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30 念願の食材が見つかった

 私たちは、冒険者ギルドで周辺の地理や討伐依頼の内容を確認した。

 ここまで来る間に感じたとおり、強そうな魔物の討伐依頼は無かった。

 確認が終わったけど、宿屋に帰ってもやることはない。かといって、ここに居て周囲に居る人々の話に耳を傾けて聞いている気にはならない。

 消耗品の補充など、明日出来ることを無理に今日やる必要はない。

 もし、それをやってしまったら明日は、1日やることがなくなる。

 とりあえず屋台街とかを見て廻ることにして、時間を潰した。


 翌日はアークシュリラと不足気味の消耗品を補充しに、いろいろなお店を廻っている。

 先ずは薬を入れる小瓶とか包む紙を買った。

 少量なら紙に包んで渡すが、ある程度の量だと小瓶の方が便利だからね。

 ランタンの油はアークシュリラのアイテム袋に入れてあれば劣化しないので、使った分を買うことにした。

 しかし、いくら劣化しないとは言え、必要以上に買うことはしない。

 後はインクとかも補充してと。

「これで補充は終わりだよね。アークシュリラ、これで買い忘れているモノは無いかなぁ」

「塩とかも少ないよ」

「じゃ、乾物屋か雑貨屋に行こう」


 私たちはぶらぶら歩いている。

「ゼファーブル。ここだね」

 塩は有るかなぁ。


「ゼファーブル。大豆が売っているよ!」

「本当だね」

 アークシュリラはお店の人に尋ねた。

「味噌と醤油はありますか?」

「はい、有りますよ。味噌は米と豆で作ったモノがありますがどちらでしょう」

「両方とも下さい!」


 アークシュリラは小さな桶ごと味噌と醤油を買った。

 本当に恋しかったんだね。

 でも、売っていて良かったよ。

 これが味噌と言うものなのか。

 もう見たので後は少し食べれば、これからは大豆があるなら同じモノなら作ってあげられる。


「済みません。大豆ってここいらで採れるのですか?」

「この周辺の村々で栽培されてますよ」

「アークシュリラ、良かったね。栽培されているらしいよ」

「うん。良かったよ。あと納豆とか豆腐は……」

「納豆は二軒先で豆腐はこの通りを少し歩けば売っていますよ」

「ありがとう」


 アークシュリラは、それぞれのお店で納豆と豆腐も買った。

「ゼファーブル。これは食べたことは無いでしょ。何処かで食べようよ」

「それじゃ、広場で食べようか」

「そうだね」

 私たちは広場に行き、アークシュリラが先ず豆腐を私に差し出す。

 豆腐屋は豆腐を使いやすい様に小分けで売っていた。


「アークシュリラ、どうやって食べるの」

「醤油を付けて食べるんだよ。よく見ててね。こう」

 アークシュリラは豆腐を箸でうまく割って、豆腐屋で貰った醤油に付けて食べている。


「こうだね」

 私の豆腐は直ぐに崩れて、容器の中に落ちた。

「ゼファーブル、力を入れ過ぎだよ。豆腐は柔らかいからね」

 何度となく箸で持つのに挑戦して、私の豆腐は容器の中でごちゃごちゃに崩れてしまった。

 最後は容器から直接自分の口の中に入れた。

 まだ大きな塊も有ったので、食感は判った。


「面白い食感だね。それに美味しいよ」

「そうでしょ。次が問題の納豆だよ」

「どうして問題なの」

「匂いがダメな人が居るんだよ。クサイってね」

「私はどうか判らないから、少しで良いよ」

「少しだと混ぜるのが難しいよ。なら私が混ぜるね」

 アークシュリラは先ず納豆を取り出して私に渡した。

 私は匂いを嗅いで、アークシュリラに返した。

 クサイって言っていたけど、子供の頃に食べた魚の塩漬けほどではない。

 それに他にも匂いのキツい食べ物は、この世界にはたくさんある。


 アークシュリラは納豆をかき混ぜて、これにも醤油をかけている。


「ゼファーブル、容器を出して」

 私はアークシュリラの方に容器を差し出した。

 アークシュリラは、納豆を少しだけ私の容器に載せた。


「どうかなぁ。食べられそう?」

 私はアークシュリラが分けてくれた納豆を、箸で少し摘まんで口に入れた。

「美味しいよ。これも面白い食感だね」

「良かったよ。でも、豆腐も納豆も大豆から作るけど、私には作れないけどね」

「豆腐は良く判らないけど、納豆は大豆を発酵させればできそうだね。これなら作れると思うよ。でも、味噌とは違うよね」

 アークシュリラが買った味噌とは、ナンか違う気がした。


「味噌も発酵させるけど、違うよ。少し食べる?」

「うん。味見をしたい」

 アークシュリラは二種類の味噌を容器に入れてくれた。


 どれどれ。

 味噌は納豆と違って原形を留めていないが、これも発酵させている感じがする。

「全然違うね。それにしょっぱいから塩も入って居るね」

「うん。入ってるね」

「これも大豆があれば作れると思うよ」

「本当に」

「ちょっと試行錯誤をするけど、発酵だから多分大丈夫だよ」

 そして、残りの時間はアークシュリラの魔法の練習に付き合って終わった。


 そして、三日目の朝食を食べてから、私たちは宿屋を出発した。

 宿屋に近かった東門から街の外に出た。

 街道は、街の中にわざわざ入らずにそのまま南や北に向かう道もある。

 北へ向かう街道は私たちが来た道に続いていると思う。


「どっちに行こうか?」

 私がアークシュリラに尋ねると、アークシュリラは周囲を見渡して答えた。

「どっちも同じ感じだね。ゼファーブルは、ここには来たことは無いの?」

「この間まで暮らしていたほら穴の辺りまでかなぁ。私は冬を越す間だけだったからね。だから海がこんなに近くに有ることも知らなかったよ」


 私は冒険者や探検家ではないから、世界中を旅している訳では無い。

 それは両親が居た時の旅でも、大陸内のあっちこっちへと行くことはあったけど、船に乗ることはあまり無かったからね。

 今は寒くなってきたら暖かい南に行き、暑くなってきたら北へ戻る生活をくり返していただけだよ。


「じゃ、杖に決めてもらおうか?」

 私は杖を道の中心に立てて、手を離した。

 杖は、少しして東側に倒れた。

 そして私は位置を変えながらそれを3回繰り返して、多く倒れた東側の道を進むことにした。

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