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31 これからどうする

 私とアークシュリラは平原の中で少し高く成っているところから、周りがどうなっているのかを確認した。


 進む先には森があるが、街や村らしきモノは見えない。

 今まで進んで来た方は、この間まで泊まっていた街が小さく見える。

 そして、街道からそれた位置に、多分あれが村なのかなぁと思うものが何カ所かある。

 この周辺にはほら穴が有りそうなところはなかった。

 もし有っても買い出しのことを考えると不便この上ないよね。


「アークシュリラ。もう少し近くに村でもあれば良いけど、やっぱり無いね」

「確かに、この近くに村があって日用品が買えれば、魔物も少なそうだからここら辺で良いよね」

 街とはいかないまでも、最低でも村はそばに有って欲しい。


「それじゃ、森を抜けて先に進もうか? それとも街に引き返して逆の道を行く?」

「難しいよね。ここから見ると街はなさそうだけど、森の先まで行って見ようか?」

「そうだね。何か有るかもしれないからね」

 私たちは、更に先に進むことにした。


「でも、あまり人も通らないよね」

「そうだね。どんどん淋しくなって行く感じだよね」


 すれ違う旅人の数は街を出てから、どんどん減っている。

 私たちは、行ってはいけない処へ向かっている様な感じさえする。

 やはり引き返して西の方に進んだ方が良いかも知れないなぁ。

 それにあまり南に行くと、今度は暑くなって北に戻る時に辛くなる。

 アークシュリラが言った様に、森か林の様子を見て考えよう。


 もう、周囲には私たち以外は誰も居ない。

 目の前には鬱蒼とした森が、魔物の様に街道を飲み込んでいる。


「アークシュリラ。道は森を抜けるヤツしかないけど、引き返す?」

「森の中は整備されていないと思うから歩きにくいかも知れないけど、邪悪な気配はしないよね」

「確かに結界とかはなさそうだけどね」


 森を早く抜けるなら、この道を通る以外はない。

 しかし道は無いが、森の外周を歩いた方が魔物が現れても対処し易いと思う。

 その場合、森の向こうにたどりつくのに掛かる時間……距離は絶対に長くなる。


「ゼファーブル、こっちで良い?」

 アークシュリラは森の中を抜ける道を指し示した。

 どっちでも森の向こうに行けるだろう。

 2人居るから距離が短い方で良いかなぁ。

「それじゃ、アークシュリラの思った通り、森の中を行こうか」

 私たちは森の中に延びる街道を進むことにした。

 さすがに街道自体が木々で覆われている様なことはなく、街道から少し離れた所まできちんと伐採されている。

 冒険者や旅人が通るのに邪魔な木々を、少しずつ切ったりして道が出来たのかなぁ。

 我々が進んでいる街道も、数人が並んで通っても平気な広さがある。

 途中から獣道になることもなさそうだ。


 森の中にあるだけあって、街道を行き交う人は全く居ない。

 そもそも街を出てからの街道でも、行き交う人は少なかったからね。

 なんだか、この先に街があっても、それ自体が寂れて無ければ良いけどね。


 私たちは、もう森を抜けそうだ。

 何事も起こらなくて良かったなぁ。

 それから少し歩いて、私たちは森を抜けた。


「良いところなんだけど、ナゼここに街が無いんだろうね」

「そうだね。私たちにとっては住みにくいところだけど、普通の人間なら素晴らしいところだよね」

「アークシュリラ。なんか、言い方にとげがあるよ」

「そうかなぁ? これだけなだらかな草原がずっと続いていて、大河と云わないまでも結構大きな川も流れているからね。街を作るには絶好の場所かと思うけどね」


 それは私にも判る。川の水量から云って、これなら結構な人数の飲料水を充分に確保出来るし、少し離れているが海もあったから塩も入手可能だ。

 少し離れて居るってことは、海による影響で金属とかが錆びることも少ない。

 それに海との間には森もあるからね。

 その森があることで、もし攻められても侵攻ルートは限られる。その分守りやすい場所と言うことだ。


「どうする? これ以上進んでも同じかも知れないよね」

「そうだね。人が居ない理由が分からないことには、これ以上進んでも仕方ないよね」

 平原は草に覆われているから、植物が育たないとは思えない。

 だとすると今は姿を現していないが、とんでもない魔物が付近に住んで居るのかも知れないし、定期的に河が氾濫するか有毒なガスとかが発生するので街はおろか人々もいないのかも知れない。


「ゼファーブルはこのまま旅をするのと、今までの生活ではどっちが良いの?」

「急にどうしたの?」

「まだ私も結論に達して無いんだけどもね。私はこの星のことをたくさん知れたから、この旅は楽しかったよ。まだ見たことも無いところは沢山あるから、旅を続けていたいと思ったんだけど、ゼファーブルはどうかなぁって聞きたいんだよ」


 私は両親と一緒に旅をしていたけど、全世界を廻った訳では無い。

 行ったことの無いところの方がまだ多いと思う。

 ここだって始めて来たところだ。

 アークシュリラは私と会ってからの僅かな時間で、旅をした場所以外は行ったことはない。なので旅をして、知見を広めたいと云う気持ちも分かる。


「アークシュリラ、ごめんね。私は今までの生活が良いけど、確かに住むのに適したほら穴を探すってことは大変だよ。更に、良い所を見付けても、今回の様に周囲に変な人がやって来ることもあるからね。でも、たまに薬を売れば生活することができて、自由気ままなあの生活が好きだよ」

「自由気ままと言うなら、無理にほら穴を探してそこに住まなくて、旅をしている今の生活もそうだよね」


 私は一人だったこともあり、危険を冒してまで旅をするより安全なほら穴で暮らしていた。それは一人で旅をする度胸がなかったからとも言える。

 今もアークシュリラがいるのにそう思っている。

 それまでの私は少しの攻撃魔法を使えれば、ウルフたちが相手だからそれで充分と思っていた。アークシュリラと知り合ったことで、私も今まで使えなかったたくさんの魔法を覚えた。

 それに住む処は、絶対にほら穴じゃないとダメって訳ではない。

 私も、森とかだと木の上で生活したこともある。

 ただ、そこに定住するつもりが無いので、家を建てる気持ちはなかっただけだよ。

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