265 話し合いをする。その2
私が話に詰まってしまったので、アークシュリラが話し出した。
「ゼファーブルの言うように、私も少しなら懲らしめても良いと思うけど、そのモノたちを排除するコトは出来ないよね。悪い支配者だとしても、排除すれば住民たちが幸せになると考えるのは違うよね」
「そうだな。たとえが悪いが、人々に飼い馴らされた動物は、自分から狩りをしなくなる。それはナニもしなくてもエサを貰えるからだ。そもそも狩りは、絶対に仕留められる訳でも無い。その上、逆に自分がやられるコトもある非常に効率の悪いモノだからな」
「支配者が居なくなると、この国の住民たちは自分たちで己のコトを守らないといけなくなりますモノね。今までは気に入る気に入らないに関わらずに、ナニも考えていなかったのですから幸せになるとはいえませんね」
私たちは確かに頼まれなくても、悪さをしていたモノを懲らしめたり、排除したりしたコトはある。
でもそれは被害に遭っているモノが無抵抗だった訳ではなく、一生懸命にそれらに抗っていた。
たとえそれが、見当違いの抗いであってもだ。
私たちが知らないだけかもしれないけど、まだ抗っているモノの存在をこの国では確認出来てはいない。
「先ほどの話だが、独立を計画するモノがいると言うのは本当なのか」
ヴェルゼーアが確認をする様に聞いた。
「言った通り、二人だがいるな」
「残りの三人の家来ではどうだ。公爵なら自分の領地内に伯爵や子爵がいてもおかしくはないけどな」
「当然いるぞ。表向きは公爵に忠誠を誓っているな」
「そのモノの中から体制を変えるモノが現れると、ヴェルゼーアは考えているのですか」
「別に爵位のあるモノで無くても良い。住民たちに期待出来ない以上、そう言う運営をしているモノたちでもよいと思っただけだ」
ヴェルゼーアの言うコトも理解出来る。
領地を運営しているモノたちなら、少しでも良くしようと考えてもおかしくはない。
「今は上のモノたちに従っているが、独立戦争になれば反旗を翻すモノも出て来るかもな」
「住民たちでなく上のモノにも調査の手を広げるとなると、忍び込むのは手間だぞ」
「ビブラエス、そうだが。ひとまずジョバル公爵の処が、一枚岩かが気にはなるな。そこを中心に調べてみようか」
「そうだな。ジョバルの所が一枚岩でなければ、私たちも偽情報を流すとか動きようはあるな。それに自分の領地に不穏な噂が上がればイルーツに来ることもなくなるな」
「そう言うコトだ」
今エトガヌン連邦内をみんなが調べて居るのも、ジョバル公爵がナニをするためにイルーツに来るのかを調査するためだ。
黒死病が流行りそうだとか、搾取しているとかは調査していて知ってしまったコトだが、ジョバル公爵がイルーツに来なくなれば目的は達成となる。
「別にそのモノたちが私たちに協力をしてくれなくても良いけど、やっぱり住民たちを苦しめている根源には、お仕置きしたいなぁ」
「ゼファーブル、判った。二人が各街や村に行って治癒をかけている間に、私たちで支配するモノの中にまともなモノがいるか、それともいないかを調べてみる」
公爵にお仕置きと言う名の制裁を加えて、無政府状態にはできない。
また、可能性はとても低いが、公爵は真面目に領地の経営を行おうとしているけど、家来たちが命令を拡大解釈しているとか、言うことを聞かずに搾取しているコトも考えられる。
ビブラエスは公爵を中心に、ヴェルゼーアやアークシュリラはそれ以外から情報を集めるコトになった。
私はレファピテルと病が蔓延しないタメとみんなが万が一にも感染しない様に、先ずは各街や村へ行くコトになったよ。
「これで15コ目の街が終わったね」
「そうですね。街の外からでも、治癒魔法が掛けられたのが大きいですね」
「そうだね。街の中にある広場とかだと、どうしても人が居るからね。人がいない所を探していると、その分時間がかかるよね」
最初の四、五箇所は街に入って、人通りのない所へ行ってから魔法をかけていた。
途中で場所を探すのが面倒くさくなって、試しに街の外から霧を発生させて魔法の効果を確認した。
そしたら問題なく出来たので、今度は治癒魔法をかけて状態をみた所、人々の感じからして効いている様に思われた。
あと、せっかく全ての街や村に行くのだから、一緒に井戸水などの浄化もやっているよ。
「まだ行くところは多いですよ」
「幾つあるんだっけ」
「小さな村も入れて、全部で52コですね」
「あと37もあるの?」
「そうなりますね」
私たちは街や村の視察は二の次にして、治癒と浄化の魔法をかけまくった。
それでも、一応、街や村の中へ入って病人がいないことと、井戸などが浄化されているコトだけは確認しているよ。
「やっと、全ての処が終わりましたね」
「長かったよ」
「レファピテル、もう一回全土に浄化をかけて、私は治癒をかけるから」
「そうですね。こんなに広範囲では気休め程度にしかなりませんが、このエトガヌン連邦全土にかけてみますね」
「別にエトガヌン連邦以外にも及んでも、良いよ」
「領地だけなんて、そんな面倒なコトはしませんよ。範囲は円の方が簡単ですからね」
「治癒!」「浄化!」
私たちはほとんど同時に魔法をかけた。
魔法の範囲が一国全てとめちゃくちゃ広いので、実際にどのくらい効いているのかは判らない。
なので、本当に気休め程度にしかなってないけどね。
「これで終了ですね」
「今みたいなことを毎日やるコトは出来ないし、あとは無理だよね」
「そうなりますね。で、全部の街や村に行きましたが、ゼファーブルはナニか感じましたか」
「私が感じたのは、この国って魔法はそれ程発展していないコトかなぁ」
「それもありますね。どこの街でも初歩的な魔法しか使っていませんでしたね」
レファピテルの言い方では、私に違ったコトを感じて欲しかったみたいだ。
ナンだろう。
レファピテルと一緒に廻った、街や村のコトを思い出す。
だが、これと言ったモノは出てこない。
「レファピテルはナニを感じたの?」
私は降参をして、レファピテルに尋ねた。