253 見えない家
地中は掘らないコトには削れない。
でも、ナニも判らない状態で彫ったり抜いたりはしたくない。
ならば杖を使うだけだ。
私は杖の翼を四角柱に当てて念じた。
四角柱がどのようになっているのか、その形状などの情報が杖を通して私に流れてくる。
杖を持ち直して、翼を撫でてあげた。
ありがとうね。
そしてヴェルゼーアにいう。
「これって、10センチメートルしかバルラデンは使われていないよ――」
私は、ヴェルゼーアに地中にある四角柱の構造などを解説した。
「そうなのか。それで解除はできるのか」
「解除は出来るけど、解除はしないつもりだよ」
「ナゼだ」
「ヴェルゼーアは私が土を作ると言った時、素材はと聞いたよね。その素材の一部にするよ」
「土にするのか」
「欲しいのなら、バルラデンだけ取り外しても良いよ」
「そうか」
「でも、取り外すのは待ってね」
私は土をこねて少しの薬剤を混ぜる。
そして杖で四角柱に合うカバーを作った。
「カバーか」
「そう。これをこの様に被せば、効果は停止するよ」
「判った、それじゃ私が全部取り付けてくる。ゼファーブルは少し休んでいろ」
「良いの」
「私は今まで休憩していた様なモノだからな」
「じゃ、お願い」
ヴェルゼーアは行ってしまった。
次の素材を探さないといけないね。
どうやって、見付けようかなぁ。
私は杖を見て語りかけた。
「お前は、四角柱を仕掛けたモノの居場所は判るの?」
「判るよ。そんなの簡単だよ」
背後から声がする。
振り返るとアークシュリラが立っている。
「アークシュリラ! ナンで居るの?」
「ナンでって、あんな強力な魔法をこんなに近くで何回も放って置いて、私が知らないと思ってたの? そうだったら非常にお目出度い頭だよね」
「ウィンデールの方は良いの」
「あの他に三品を追加することで、許してもらったよ。それにウィンデールもとても気になってた見たいだね」
「ありがとう」
ヴェルゼーアが戻って来て、アークシュリラが居るのに驚くがアークシュリラが云う。
「ヴェルゼーア、火炎を放っていた様だけど、強力な魔法も使えるんだね。それでナニを燃やしたの?」
「シュレーガーだ。飛び回るから焼いた」
「そっか、あれみたいに小さくて飛ぶものは面倒だよね」
そしてしばらくの間、今の状況を説明した。
「なる程ね。で、ゼファーブルは、四角柱を仕掛けたモノを見つけて懲らしめるの?」
「懲らしめてもいいけど、償ってもらおうかなって今回は考えてたよ」
「償い?」
「そう。何年で元に戻るかは判らないけど、この中で土を作ってもらうよ」
「相手がナニモノか判ってるの」
「判らないけど、貴族でも国王でも変わりはないよ」
「それはどうかと思うぞ」
「じゃ、ヴェルゼーアが戦って殺すの?」
「相手が国王や貴族だったら、居所に行って斬りつければ捕まるぞ」
「だから人知れずに埋めるんだよ。それとも捕まえるコトすらやらないつもりなの?」
「まぁ、それは犯人が判ってから言い合ってよ」
アークシュリラは四角柱に手を添えて魔力を感じだした。
逆の手に変えて、同じ様にする。
「ダメだね。ゼファーブルの魔力が覆っていて、元の魔力を感じないよ」
「錬金術だから魔力は使ってないかもよ」
「なら、魔力があるとこはあるの」
ルッスラムが有った処へ転移した。
「ここはどう」
「それにしても、キレイな金属だね」
そう言ってアークシュリラは手を近づけて直ぐに離す。
「うん。判ったよ」
「西の方角に居るよ」
南じゃないのか。
「行くか」
「そうだね。アークシュリラ、案内をお願い」
「直ぐだけどカヌーで行く? それとも馬?」
私たちはアークシュリラを先頭にして、馬で進んでいる。
「あすこだね」
「どこ」
「ゼファーブルは見えないの? ヴェルゼーアは見える?」
「あの木造の家か」
「そうだよ」
そこは見渡す限りただの草原で、木造の家などは見えない。
二人が言うからには、木造の家があるのだろう。
でも、目を瞑って再び見ても家などはない。
私だけ見えないって言うのは、ナゼなんだ。
「ちょっと二人とも。景色はきちんと見えるけど、二人に見えている家だけが私には見えないよ」
「そんなコトがあるのか」
「私たちとゼファーブルの違いで発動する、何らかの結界かなぁ。だとすると魔力量?」
「そうなら、ゼファーブルと一緒に行くのは危険だな」
「そうなるね。私は相手や罠が見えない可能性があるからね」
「私たち二人だけだと、魔法を使う相手には手こずるよね」
「これってベストにある透明になる機能と違うのか」
「そうだよね。見えない理由ナンかどうでも良いよね。見えなくなっている原因を解除すれば良いよね。少し考えるから待っててね」
「いいぞ。じっくり考えてくれ」
物質を透明化する方法は三つあった。
一つは異空間にとばして、必要な時に呼び戻すコトだ。
厳密に言うとこれは透明化ではない。
他は分解出来る限界にまで物質を細かくする。喩えるなら幽体化に近い。
細かくした物質が無くならない様につなぎ止めていなければならず、これは魔力をとてつもなく消費する。
最後が周りの景色を自分に写すコトだ。
簡単に言えば背後の景色を前面に持ってくる感じだよ。
ベストはこれを使っている。
他にもあったがベストにする上で魔力の消費が一番大切だったからね。
私と家の間に後ろの景色を見せているなら、この粉を撒けば乱反射をするからこの状態は解除される。
でも、この粉は高いので、こんな所で撒くのは非常に勿体ない。
粉を使わずにこれを解除するのは、結界内に物理攻撃で一撃を加えれば良い。
なら、私に出来る事は、そう多くはない。
「二人とも家ってどっちに立ってるの、私を玄関の正面に連れて行って」
「ナニをする気だか判らんが、私の手を取れ」
ヴェルゼーアが私を玄関の正面に連れて来てくれた。
「こっちで合ってる」
「そうだ」
「距離は」
「1キロメートルだな」
「玄関も木製だよね」
「木の一枚戸だ。大きさも普通で窓などはない」
「ありがとう。アークシュリラ、絶対にあれを仕掛けたか関与しているモノナンでしょ」
「あすこで感じた魔力と同じだよ。仕掛けたかは不明だけどね」
「判ったよ。今から結界を壊すよ」
「怒っているの」
「別に、怒ってないよ」
私は杖を弓に変えて矢をつがえ様としたら、アークシュリラが再度言って来た。