43 反省会をする
3人が追って来ないくらい離れてから、自分のかけた捕縛の魔法などを解除したよ。
時間で解除させるなんて面倒だからね。
私たちは家に戻って来て、今回の出来事を話した。
「抜け殻はセンチピードだったし、ギルドに依頼も無かったからよかったね」
「アークシュリラとしては、残念だったんじゃないの」
「そんなことはないよ。私は悪さをしてなければ退治はしないけど、他の人が魔物を退治するのは止めないし、悪さをしてないからってその魔物を育てる気もないよ」
「そうだったね」
「ゼファーブルはイツから追って来たモノが、ほら穴に居た魔法使いだと判ったの」
「最初に声を聞いたときかなぁ」
「それだけで判るのって、すごいよね」
「スゴくないよ。街や村の中で治療所をやってるなら、患者と言うか、看る相手は住民がほとんどだよね。しかし、旅をしながら治療をしていると、相手のことを覚えないといけないからね。でも、全員を覚えるなんてさすがに無理だよ。気になっている人だけかなぁ。その人たちの声や歩き方などで、どこの誰ってくらいは覚えるからね。それと治療所だといつでも治療の記録って見れるよね。旅をして治療をしても再び治療をすると思ったら記録はするよ。だって、どんな治療をしたかなんて覚えていないからね」
「そうなんだね。ヴェルゼーアに取っては相手が悪かったね」
「そうなるかなぁ。私の場合は職業病だけど、アークシュリラは気付かなかったの?」
「ゼファーブルが暴発させるって言うまで気が付かなかったよ」
本当に気が付かなかったのかなぁ。
私はアークシュリラが知っているから強く出ていると感じたけど……
それとギルドカードを偽造出来るほどの技術力は無かった様で、3人とも本名であったよ。
「ハルメニア王国のカナルゼン国王って悪い王様だよね」
あの3人はウソは言っていないが、本当のことも言っていないだろう。
暗殺しようと計画を立てるほど憎んでいるのだから、大いに悪いバイアスが掛かっているはずだからね。
「そうとも限らないよ。私がアークシュリラにお茶の葉っぱをあげるでしょ、どう思う」
「ありがたいって思うよ」
「それは仲が良いからかなぁ。仲が悪ければ不要品を押しつけてって思うかも知れないよね」
「確かに同じことをしても、取り方一つで全く違うよね。じゃ、国王もヴェルゼーアの思い込み違いってこともあるのかなぁ」
「あの一本気な性格だからね」
「そうだね、こうだと思ったら彼女は変えないもんね」
「で、職業が剣士なのに、ナゼ魔法を研究してたんだろう」
「あれはもしかしたら魔法ではないかもね」
「じゃ、物理攻撃なの」
「そうかもね。しかし、アークシュリラの様に魔法も使える剣士かも知れないけどね」
「そっか、中に入って機材を見た訳ではないものね」
「そうなんだよ。今思えば自分で爆発させていたんでは無いかも知れないよね。誰かに放たれたかも知れないよね」
「えっ、それじゃ」
「そう暗殺ってことだよね」
思考読解は、質問をしていない物事に関する思考を読解することは出来ない。なので、今回は魔法に関する事を私たちは聞いてないので、ヴェルゼーアたちがどれほどの魔力を持っていて、どんな魔法を使うかは正直に云って解らない。
実際に全く魔法が使えないかも知れないけどね。
使えなかったら、あれは攻撃を受けたということだよね。
「で、あの3人のレベルは2だったよね。アークシュリラは剣で戦ってないけど、楽に勝てるような気がするんだよ」
「レベル2と言っても個人の強さじゃないからね。それにセンチピードではなくって、もう少し弱い相手でも何年間に亘って倒し続ければ、1にだって成れるんだよね」
「そうだね。ランク1の魔物を倒さなくても、長い期間に亘って少し強い魔物を倒し続ければなれるね」
「それに、私もゼファーブルと一緒ならランク1以上の魔物でも倒せそうな気がするよ」
「私はアークシュリラだと一人でも平気な気がするけどね」
「そうかなぁ。しかし、あすこにヴェルゼーアが居たってことは、国王を暗殺しようとした人って訳じゃないよね」
アークシュリラからその疑問がでると言うことは、本人に質問をしていない感じだ。
「ヴェルゼーアは実際に国王を暗殺しようとしたらしいよ。アークシュリラは聞かなかったの?」
「どうしてあすこに居たかとは聞いたけどね」
「じゃ、カナルゼン国王を暗殺することが失敗して、ハルメニア王国から逃げて来たって言ってなかった」
「ゼファーブル、違うよ。強くて師になるモノを探して旅をしていると言っていたよ。そして、自分たちに様々な技を教えて貰うってね」
その思考も間違ってはいない。
そのモノが暗殺が失敗して逃げて来たことより、次なる師匠探しを一番に考えて居ればそうなるね。
「アークシュリラがあのモノたちに教えてあげれば、小遣い稼ぎにはなると思うよ」
「イヤだよ。私が練習しているのは、人殺しのためにしてるんじゃないよ」
「冗談だよ。私もイヤだなぁ。病気を治す仕事をしてるのに、人殺しの手助けをするのはね」
「ゼファーブル。さっき逃げて来たって言ってたよね。ハルメニア王国ってそんな杜撰な国なの?」
「そうだね。国王が暗殺されそうになったのに、その場でも国内でも犯人を捕まえることが出来なかった。その上ここまで逃げられてしまったからね」
「ヴェルゼーアがどう逃げたかも聞いてないけど、国内では騎士や兵士などが犯人探しを血眼になってするよね。特に国境付近では厳重にやると思うけど」
国王を暗殺しようとして、その場所から無事に逃げたってことは、それなりに技能があるのかも知れない。しかし、いとも簡単に私に捕まった。
まさかとは思うが、わざと捕まって私たちの実力を試していたのかも知れないね。
「私は頼まれても、当分の間はハルメニア王国へはいかないよ。暗殺しようとしたモノと間違えられては困るからね」
「私も行く気はないから、その心配は必要ないよ。でも、杖を弓にしていれば魔法使いって思われないんじゃないの」
「そうかもね。ヴェルゼーアのことも有ったけど、今回の目的である神父たちは見つけられなかったね」
「そうだね。本当にあすこら辺に居ないのかなぁ」
「見に行ったよね」
「そうだけど、アンデッドを使ってまでやってたんだよ。そんな軽い気持ちだったとは思えないよ」
確かに自分たちの宗派を広めるためとは云え、やり過ぎの感はある。
どの宗派でも信者を増やしたいだろう。
それを自分たちがいくら管理しているとは云え、遺体をアンデッドにしてまでやることだろうか。
他の宗派でそんなことをしているとは、聞いたこともない。
「そうだね。でも、居なかったのは事実だよ」
「それは判っているよ」
「もし、この付近に居れば、またナニかをすると思うよ。その時のために準備だけはしておこうよ」
「そうだね」