56 本当に爆発させていたのだろうか
私とアークシュリラはヴェルゼーアたちが発生させていた爆発は、ヴェルゼーアたち自身が発生させていたのではないのではと議論をしている。
「鳥とかでいないの」
「鳥ねぇ。え~と、ショーヴスーリかなぁ」
「ショーヴスーリってどんなものなの」
「簡単に言うとコウモリだね。攻撃はガスを吐き出して、それを爆発させるんだよ」
「それだったら何回も来させることは出来るの」
「飼い慣らせば出来ないことはないけど……だったら鳩や鷹で充分だよ。それらに運ばせさせればいいだけだよ。衝撃で爆発する様に爆弾を作るのが手間だけど、別に死んでも良いと割り切れば出来るよ」
「そうだよね。戦争だと兵士が死んでも良いって国家もあるしね。鳩や鷹だったら悲しいと言う感情もなく出来るよね。もし、それらだったらヴェルゼーアが、この近くに家を建てるのを認めるの」
「難しいね。私たちだけなら良いけど、お客さんが巻き込まれるとね。あの村はそれで大勢死んだんだからね」
私たちなら攻撃を受けても平気だけど、お客さんはダメだろう。
近くで暮らすのなら二度と攻撃をされない様になってもらうか、お客さんを守ってもらう必要がある。
「そうかぁ、お客さんが巻き込まれてしまうね。だったら馬で1、2時間は離れてくれないと安心出来ないよね。ゼファーブルは半日って言ったっけ」
「相手が、私たちのお客さんと言うかヴェルゼーアの仲間と私たち以外には手出ししないと約束してくれれば、隣でも良いけどね。逆にその場合は、遠いと助けるのが面倒だよ」
何日かしてレファピテルがアークシュリラの店を手伝い出した。
元々料理が好きらしく、アークシュリラが面倒な仕込みとかを頼んでも素直にやっている。
もちろん、納得がいかない所は遠慮せずに聞いているし、おかしな点も指摘もしているよ。
戦闘の時と性格が変わって、積極的になっているね。
まぁ、この世界にある料理は、私たちの中ではレファピテルが一番よく知っているから仕方がない。
地球の料理はアークシュリラが考え出したことにして、レファピテルにも教えている。
そのために材料を見たことがないのに、その料理を思い付くことはないからレファピテルの知識も充分に生かせずにいる。
私に聞かれてもアークシュリラの希望する食材が、この世界の何処かに有るのか無いのかを知らない。
なので、それを使う料理をまずそれを抜きに作って、レファピテルに足りない食材を考えてもらうと言うひと手間をかけている。
レファピテルは、自分が今まで知らなかった料理を作れて嬉しそうだ。
アークシュリラも、レシピなどを惜しげもなく教えている。
その期待に応えようとレファピテルは、定休日もやって来てアークシュリラに教わりながら料理を作っている。
ヴェルゼーアもたまにそれを食べに来ているよ。
最近、私はレファピテルにもう食べ物屋を任せても良いのではとさえ思える。
その時は定休日はなくなるだろうから、薬屋は閉店して醗酵食材の製造だけをやっても良いかなぁ。
「ゼファーブル。レファピテルはスゴく料理が上手いし、イロイロなことを知っているよ」
「そうだよね。それは見ていて判るよ」
「もう、だいたい教えたから別の所でお店をやってもらっても良いかなぁ」
「えっ、一緒にやらないの」
「それも考えたけど、レファピテルがいると今の定休日を維持することが出来ないからね」
前にアークシュリラは、菌が食材を醗酵させるのに必要な時間だからと言っていた。未だにその気持ちに変わりはなくて定休日は維持したいようだ。
「アークシュリラが良いなら別のお店を作っても良いよ」
「それでお客さんを取り合わない様にレファピテルはこの店から遠くでやりたいが、ヴェルゼーアはあの村から今は離れたくないそうだよ」
「じゃ、2人の意見は対立しているんだね。ビブラエスはなんと言ってるの」
「ビブラエスはヴェルゼーアたちがワーグスを退治したので、大臣たちが次にどう出るかをハルメニア王国に調べに行っていて今はいないよ」
「そう」
ヴェルゼーアには諜報が出来るモノがいるのかぁ。良いなぁ。でも、魔法使いがいないよね。私たち5人だったら良いパーティーになったのかも知れないね。
「ゼファーブル。どうしようね」
「アークシュリラは定食とパンだったらどっちが良いの? レファピテルはどう?」
「別々の料理を出すの?」
「それなら傍に有っても平気だし、逆に傍に有る方が相乗効果がでるよ」
「そうだよね。でもパンと定食の両方があると食べたい方を選べて便利だよ」
「じゃ、保存食だけをアークシュリラがやるのも良いよね。レファピテルは街の中でやるんでしょ」
保存食は売れ行きナンバーワンだ。
そもそもここにお客さんが来だしたのも、保存食を置いてからだ。
「そこは判んないけど、考えるよ」
別の日にヴェルゼーアに確認したところ、やはり魔法は使えないと言っていた。
それで爆発の正体を聞いたら、護符を買って勉強をしていたと恥ずかしそうに言っていた。
「恥ずかしくはないよ。誰だって最初は魔法を使えないんだからね」
「でも、私は本を見ても理解出来ない」
「手を貸して」
ヴェルゼーアの手を握り魔力が有るか確認したところ、アークシュリラの最初と同じくらいの魔力はあった。
「魔力はあるよ。これだよ。判る?」
「それが魔力なのか」
「そう、これを手にあっめて魔法を撃つんだよ」
しばらくヴェルゼーアの魔力を左右に動かして練習した。
「でも、私一人だと動かないが……」
「アークシュリラも最初は出来なかったよ。何度も子供向けの本を読んで練習していたよ」
アークシュリラが子供向けの本を読んでいたかは知らない。私は最近それで魔法を勉強したけど、ヴェルゼーアは信じそうもなかったのでアークシュリラにしただけだよ。
魔法使いなら子供の時に子供向けの本を読んでもおかしくはないからね。
「アークシュリラも魔法は使えるのか」
「使えるよ」
ヴェルゼーアの爆発に付いては、私たちの考えは全く違っていたんだね。
「またビブラエスの調べた状況によっては助けるよ」
「ゼファーブル、ありがとう。じゃ、遠慮なく助けてもらうよ」
そこは自分で播いた種なのだから、プライドを高く持って遠慮しようよ。