が言い終わると間髪を入れずにそう言ってきた。
私はアークシュリラと冒険者ギルドへ向かった。
「ゼファーブル。あれだね」
「そうだね」
この裏通りにある魔法ショップに少し前に来たから、冒険者ギルドへは迷うこと無くアークシュリラと来ることが出来た。
アークシュリラと一緒なら、私も中に入っても怪しくないよね。
基本的に錬金術師は戦闘に向かないから、冒険者ギルドでは存在していること自体が目立つと私は感じている。
オレンジの中にトマトがあれば目立つが、同じトマトでも野菜たちと一緒ならそれほど目立たない。
でも、たまに薬の作成とかの依頼もあるから、居てもケンカを吹っ掛けてくるモノはいないよ。
でも、そう言った依頼は、商業ギルドの方が多いかなぁ。
「じゃ、中に入ろうか」
「うん」
私たちはギルドの中に入り、壁際にある掲示板を見ていく。
なにナニ。
ウルフやマダーフォンの退治がほとんどだね。
少しはゴブリン退治もあるけど、強そうな魔物の討伐依頼はない。
「これなら旅を続けても平気そうだね」
「そうだね」
「それじゃ、街を散歩して帰ろうか?」
「うん」
私に取っては一般的なモノでも、アークシュリラに取っては物珍しい様だ。
子どもの様にあっちこっちに走って行かないから、まだ良いけど……
「アークシュリラ。私はあなたに少しなら地理とかを教えられるけど、剣術を教えることは出来ないよ。もう少し大きな街にあるギルドなら無料で研修をやってるから、それに参加をする?」
「そんな必要はないよ。私なら魔物をやっつけて徐々に慣れていくよ」
私はその魔物をやっつけるための、基礎を習うかと言っているのだけどね。
まぁ大きな街へ着くまでの間には、魔物と戦うこともあるだろう。
それで、無理そうだったら、無理矢理でも受けさせよう。
その方がアークシュリラのためにもなるよね。
そのあとは、少し街の様子を見ながら散歩をして、私たちは宿へ戻ることにした。
私たちは、宿屋に戻って来た。
アークシュリラは椅子に座って、メモ帳にナニか追加されたものがないかを確認している。
熱心だね。
そう言う私は、それをベッドに寝転がって見ている。
太陽が傾きだしたので、そろそろ夕食の時間かなぁ?
「アークシュリラ、食事にしようか」
「もう、そんな時間? それじゃゼファーブル、食堂へ行こうか」
二人で一階にある食堂に行くと、そこには既に数組みのパーティーが居た。
宿泊している人なのかなぁ。
店員に飲み物にエールを頼んで、私たちは空いている席に着く。
しばらくして料理が出てくる。
ナニかの肉を焼いたヤツだね。
でも、この大きさからすると、ウサギより大きな動物だね。
ナイフとフォークで切って、口に運ぶ。
「いい味付けだね」
「それに量も多いね。ゼファーブル、このスープも美味しいよ」
商業ギルドの受付に居た人に感謝だね。
「そうだね。野宿でもこんな風に焼ければ良いよね」
「ゼファーブルは、野宿は前にもしたことあるんだよね」
「あるよ」
「前より料理は上手くなっていないの?」
果たして私が料理を上手くなったかは、非常に怪しい。
私の料理は、基本的に保存食の煮込みだからね。
「どうだろうね。昔より時間が掛からなくなったよ」
「そうなんだ。でも、マダーフォンの肉を焼いた時は美味しかったよね」
久しぶりに保存食でなく新鮮な肉だったので、あれは本当に美味しかった。
やっぱり、新鮮なものには勝てないよね。
ここも良い食材を使っていると言うことだね。
「ところでゼファーブルはどこに行くつもりなの? 細かい国名とかを言われても、まだ私は判んないけどね」
「私は南の暖かい所に行く予定なんだよ」
「ゼファーブルは、寒いのはキライなの?」
「キライってことは無いけど、食べ物が取れ無くなるからね。生活するのが大変だよ」
「そうなんだね」
翌日になって多少は心配だがアークシュリラの経験のために、別々に街を散策することにした。
私はどこへ行く宛もなく街をぶらついている。
街は本当にやることが無くて困るよ。
薬屋とか雑貨店を見て廻るが、目新しいモノは無い。
そこで私は街の外へ出て、魔法の杖になりそうな棒を探すことにした。
昨日、実物を見たばかりだから、いつか作るなら記憶が鮮明のウチにと思ったからだよ。
形の良い枝が、結構落ちているね。
これで良いや。
私はその枝を振ってみる。
良い感じだね。
土を良く捏ねて球体を作り、杖を持って上側の先端にそれを取り付ける。
良し。
でも、これでは泥だんごを付けているだけだから、みっともないかなぁ。
それなら、土の球体は宝石の様に輝かせた方が良いね。
少しの間、試行錯誤を繰り返して気に入った感じに仕上がった。
それに私が魔法ショップで見た杖より強力そうだ。
これで可笑しな所は無いかなぁ。
う~ん。
あっ。この杖を使っていると地面と接する所が劣化して割れるよね。
なので、杖の地面と接する先端に金属を付けて、杖が割れないようにしないとダメだね。
よし、できあがり。
モノを作って居ると時間が経つのが早い。
既に太陽が山の向こうに沈もうとしている。
城門が閉まる前に、早く戻らないと行けないね。
私は全力で駆けた。
ナンとか日没前に城門に付くことが出来て、私は街の中に入った。
良かった。
私一人だったら宿代が勿体ないけど、街の外に居ても良かった。
しかし、今は一人ではない。それにナニも言ってないから宿屋に戻らないと、アークシュリラが心配するだろう。
宿屋に着いて、部屋に行った。
「ごめん。遅くなって」
「ゼファーブルが私を残して、どっかへ一人で行っちゃったかと心配したよ」
「本当にごめんね。これを作っていたら時間が掛かって仕舞ったんだよ」
「それは、魔法の杖? 魔法使いみたいだよ」
「詳しくは食堂に行ってから話すよ」
二人で食堂へやってくる。
今日も肉を焼いたモノだが、今日のはウサギかなぁ。
「今日も美味しいね」
「そうだね、で、その杖は?」
アークシュリラは、杖が気になって食事を味わえないらしい。
私は簡単に説明をした。
「ふ~ん。そうなんだ。二人のパーティーだと攻撃をするアタッカーとそれを支援する魔法使いが普通なんだね。そうかもね」
アークシュリラは自分なりに解釈をしている。
「ごめんね。私が出掛けに言えば良かったよね」
「良いよ。ゼファーブルだって最初から遅くなるつもりはなかったんだよね。それに私のためにそれを作ったんでしょ」