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264 話し合いをする。その1

 エンギルの神殿付近に集まった私たちは、各々がアイテム袋からお菓子や飲み物を取り出して話し合う準備を終えた。


「ゼファーブルは、エトガヌン連邦で発見したのは黒死病以外にナニかあるか」

 ヴェルゼーアが、いつもの様に進行をする。


「私はフォルデ公爵領に着いたばかりだからあまり見てないけど、住民たちは役人たちにいろいろと搾取されている感じがしたよ」

「そうですね。どこの街でも同じ様な感じでしょうから、その件はあとでまとめて話しましょうか。先ずは黒死病が流行るかですね」


「このままナニもしなければ、全ての街とは言わないけど、かなりの街で流行ると思うよ。国の中で人々の交流や移動がどれくらいあるかはまだ調査してないけど、行き来が普通にあればその地域も一気に拡大するかなぁ」

 病人を隔離するコトが出来れば、多少は拡大するのを遅らせるコトは可能だ。

 しかし、罹患したモノを治療したり、根本的な病原を取り除いたりしなければ、いつまで経っても終息する訳はない。


「農作物は、近隣の街と取り引きをしている様だったね」

「あとは兵士もだな。徴兵されれば、出身地付近に配属する様なことはしないと思うぞ」

「と云うコトは、拡大するってことだよね。ゼファーブル、どうするの?」

「街に張り巡らされている結界は、内部からは平気みたいだから黙って治癒(キュア)をかけようかと思うよ」

 実際に魔法が使えるかを試した訳では無いが、門番の感じからして街の中では魔法が使えると感じた。


「そうだね。公爵に面談して治療の許可をもらってから、一人一人を診察するなんって出来ないよね」

「これから直ぐに会って、許可をくれるなら良いけどね。そうすれば各街にも行きやすくなって診察も楽になるんだけど、そんなコトは無理だと思うよ。それにあの薬も、全員になんて配れないよ」


 本来なら一人ひとりの病状を診て治療が出来れば良いが、如何せん罹患している人が多すぎる。

 全員の診察を、限られた時間で私が一人でやれるはずはない。

 ちんたらやっていれば、治療しても再び罹患するモノが現れる。ならば、一人ひとりではなく、一気に片付けるしかない。


「そうするしかないな。この国で罹患したモノが他の国へ行けば、それこそこの大陸全体に影響が及ぶよな」

「そうだな、ヴェルゼーア。これは一国のタメにやると云うコトではないな」

「私は既にエトガヌン連邦内にある全ての街に行きましたから、ゼファーブルをどこへでも連れていけますよ」

「ありがとう」


 黒死病については、私たちが勝手に治癒(キュア)の魔法を掛けるコトに決めた。


「それでは、先ほど保留にしたヤツで良いか」

「そうですね」

「私が聞いた話では、品質の良いモノを取ってるらしいよ」

「ゼファーブルの見た所って、フォルデ公爵領だよね。あすこは税金は物納をさせていないよ。全てお金だと聞いたけどね」

「フォルデ公爵領だけでなく、エトガヌン連邦内にあるほとんどの処が現金だな」

「それだったら、役人が徴税とは別に勝手にやってるの?」

「その可能性が高いな。しかし、公爵らが役人たちの行動を黙認しているか、やらせているかもな」

 ヴェルゼーアがみんなに聞いた。


「私が聞いた所では、少しは取られると言ってましたが、そんなに気になるほどではなかったですね。しかし、ゼファーブルの話では商売に影響が出ている感じですね」

「そうナンだよ。売っているモノはどれも形が悪かったよ」

「形が悪くても買う人がいて、売れるんだよね。じゃ商売になっているよね」

「そうだな。他の国みたいに、形の悪い作物は畑の肥やしにするわけではないなら問題はないな」

「ヴェルゼーア。でも、形が悪くて高く売れないかもな」

「そうだが、形が良い作物はどの位取れるのか」


 私はこの国の農産物の出来が、どの程度なのかを知らない。

 店先に並んだ商品がイルーツより良くなかったから、食べ物を買った際に聞いたまでだ。

 イルーツでも形の悪い作物は取れるが、それらが店先に並ぶコトはない。

 そのほとんどは食堂で利用されている。そう、切り刻まれてスープの具材とかになるよ。


「私が聞いた処では、イルーツとたいして変わらない感じだな」

「そうだね。私も同じだったよ。ゼファーブルが見たお店が、上手く仕入れられなかっただけかもね」

「アークシュリラ。しかし、税金以外にも取られているのは事実ですよ」

「そう云うコトだな。相手は武器を持っているから、寄越せと言われれば簡単には歯向かえないよな」


「それが気にいらないなら、無理して国に残る必要はないよね」

「そうだな。残って自分が変えるという気概があれば別だがな」

「でも、これは一国の問題だよね。私たちがどうこうするコトではないね」

「そうなるな。私たちが対応出来るコトは少ないな」


「他にあるか」

「国の運営と云うか、セシルルとケモルドの両公爵はエトガヌン連邦から独立を模索しているよ」

「そのコトは私も気にはなった。両名の領地は国の外れ、他の地域と接するところだよな。それに、その二人の領地を併せると、この国は分断されるな」

 ここでビブラエスは懐から略地図をだして、私たちに渡すと話を続けた。


「五人のうち二人が抜けるのだから、私たちが手を出さなくてもエトガヌン連邦は縮小するか、崩壊するな」

「それって直ぐではなくて、ナン年か後の話だよね」

「飛び地になると国としては運営しづらくなるが、残った地域が独立をするのは早くても数年はかかると思うぞ」

「崩壊すると言っても、それって連邦がだよね。小さくはなるけど、住民たちを苦しめているモノたちは安泰なんだよね」


「そうだな。各公爵領が一つの国となるだけだから、運営しているモノたちはほぼ変わらないな」

「それにゼファーブルは公爵たちを懲らしめたいみたいだけど、ジャイアントヴェスペやアントなども配下や仲間から搾取しているよね。人がそれをやるのはダメで、虫なら良いって変だよ」

 確かにジャイアントヴェスペやアントなどの虫たちも、働くモノや子孫を残すモノなどの区分けがきちんとされている。

 人だけは、全員が平等でなければいけないとは云えない。


「そうだけど……」

 それでも、やはり私は納得はできない。

 ヴェスペやアントは生き残るためにそうしているが、人の場合は上のモノが自分たちに都合の良い暮らしをするためにやっているコトが多い。

 今ここで短い時間この話を言い合っても、私が納得の出来る結論に到達するコトはまずあり得ない。

 しかし、長い時間をかけて話し合えば、納得が出来る答えを導き出せるとは考えてはない

 私は言葉に詰まった。

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