表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/268

2 はじめまして その2

 私は、先ず採ってきたキノコを天棚(あまだな)の上に並べて置いた。

 そこに置くのは、煮炊きをする火の熱を利用して早く乾燥をさせるためだよ。

 乾燥をさせるのは保存に適した状態にして、少しでも長く日持ちさせることでもある。

 いくらこの世界には至る所に食べられるモノがなっていると云っても、いつも晴れている訳では無くて雨風の強い日もあるし、晴れていても私の体調が優れない日もあるからね。


 火がある程度強くなったので、天棚(あまだな)に置いてある以前仕留めたウルフの肉を、少しばかり切り取る。

 それを鍋に水と一緒に入れて煮込むことにする。

 もちろんそうするのは、この肉も乾燥しているので随分と堅くなっているから、煮込むことで肉を軟らかくするためだよ。

 それにただ煮込んだだけでも、非常に美味しい出汁もでるしね。


 地震が発生する前の私たちが旅をしていた時に、両親は野山に咲く野草や海などに生息している海藻などから、様々な効能のポーションを作っていた。

 そのポーションは自分で使う訳ではないよ。

 それを街とかで売って、必用な日用品を買ったり、宿に泊まったりするための生活費を得ていたんだよ。


 両親は植物でしかポーションを作らなかったけど、その際に、私に薬になる植物の見分け方とか、ポーションの作り方や下処理の仕方などを丁寧に教えてくれた。

 私も両親のその血を、しっかりと受け継いでいるよ。

 本当にこの能力のお陰で、私は一人でも今までなんとか死なないで済んでいる。


 なので私だってポーションを売ることで、両親が居たときと同様に街の中で生活をすることはできるよ。

 でも、街の生活は何かと疲れるから、どうしてもそこで常時暮らす気にはなれない。

 たまに街へ行って、買い物や食事とか宿泊をするだけで充分だね。


 そろそろ、ここも寒くなって来たから、もっと暖かい所へ行こうかなぁ。

 南に行くなら今ある食料が無くなる前に、次に住む所を見付けたいなぁ。

 次は森にしようかなぁ。

 それとも海かなぁ。

 でも海って、この大陸へ渡って来た北にある所しか知らないけど、南にもあるのかなぁ。


 その前に街でポーションを売って、少しのお金を作らないとダメかなぁ。

 でも、ここの近くにある街って、ポーションをあまり高く買ってくれなかったんだよね。

 どこの街で売るのが良いかなぁ。

 じゃ、旅立ってから街があれば、金額とかを確認してからそこで売ればいいよね。

 それに私は昆虫などの生き物や鉱物など、本当に何からでもポーションを作ることが出来る。それなので薬の材料が無くなるってことはあり得ないしね。


 ポーションはまがい品が多いらしく、だいたいの街で勝手に売ることはできない。

 街の中で売る際には、商業ギルドなどから販売許可証を発行してもらわないといけない。

 などと言うのは、たまにギルドでなく領主がそれを発行している所もあったからね。


 販売許可証は誰が発行していても、申請して直ぐに発行されることはない。店の図面とか、ポーションの品質確認とかで何回も出向いていかないとならない。

 その上、屋台や露天だと売り切って逃げることの無い様に、保証金を納める必要もある。

 許可証をもらわないなら、ギルドに引き取ってもらうことになる。

 ただし自分で売った場合より安くなるけど、申請とかの手間がかからないから便利だよ。

 だから、私はもっぱらギルドに売っている。


 ポーションは効能により、買い取りの金額が当然変わって来るよ。

 それは効果が高いほど、また、短時間に効きだして持続時間が長いほど高く買い取ってくれる。

 しかし、あまりに性能が良いと、ギルドや国家から目を付けられるから注意が必要なんだよ。

 私はこの生活をしだした頃に良く判らなかったから、自分が作れる最高のモノを作って売りに行ったんだよ。


 そしたら、危うく国家所属の錬金術師(アルケミスト)にされそうになったことがあった。

 国家所属の錬金術師(アルケミスト)は、神官や治療師(ヒーラー)などからの依頼でポーションを作るけど、国内で国民が普段使うポーションを作る仕事ではないよ。

 その多くが、戦争による怪我の回復や治癒。または、権力者が欲する都合の良い薬とかの開発や製作をするんだよ。


 普通の錬金術師(アルケミスト)なら研究室か作業部屋から出ないで済むけど、私の場合はあらゆるところでもポーションを作れるからね。

 それが判ったら最前線に送られるかも知れない。

 そんなことはまっぴらごめんだよ。

 この能力は、以前に両親から人には言ってはいけないと言われている。

 良く判んないけど、凄い能力らしい。


 だからという訳ではないが、万が一にでも怪しまれない様に、両親が使っていた道具――錬金に使う錬金釜や錬金炉、合成に使う合成釜や合成の布とかもアイテム袋に入れてあるよ。


 さらに薬草を調合する、フラスコやビーカーとかアルコールランプなども買って有るけどね。

 でも、私の場合は、鍋が一つあれば全部出来るから、本当のことを言えば、道具類は一切必要ないけどね。

 それらのほとんどが両親の形見だから、必要はないけど捨てることはありえないよ。


 もし、私が国家所属の錬金術師(アルケミスト)になったら、今の様に自由に暮らすことは出来なくなるし、私の薬を必用としている人に届けられない。

 私だって今の様にほら穴で生活をしている状態で、薬を必要としている人々に届けられるとは思って居ない。

 しかし、一人でも多くの人に、必要な薬を届けられたら嬉しいよね。

 自由と引き換えに地位や名誉をもらっても、私は全く嬉しくはないよ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ