表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
263/268

262 フォルデ公爵領に着く

 ヴェルゼーアは当たり障りのない文章で、来なくて良いという内容の返事を書いた。


 運営していたモノたちは、今までは手の空いたモノが中心になってやっていたコトを担当制に変えて、責任の所在を明確にした。

 それに伴って、体制作りにも着手したようだ。


「ヴェルゼーア。新体制ってハルメニアを真似たの?」

「隠しても仕方ないから言うが、参考にはしたようだ。でも、他にいくつかの国も参考にしている。ここでは神殿担当は必要だが、神託を占いによって授かる必要はなく直接神に聞けば良いのだから、他の国にいる神祇官は不要だな」

「そうだね。あと軍や兵士などはいないから、それを統括する担当もね」

「そうだったな。街自体の治安を守る組織は必要でも、戦いは我々がやるからその組織はいらないな」


 この街には治安を維持するタメにゴーレムやホムンクルスはいるが、それは軍隊ではなく警備隊である。

 あくまでもこの街の中だけで、街の外で起こるコトの対応は基本的に私たちの仕事だ。

 しかし、街への入り口付近で暴れるモノがいて、街の範囲と決めた処から一歩でも出たら私たちとキレイには別れていないよ。

 そこは臨機応変に対処してもらっている。

 その訓練は、ヴェルゼーアやアークシュリラが行っている。

 なのでやるコトと云えば、ゴーレムやホムンクルスたちに異常がないかと日々に起こったコトの確認くらいだね。


「あれから、公爵からはナンか言って来たの?」

「音信不通だな。たまに出向いている様だから、心配ならビブラエスらにでも聞けば教えてくれると思うぞ」

「ヴェルゼーアは、心配じゃないの?」

「ナニかリアクションを起こすとか、ここに軍隊を派遣するかは、相手が決めるコトなので心配しても仕方あるまい。私たちに出来るコトは、来たらこの街を守るコトだけだ」

「そうだけど……」


「レファピテルとアークシュリラも、エトガヌン連邦に何回も行っているぞ。多分だがジョバル公爵領以外の所にも、確認に行っている感じだな。そんなに心配だったら、自分で行って実情を見てくればいいだろう」

「判ったよ、そうするよ」


 私はヴェルゼーアと別れた。


 みんなは自分が出来る準備をしているのに、私は心配と言いながらナニもしていない。

 もう少しフットワークを軽くしないといけないね。

 私はカヌーを取り出して北の空へ飛び立った。


 昔は一人で旅をしていたけど、アークシュリラと出会ってからは一人での旅はしていない。

 話し相手がいない移動がこんなにも退屈で、ナニも起こる気配がないのでとてもヒマだ。

 手持ち無沙汰だと改めて感じた。


 カヌーは巡航速度以上を出しているから、周囲の状況を良く確認しないと大変なコトに成る。

 鳥などが出てきても急には止まれない。

 カヌー自体は止まれるけど……そんなコトをしたら体だけ前に行ってしまうので。船体にぶつかったり押し付けられたりするから肋骨の二、三本は絶対に折れるヒドければ足の骨は折れるかもね。

 最悪、カヌーから体が飛び出してしまうかも知れない。

 まぁ、ベストの機能で空中に浮いてられるから、それによって地上に落下するコトはないけどね。


 みんなはナン日をかけて、エトガヌン連邦に行ったのかなぁ。


 随分前に、エンギルと話し合った場所を通過した。

 この付近は初めて来るところだね。

 それにしても、この周辺て湖が結構密集しているなぁ。

 でも、湿地と云う感じではない。

 全部では無いモノの幾つかの湖は川でつながっているから、軍隊を行軍させるのは大変そうだね。

 湖の傍には小さな街か村も幾つかあった。


 南は砂漠化して困っているのに、この周辺には水が大量にあるんだね。

 イルーツの辺りも湖自体はなかったけど、地面を掘れば水があった。

 私たちは空気から水を確保しているので必要はないが、井戸を掘れば誰でも生活する上で必要な水は確保出来る。


 この星って生き物が生きていく上で必要なモノは、きちんと与えてくれている。

 ただそれを一部のモノが独占をするから、それを必要とするモノに行き届かないだけだと感じる。


 東の空に、多くの大型な鳥が飛んでいる。

 きっと、エサになる生き物が居るのだろう。

 砂漠地帯もそうだったが、ここでもルールがあるのだろう。

 そのルールは、私たちが生きるタメに定めたルールと違うかも知れない。


 でも、ケガをして動けなくなると、そのルールに則って他の生き物たちによって処理をされる。

 人だからと云って、違ったルールと云うコトはない。

 イヤ、動けなくならなくても、旅をしていればそのルールに縛られてしまう。


 人々が考えたコトなんか、街や村の中でしか機能しない。

 大自然の偉大な決まり事には無力だ。


 そんなコトを周囲の状況を見て、何度か考えて居たら遠くに城壁が見えてきた。

 あれがエトガヌン連邦かなぁ。

 いつものようにカヌーを街道から少し離れた所で降りて、私は徒歩で門の所へ行った。


 門では他の街と同じ様にカードを提示して、私は門をくぐった。

 フォルデ公爵領って門番のモノたちが言っていたけど、街自体の雰囲気は他とナニも変わりはないね。

 と思ったのは、直ぐに間違いであると判った。

 大通りには冒険者や商人はまばらに歩いているモノの、ここの住民たちの姿はなかった。

 普通なら、元気に走り回っている子供の姿すら見当たらない。

 違和感を抱くが、それが住民たちがいないコトではないと思う。


 私は漠然とした違和感を抱きながら、大通りをギルドへ向かって歩いて居る。

 ナンらから情報を知るのには、ギルドか酒場に行くのが好都合だ。

 その二つなら、こっちが聞きもしない情報を入手出来る事もある。

 宿屋はだいたいが食堂や酒場も併設していて、それは宿泊せずとも利用は出来る。

 しかし、どのお店でも店先に並ぶ商品は、キズがあったり大きさが異なっていたりと、お世辞にも買いたいと思えるモノではない。

 それを見たら、ここで食事をしなくても良いかとさえ思えてくる。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ