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67 戦いが終わって

 6日後に国王を連れて、アークシュリラたちは無事に戻って来た。

 三人ともロープで縛られているが、良く眠っている。

 ヴェルゼーアが三名を労っていた。


「それじゃ、ビブラエス。これからハルメニア王国と交渉の連絡はどうやるの?」

「王城に案内を置いて起きましたし、城門にも貼って来ましたから直に来ると思いますよ」


 翌日の朝、ハルメニア王国から一人の騎士が来て書面をアークシュリラに渡してきた。

 まぁ、甲冑を着たものが来たので、アークシュリラが相手をしただけだよ。

「これはヴェルゼーア宛てだね。直ぐに返事は出来そう」


 レファピテルがその騎士にお茶をだしている。

 ヴェルゼーアはビブラエスに書面を渡した。


「返還交渉の条件は全て了承したって書いてありますね」

「よかったね」


 ヴェルゼーアが騎士に、書面を確かに受け取った証しを渡した。


「ヴェルゼーア。どうして浮かない顔をしてるの」

「ゼファーブル。上手く行き過ぎだ。浮かれていると足をすくわれる」

 用心することは必要だね。

「それで交渉担当はあなたら三人で良いんでしょ」

「それは構わんが、本当に国王を替えるか悩んでいる」

 ヴェルゼーアはルリファンを国王にして、国民が納得するか考えている見たいだね。

 一応、本人の了承は得ているけど、ルリファンもどうしてもやりたい訳ではないからね。

「それは話の流れで、良いんじゃないの。ヴェルゼーアが無罪になって命を狙われなくなれば、目的は達成だからね。欲張ったら取りこぼすよ」

「そうだな」


 三日後に国境にある建物で返還交渉が始まった。

 先ず我々から返還する条件をだす。

 1、ヴェルゼーアを無罪として、二度と刺客を送らないこと

 2、国王が帰国後に直ぐに退位すること及び、我々が決める新国王を任命すること

 3、貴族制を廃止すること

 の3つである。


 これを受けてハルメニア王国として、飲めるモノと拒絶するモノを決める。

 一日で決まらない場合は、何日でもその打ち合わせを行うよ。

 一旦国に持ち帰って、相談をしてから再度会うなんてことはない。

 だってここに居るのは、国の代表者で全権を与えられたモノなのだからね。

 ハルメニア王国としては、2を認めると国王の返還が意味の無いものになり兼ねない。

 なので、2と3は賠償金で解決したいらしい。


 私としては、1が認められれば後はどうでも良い。

 しかし、1しか無ければ無罪にするが、刺客は送るとかになる恐れがあるとビブラエスに指摘された。

 交渉ごとは専門家に任せるのが一番だね。


 3はハルメニア王国として絶対に認められないモノらしい。そっちに興味を向かわせる戦術とも言っていた。


 三昼夜かかって捕虜の返還交渉がまとまった。

 そして終戦の調印になる。

 領土の割譲とかがない分、話は早い。

 まとまったのは、想定通り1と2である。


「レファピテル。新国王ってヴェルゼーアなんでしょう」

 私はとぼけて聞いてみる。

「違いますよ。国王って男がなるものでしょ」

「女だって構わないでしょ。男だの、女だのってオカシイよ」

「そう言う意味ではなくて、統治なんて面倒なことは男にやらせれば良いのですよ」

「レファピテルの言うとおりだよ。国王なんか外交がどうの内政がって大変だよ。やりたいモノがやるのが一番だよ」

「そのモノはヴェルゼーアの意中の人ですから、数年後には皇后になってる可能性もありますよ」


 まぁ二人の会話を聞く限り幼なじみ以上であると思ったけど、ヴェルゼーアには悪いが結婚はないと思う。

 男にとって身分とか位階は大切らしい。

 それが妻の方が身分が上だと耐えがたい様だから、リルファンにヴェルゼーアを妻にするつもりはないと感じるからね。

 私たちからすれば気にするなと言いたいが、それが男には出来ないんだよね。

 でも、リルファンはそれを苦痛と思わないかも知れない。

 ヴェルゼーアが無理矢理にでも、リルファンの妻の座に納まることはしないと思うけど……


 レファピテルやビブラエスは、ヴェルゼーアが無罪になって国内に居る状況を信じられない様子だった。

 二週間前は違ったからね。

 私たちは、ハルメニア王国の王城のあるハルメニアに着いた。

 ヴェルゼーアたちが新国王の即位を見てから帰ると云ったので、私たちはそれに付き合うことにしたんだよ。


 私としては、ルリファンの即位には興味はない。

「ヴェルゼーア。あの隣に立ってなくて良かったの」

「ゼファーブル!」

 ヴェルゼーアは少し慌てた様に言った。

 ヴェルゼーアとしては満更ではなさそうだけどね。

 まぁ、淡い期待を持つのも良いかなぁ。

 ヴェルゼーアの生い立ちから言って、少しの間くらい夢を見ているのもバチは当たらないと思う。

 たとえ失恋したとしても良い経験だ。


 私たちのギルドカードは、ハルメニア王国の王城にいつでも出入りすることが出来る様にしてくれた。

 これは今回の件で、どうせナニをしても入られるなら、破壊せずに来いと言うことらしい。

 元々、ビブラエスは、自由に王城へ出入りしていた様だからね。

 レファピテルも王直属の筆頭魔法使いを断って、改めて自由の身となった様だ。


「ねえ、レファピテル。どうしてルリファンが、そんな位を用意したの」

「わたくしの攻撃呪文はたいしたことは無いので、不思議です」

「レファピテルは、防御をさせたら随一だからですよ。レファピテル自身に解けない結界は今まで一つも無かったですよね亅

「ビブラエス! もう、そのくらいでいいでしょう」

 私はヴェルゼーアの方を見ると、頷いていた。


 そして少し様子を見てから戻るとビブラエスが言うので、彼女を残して来た道を帰ることにした。

 途中でアークシュリラが酒粕のことを思いだしたので、あっちこっちへ寄り道もしたよ。

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