27 調査が終わった
私たちは教会に侵入して、アンデッドを使ってまでやっている証拠を各部屋で探している。
「ないね」
「あの部屋がこの建物で最後だよ」
「そうだね」
扉は別段他と変わりはなく、ここも質素な造りの扉が付いている。
「じゃ、開けるよ」
「判ったよ」
中もとりわけゴージャスってことは無いが、大きな机と数人が話せるソファーがおいてあった。
「ここが司祭の部屋かなぁ」
私がアークシュリラにそう言うが、アークシュリラは既に机などを調べている。
「有ったよ。これだね」
アークシュリラは巻物を手にして私に駆け寄ってきた。
「どれ、見せて」
その巻物には、教会の領地内に居る魔物や我が宗教を信じないモノに罰を与え、我々の教えを広める様にと書いてある。そして教会の大司教の名も記してあった。
「これじゃ。タタの宣教の指示だね」
「違うよ。その先」
「えっ。まだ有ったの」
大司教の名の続きに、それを達成するために行うことが書いてあった。
「そう。でもイファーセル国とかは関係無かったんだね。私たちの考えて居たこととちがったね、ゼファーブル。でもこれを持って行ったら侵入したことがバレるよね」
「大事な書類が無くなればバレるよ。でも、大丈夫」
「複製」
私はその巻物と全く同じ複製を作った。
「これで持って帰れるよ」
「スゴいよ。ゼファーブル」
その後、どの墓の遺体をアンデッドとして使ったかと云う、様々な記録なども見付けることが出来た。
そして、神殿との裏取引の証文もね。
そこには教会がここに存在することを認める代わりに、毎月末に銀貨12枚を納めることと書いてある。
そしてお互いが行うことが細かく書いてある。
「アークシュリラ。こんなモノを作るから私たちに見付けられちゃうんだよね」
「ゼファーブル、それは違うよ。口約束じゃ、あとで言った言わないに成るから細かく書いてあるんだよ」
全ての書類は元通りに戻して、私たちは教会を後にした。
もちろん玄関とか鍵が掛かっていたところは鍵を掛けて、人形化を解除した。
解除しなくても私の魔法はそれほど強力で無いから、朝になれば自然と解ける。しかし、私は少しでも寝ている時間を短くしたかったからね。
それは巡回中のモノが居たら、時間だけが過ぎているから不思議に思うよね。
これで誰かが侵入したってことは、直ぐには判らないと思うけどね。
「どうする。宿屋に行っても閉まっているよね」
「ついでだから、神殿に行こうか」
「そうだね。どうせダルフさんに話したら神殿もってなるよね」
「ゼファーブル、ベルモさんたちは、教会って領土じゃないから裁けないって言ってなかった? 神殿の方がベルモさんたちにとって必要だよね。今から行くとしても、でも門は閉まっているよね」
「平気じゃない。ちょっと大変だけど壁を越えれば良いんだしね」
「え~。あれを超えるの? そこは魔法で飛ぶからって言わないの?」
私たちは教会の帰り道にある神殿もついでに侵入して、幾つかの書類を持って帰る事にした。
「もう、鍛冶屋はやっているかなぁ」
「朝は早そうだからやっているかもね。行こうか」
ダルフさんの鍛冶屋からは、既に金属を打つ音が聞こえている。
他の鍛冶屋も同様だ。
「ダルフさん。手が空いたら店頭に来てね!」
「おう。判った」
私たちは店頭に並べてある刀剣類を眺めている。
どれも素晴らしいできで、私が精神集中して錬金術で産み出す金属よりも数段切れ味がよさそうだ。
これがドワーフの技術ナンだね。
しかし、アークシュリラが持って居る剣を見ている私からすると、どうしても荒さが目につくけど……
そんだけアークシュリラの持つ剣が、スゴいんだろうなぁ。
「待たせたな。それでナンダ」
「例の件を調べてきたんだよ。ここで話しても良い」
「それだったら、奥に来てくれ」
ダルフさんに書類を全て渡した。
渡したモノは現物と寸分の狂いもないモノだけど、複製であることも話してある。
「そうか、アイツらが見たのは教会が作ったアンデッドだったのか。それに教会と神殿もこんな取り引きをしているんだな」
「そうみたい。これをみてどう言うようにするかを決めるのは村長たちの仕事だから、私はそれについてはナニも云わないよ。私たちはこれで心置きなくモランデティスを助けるために、アンデッドを撃破できるってことだけだよ」
「本当にそれで良いのか? これを見付けるのだって大変だっただろう」
「それが侵入する際の約束だからね。それに私たちは名誉やお金が欲しくってやった訳じゃないしね。それと要らないかも知れないけど、嘘が言えなくなる薬も上げるよ。怪しいモノに飲ませるんだけど、飲ますならお湯とかに入れれば完全に溶けるよ。量は五錠を普通のヤカンくらいに溶かせば良いよ。その方が各自に飲ますのより楽かもね」
「そうか、ならばワシも何度も言わん」
「でも、もし神殿や教会とダルフさんたちが戦いになりそうだったら、私は助太刀はしますよ。折角ダガーも作ってもらったんだからね」
「お前さんはダガーで戦うのか?」
「ダルフさんが作ったダガーですよ。あのモノでしたら、剣でなくてこれで充分ですよ」
アークシュリラはダガーをなで、そしてダルフさんは笑った。
その後、数日宿屋に居てから私たちは住み処に戻ることにした。
その間に治安維持をするドワーフの兵士が神殿に行き、神官たちや教会のモノたちを捕まえた。
裁判もドワーフの村で行われて、教会と連んでいた神官たちは追放となった。
教会の方はこの村の領地ではないが、アンデッドに関わっていたモノは同様に追放となった。それ以外のモノは墓地の管理を確実に行う条件で、罪にしなかったとダルフさんが教えてくれた。
そして、教会も建物と墓地はドワーフの村で管理をすることとして、サバラン教から特定の宗派に属さないモノになったとも言っていた。
裁判の中でギルドにいたサバラン教の信者が、スパイの様なことをしていたことも明るみに出たが、教会の宗派が代わったと時を同じにしてそのモノも姿を消したらしい。