255 戦いのあとで
私が粉を掛けてコトで、そのモノはその場にうつ伏せた。
「それで効果は判ったが、そのモノはこのままにするのか」
「このままにするなら、テセメレンなんか勿体なくてかけないよ。山の中で土を作ってもらうよ。その前に必要そうなモノを仕訳しないとね」
「実験器具か」
「本とかだね。レファピテルが欲しいモノがあるかもね」
その後思考読解で、ルッスラムを作っていた目的や仲間がいるのか、隠し部屋などがあるのかなどを聞き出して、めぼしいモノを数点頂いた。
そして家ごと虚無空間に移し、山へ行った。
「ヴェルゼーア。バルラデンを取って来るなら行っていいよ」
「イヤ、お前がこのあとナニをするか、見届けてからだ」
「さっきのモノを、この中に入れるだけだよ」
「いいから早くやれ」
私は四角柱を杖で突っついて、ここから中に流入する様に仕組みを変える。
出て来る様に出来るのだから、入れることにするのは私でも出来る。
もうこれが、ナニをしているかとかどの様な仕組みなのかを、解析する必要は無いから杖を使っただけだ。
先ずは、家などを虚無空間の中で粉々にした。
そして虚無空間から直接そのモノと一緒に山の中へ送り込んだ。
杖を使って状態を確認しようとしたけれども、中の状態は判らなかった。
まぁ、魔法で一日くらいしたら消える保護をしたから、このくらいで粉々になるとか死んでいることは無いと思う。
「作業は終わったけど、中でどうなっているかは判んなかったよ」
「そうか。たとえば半分の土がないとしたら、元の状態に戻るのにどのくらい掛かる」
「五百年くらいかなぁ」
「五百年もか」
「一人だからね。だって絶対に一人で考えたとは思えないけど、思考読解でも判んなかったからね」
「それは、記憶操作をされたと云うことなのか」
「イヤ、脳自体が自然に壊れかけた感じかなぁ。相当長く生きていた感じだしね」
脳を操作されても、その作業の記憶は残る。残らないとすれば知らない間に行われたか、自然と壊れるかの二つしかない。
「そうだったな」
「ヴェルゼーアは共犯が判明しなくて良かったんでしょ」
「この感じでは国が絡んでいると思う。あれだけの量だから、個人でどうこう出来る訳はないからな」
「でも、そのモノたちは既にヴェルデムベゼラの処へ行っていると思うよ」
「そうだな、あのモノも忘れていた様だしな」
脳を元気な状態に出来れば依頼したモノの素姓は判るが、私にはそんな技術はない。
これ以上のことは、神々に聞かないと無理だ。
こんなことで神々の手を煩わせるのも、今更だが悪い。
それに火の神や土の神らが相談していたと云うし、何らかの対応をしてくれるだろう。
それによっては、もっと早く山が元の状態に戻るかも知れないよね。
「そうだったね。で、ゼファーブルは高い薬を使ったんだから、あの金属は持って帰るの」
「そうだね。じゃこれ一つは、記念に貰うよ」
私はそう言って、傍に有ったバルラデンを取り外して、残りの地中にある部分を魔法で砕いた。
「ゼファーブルは今残りを砕いたが、地中にある残りの部分は大したコトなかったのか」
「素材別にすれば全部で金貨20枚くらいにはなるけど、砕けばあのモノが食べて土の原料にもなるからね。それにこのバルラデンだけでもおつりはくるよ」
「そうか。原料になるのか」
そして三人でバルラデンだけを取り外して、アークシュリラやヴェルゼーアたちも残りの部分を破壊した」
二人も強烈な魔法を使える様になったんだね。
「ゼファーブル。こんなにバルラデンをもらったけど、あの七色の金属はどうするの」
「ルッスラムねぇ。どうしようか?」
「えっルッスラムなの? あんなに多くあったよ」
「アークシュリラが来たときに、云わなかったっけ。今地中にいるモノが作っていたんだよ」
「そうか。それでなのか」
アークシュリラは、自問自答して納得をしている感じがした。
「それで、持って帰る? 甲冑や武器を作っても良いよ」
「武器はこれで良いし、甲冑は動きにくくなるからいらないよ」
「ヴェルゼーアは」
「この状態で欲しいとは言えないな。それに私もこの剣が有るしな」
「なら置いていく?」
「確かルッスラムは非常に高価だったよね。なら、お金になるから持って帰っても良いかなぁ。運営しているモノに渡せば、街のタメに使ってくれるよね」
「あのモノたちなら、きっと役立ててくれるさ。但し、換金するにしても、あれだけの量を一度に引き受けてくれるところはないし、それを割るのも手こずるだろうな。だから非常に手間だろうけどな」
「換金出来る分量に割るのは、ダルフさんに頼めば良いんだよ。きっとやってくれると思うよ」
「ドワーフなら出来るだろうな。あのモノなら法外に請求をすることもないから、代金は好きなだけ持っていって良いでも良いな」
「ゼファーブル。これってバルラデンだったよね。これも加工が大変だよね」
「そうなんだよね。下手な鍛冶屋では扱えないよ」
「そっか、これも加工するときはダルフさんかなぁ」
「そうなるね。腕の良い人を紹介してもらっても良いけどね」
私たちはアイテム袋にルッスラムをしまって、イルーツに戻った。
そして街を運営しているモノの処へ出向く。
「少し良い」
「どうしたのですか? また問題が起きましたか?」
「いつも私たちが迷惑を掛けているから、今回旅をして拾ったモノで悪いけど、運営の足しにしてくれればと思って持って来たよ」
「どれですか?」
「裏庭に来てくれる」
「ここでは無理と云うことですか? まさか魔物ですか?」
「イヤ、金属の塊だよ」
「そうですか、安心しましたよ。こないだみたいに巨大なミルパーツだと大変ですからね」「その時は、私が換金してきたでしょ」
「ゼファーブル。それは出して文句を言われたからだよ。先に換金しなかったから言っちゃダメだよ」
「アークシュリラ、今回も換金はしてないよ」
「直ぐには出来ないから、仕方ないな。文句はあるだろうが金になることは確かだ。預かって置いてくれ」
「どう言うことなのですか?」
裏庭に着いて、私はアイテム袋からルッスラムを出した。
「うっ、これはルッスラムですか」
その金属は、日の光を浴びて七色に輝いている。
「ハルメニア王国で小さなモノは見たことがありますが、これほどの量……確かに直ぐには換金出来ませんね」
「どうしたのですか?」
聞き覚えのある声がした。
「レファピテル、お帰り! ちょっと旅をしてあれを見つけたから、街のために使ってもらおうと思って持って来たんだよ」
「あっルッスラムですか? それにしてもスゴい量ですね」
「欲しかった?」
「少しは……でも、ここに置いておくのは心配ですね。今回書籍など資料を入れていたアイテム袋がちょうどカラであります。これをあげますのでそれに保管して置いて下さい」
レファピテルはアイテム袋にルッスラムをしまって、運営しているモノに渡した。