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260 手紙への対応を決める

 貴族から届いた手紙への対応は、返事を書くコトでまとまりつつあった。


「この人物だけなのか、国全体がそうなのかは知らんが、他の国に命令をする奴らだ。失礼な返事を送るとどうなるかは判るだろう」

「戦争でなく、そのモノたちにとっては反抗勢力の鎮圧ていどだけど、ここは必ず戦いになるぞ」

 ビブラエスの発言を、ヴェルゼーアが補足した。


「もし、戦いに成ったとしても、私たちの処とは隣接してないから兵士が来るのは判るし、なんなら到着する前に公爵の城などを潰しても良いよね」

「私たちがここで攻め込まれるのを待つのは、確かにバカバカしいな。そうなったら、打てる手はあるな」


「でも、私たちの処だけ下に見られたと云う訳でなく、この感じってイツもやっているよね」

「アークシュリラ、そうだな、他国のモノに命令をするヤツなら、自国の民だったらナニをしているか判ったモノでないな。この世の中にとって害をなす不要な存在と云うことだ」

「……」

 みんなが話さなかったので、ビブラエスが続けた。

「ヴェルゼーア。ナンならひとっ走り私が忍び込んで、そのモノがどの様な治世をしているか確認してこようか」

「それも一つの手だな。本当に害をなす様なコトをしていたら、いくら貴族でも私たちで対処するべきかもな」


 やはりどの様な人物かを確認しなければ、下手に返事を書くコトは出来ない。

 貴族の全員が、正しいことを行っている訳ではない。


「レファピテル。その公爵領はどの辺りにある」

「エトガヌン連邦は、ここから馬で20日くらいの距離にあるようです。そこから更に10日程度進むと、ジョバル公爵領らしいです」

「馬で一ヶ月か、今回は居城に忍び込む必要もないから、一週間も有れば行って帰ってこられるな。その間はヴェルゼーアから返事をもらっても送らないでくれ、よいなナタス」

「わ、判りました」


 ナタスと呼ばれた男性が慌てて答える。

 この人はナタスと言うんだね。

 運営しているモノの人数こそ少ないが、覚える気が全く無かったので名前と顔は全然一致していない。

 どうするかの結論は、ビブラエスが戻って来てからだね。

 じゃ、ちょっと運営しているモノたちに聞いて見ようかなぁ。


「ヴェルゼーアたちはここではいち住民なので、敬語は使うなって良く言っているよね。それはあなたたちに威張り散らせと言っているんじゃないと思うけど、間違ってる」

 私はヴェルゼーアから順にみんなを見ていく。

 特に意見はないようだ。

「で、どうなの」

 私はナタスらに顔を向けて聞いた。


「染み込んだモノですから、そう簡単には抜けませんな」

 まぁ、回答はナンでも構わない。


「今回の件が普通の冒険者であっても、あなたたちは私たちに相談をしたの?」

「いいえ。しませんよ」

「それはナゼなの?」

「今回は貴族でしたから、一応相談しただけです」

「じゃ、あなたたちは、相手の身分によって対応を変えるの? そんなコトをしていたら、いつかは国の運営に失敗するかもよ」

「……」


「それに、ここはハルメニア王国ではないよ。もし、あなたたちがハルメニア王国のクセが全然抜けない。イヤ、ハルメニアの様にしたいのだったら、ヴェルゼーアたちを領主に仰いでも良いよ」

「ゼファーブル。ナニを言っているんだ」

 ヴェルゼーアが慌てて言ってくるが、私はそれを無視して話を続けた。


「アークシュリラも良いよね」

「私は構わないよ。但し私らはここの住民でなくなるだけだよね」

「それは、ファリチスと同じと言うことだな」

 ビブラエスが言って来た。

 少しは、私の言いたいコトを理解している感じがする。


「そう、本国の飛び地としてしっかり統治してくれるのならまだ判るけど、私たちがわざわざミニオーガラニアやハルメニアを別に作る意味はないし、それに協力する必要もないよね」

「アークシュリラ、そうだね。ここでは魔物であっても意思の疎通が出来れば、私たちと同じ住民なんだからね。それはハルメニアと違うハズだけどね」

「確かにな」

 ビブラエスが小声で言った。


「もし、ハルメニア王国の貴族や大臣がやって来たら、あなたたちはどう対応するつもりなの?」

「それは……」

 私の言いたいコトが解ったかなぁ。


「相手が何者であっても、あなたたちが毅然とした対応をしてくれないのなら、私たちは安心して定住しているコトは出来ないよ」

「そうだな。ハルメニア王国がここを吸収するとは思えないが、なくはない話だ。国王の勅命でここを合併すると通達があったら、お前らはそれに反対をするのか? それとも素直に応じるのか? 返答次第では私も安心して留守を任せられないな」


「ビブラエス。国王がそんなコトをするハズはないぞ」

「ヴェルゼーア。絶対にないと言い切れるか? もし、それが起きたらあの王城に居る、勅命に係わった全員を暗殺して来るが良いな」

「それは、やり過ぎではないでしょうか」

「イヤ、別の国なのだから、そんなコトをしたら普通は戦争になるぞ。たとえば、他の国がハルメニア王国の都市を吸収合併すると通達して来たら、国王はへりくだった手紙を出すのか、違うだろう。そのくらいの決意を持ってやらねばな」


「そうだよ。実際にやるやらないじゃなくて、ビブラエスの言う通りそのくらいの決意を持って欲しいよ。ハルメニア王国から云われても、この街に必要でなければいらないって云ってくれないとね」

「お前ら三人の思いは解るが、このモノたちでは荷が重いな」


「そう言うのならば、他のモノたちにやらせれば良いだけだ。そうなればここに残る必要はないから、ハルメニア王国に帰ることも可能だ。ヴェルゼーアやレファピテル、お前らもだぞ。貴族ならナニをやっても良いとの、考えを棄てろ」

 ビブラエスの発言に、答えを用意出来たモノはいなかった。

 無音の時間が、少しの間流れた。

 それを打ち破ったのはアークシュリラだった。

「だったら、私たちが出て行くコトのない様に頑張ってよ」

「そこは努力します」

「まぁ、ハルメニアから無理難題が来たときは、私たちが対処するよ」

 ヴェルゼーアはナタスらを見て、そう誓った。

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