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258 無礼な手紙

 私だってアークシュリラに云われた、あの戦い方は少し引きずっている。

 引きずっているのは土を作成するタメにあのモノを埋めたコトではなく、ナゼ上下から直撃弾や連弾を放たなかったのかだ。

 決して、あのモノを助けたかった訳では無い。

 それなのに、私は……


 だから私はレファピテルのコトも気になったけど、あえて知らんぷりをして過ごした。


 それは、自分も反省をしなければと言う思いからで、人のコトにかまけているのは違う気がするからね。

 レファピテルだって解っているハズなので、こんな私がとやかく言うよりかは、ナニかきっかけになることが起きればきっと解決する。

 レファピテルもそうだと思うが、私もそうだろう。

 それは他の人たちがどうこう出来る問題ではない。

 絶対に自分自身で、答えを見つけるべき問題だ。

 それは長い時間がかかっても、時がきっと解決してくれるよね。


 部屋に居ても考えがまとまる訳ではないので、私は気分転換に街を散策することにした。

 イルーツは随分広くなって様々な公園などが整備されているから、買い物をしなくても出歩くには困る様なコトはない。


 各神殿の周辺にあるお店や景色も、属性ごとにかなり特徴的になって来ている。

 さっぱり系の料理は光の神殿、高火力を使う料理が多いのが火の神殿って感じだよ。

 風の神殿は当然のことで、甘味処が多いよ。


 また、土の神殿の周りは菜園など農地が広がっているし、水の神殿の周りには湖もある。

 その湖から各神殿などに、川も流れている。

 その川は運河にも活用されているよ。

 川幅のある川が街全体を囲んでいて、一種の堀の役割もはたしている。


 空間の神殿の傍には、ヴェルゼーアやアークシュリラの訓練場が移転してあるし、時の神殿の傍には醸造や蒸留の施設がある。

 最後に闇の神殿の傍には、私とレファピテルが魔法を研究している施設が建っているよ。


 もともと街の中心にあったモノを、街の拡大にともなって移転させてもいる。

 なので今現在、中央部に残る大きな建造物は、議事堂や裁判所など政府庁舎ぐらいしかない。

 今後も街の発展によって、それらは適宜移転や移動をするかもね。


 今は目的もなく歩いてるだけだ。


 この街には冒険者ギルドの様なモノはあるが、世の中で云われている冒険者ギルドではない。

 ナゼ作らないのかと、理由を聞いたことはない。

 作らないのか、出店してくれないかも知らない。

 でも、モドキがあるのだから、きっと後者なのだろう。


 別に今のままでも街の人々は困ってないし、冒険者や商人たちからも不便だと言う話も聞いたコトはない。

 無くても良いモノなら、無理に作る必要はない。


 中央エリアの外れまで来た。

 区別をしている訳ではないが、中央と各神殿の間には畑などが広がっている。

 これは、ただ最初に街を作った際に、周辺部を畑とした名残である。

 今なら更に外側に移して街の一体化を推進しても良いが、収穫したモノを運搬するのが大変なので移動させていないだけだよ。


 ここも発展したなぁ。

 大陸という地の利はあると思うけど、ファリチスではこんなに急激には発展はしなかったなぁ。


『ゼファーブル。直ぐに政府庁舎の会議室へ来て』

 アークシュリラから突然念話が入って、昔を懐かしがっていた私は現実世界に引き戻された。

『判ったよ。直ぐに行くよ』

 私は会議室へ転移すると、そこには街を運営しているモノたちとみんなが揃っている。


「みんな揃って、ナニがあったの」

 私が問うと、街を運営しているモノが答えた。

「先ほど、この様な手紙が届きました」

 そう言って、そのモノは手紙を私に渡して来た。

 それは、ナンカのマークがすかしで入った、とても高級そうな紙だ。

 一通り内容を見てから、私は聞くことにする。

 手紙の内容は早い話、イルーツに視察に行くから宿とかを準備せよだ。

 決して、“して下さい”ではない。


「これは誰の所へ届いたの?」

「個人に宛てたものではなくて、この街自体と言う感じですね」

「街自体? で、それでどうするの」

 私はヴェルゼーアの方を見る。


「そうだな。放置をするのも問題だろうな、紋章入りの手紙で相手はジョバル公爵だからな」

「みんなの考えも、そうなの?」

「仕方ないですね。調べた処では北方にあるエトガヌン連邦の大公爵の様ですからね」

「そのエトナンとかって、そんなに偉いの」

「かなり広大な領土を持っていて、兵士も鍛え抜かれているらしいな」


 領土が広いコトや兵士が強いと偉いはイコールではない。

 あくまでも基準になるのは、人々の役にたっているか害をなしているかだ。

 調べたと言うことは、レファピテルやヴェルゼーアたちは手紙が届くまで、そんな国が有ること自体を知らなかったと思う。

 役にたっている処なら宣伝しなくても旅人たちから、噂の一つも聞こえてきても良いはずだよね。

 そんな程度の国にいるいち貴族ナンだから、これほどの人々が集まって打ち合わせをする事では無い。


「それってビブラエスが確認して来た情報なの?」

「イヤ、私はエトガヌン連邦には行っていないぞ」

「だったら弱い可能性もあるよね。それに私たちは家来でもないのに、準備せよって頭がおかしいんじゃないの?」

 ビブラエスがその国に行って実際に見聞きして居ないから、あくまでも情報源は書物か聞き込みだろう。


「ゼファーブルは反対ナンだね」

 アークシュリラが言ってきた。

「反対ってナニが、反対なの?」

「そのモノが来ることによる、準備をすることだよ」

「そんなの寝床を確保するだけでしょ。他にナニをするの?」

「相手は貴族だぞ。それ相応のもてなしをする必用が有る」

 ヴェルゼーアが、さも当然と言う感じで言ってくる。


「その国って私たちの街にとっては、今までナンの関わりも聞いた事も無いよね。そんな無関係な国の貴族を、ナンでもてなさなきゃならないの?」

「視察ってあるだろう。わざわざ公爵が自ら視察に来るのだから、もてなすのは当然だ」

「だったら、ヴェルゼーアがあっちこっちへ行くときも、もてなされているの?」

「そんなことはない。そもそも私は連絡すらしていないからな。でも、これはすかし入りなので正式な文章だぞ」


 すかし入りだろうがナンであろうが、今時点で関係のない人物に変わりはないし、今後もこの人物とこの街……イヤ私は関わることはないだろう。

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