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252 悩む

 私たちは、ルッスラムを前にしてどうしたら良いかを検討している。

 ふと、私は疑問が湧いて来て、ヴェルゼーアに聞いた。


「ヴェルゼーア、一つ聞いても良い?」

「なんだ」

「ウィンデールの処へ行ってから、山が崩れる夢を見たんだよね。初めて見たのって最近のコト?」

「最初に見たのは二人がイファーセル国に行った次の日だ。相談が出来なくて、そのままにしていたから覚えている」

「そう」


 山は今日、明日崩れる訳ではないし、四角柱も四、五日前に設置された訳でもない。

 これが誰かの意図だとしたら、誰かはこの星か神々かのどちらかだ。

 別にどっちでも、今回は構わない。

 問題はみんなが動けない、このタイミングと云う意図だ。


 私とヴェルゼーアの二人だけで解決させたい。


 それ以外にない。

 もしそうなら、いくら待ってもレファピテルとビブラエスは帰っては来ないだろう。

 それとアークシュリラも戻るコトはない。


「ナニか解ったか」

「じゃ、どうして今日、私の所へ来たの?」

「何度も見たからだが……」

「何度も?」

「あぁ、回数は三回だな。昨日と今日だ」


「この山って今日、明日に崩れる訳じゃないよ。それに四角柱も四、五日前に設置された訳でもないよ。ヴェルゼーアも確認しているから判るよね」

「そうか、アークシュリラが神の処へ行っていて、レファピテルとビブラエスも居ないこの時期に、私が夢を見たのがおかしいと言うのか……解決を急かすならもっと前でも構わないし、なんならみんなが揃ってからの方が良いよな」

「そうだね。もし、これがこの星から私たちに与えられた試練なら、二人で解決出来なくても目途は付けるべきだね」

「そうだな。でも、私ではレファピテルの様に魔法陣を読解して、ゼファーブルを助けられないけどな」

「それはそうだね。私だってビブラエスの様に動くことは出来ないしね。みんな同じ能力があったらその必要はないけど、人ってみんな違うから協力するんだよ」


「そうかもな、ゴーレムやホムンクルスと違うからな」

「ゴーレムやホムンクルスも厳密に言えば全て個体差はあるよ。同じ所の土を捏ねても全く同じってことは無いよ。1センチメートルずれれば、長い年月の間にそこではナニモノかが亡くなっていたって事もあるしね」

「そうなのか」

「イルーツでやらしている作業は、そんなに難しく無いからどの個体でも出来るだよ。私たちのレベルを求めるなら、厳選しないとダメだよね。食堂に配置しているモノだって神々の食事会の時は選んでいるからね」

「それを選んでいたのか。気分でなかったんだな」

「レファピテルだって暇じゃないよ」


「そうだな。私の悪い癖だ。他人の言うことややることは褒めることはないし、欠点を見つけ様としてしまう。早い話、否定できる材料を見つけようとする。それは私が育った環境だから否定しない――」


 ヴェルゼーアは貴族だったから相手を褒めて持ち上げる様なことをすると、自分たちの立場を危うくする。国家にとってそれを行うことが一番良いと判って居ても、自陣営のモノでなければ反対意見を述べるし、あわよくば欠点を見つけてその案件自体をダメにすると言った。

 それが家を守るコトなのかも知れない。

 なので貴族制はその個人だけで家とかがなければ、しがらみとかが少なく良いともね。

 ヴェルゼーアのとりとめの無い独白は続いた。


 私は今言うコトではないよとぶった切るコトも出来たが、ヴェルゼーアの話を聞くべきと判断して黙って聞いた。


「――という訳だ。済まなかった。言わない様には努力するが、もし今後に私がみんなの意見を否定したら注意をしてくれても、発言自体を無視してくれても構わない」

「判ったよ。でもイエスマンばかりだったら、船は山に登ることになるよ。きちんと否定もしてくれないとね」

 今回は、ヴェルゼーアと始めて二人きりで冒険をしている。

 アークシュリラとの違い、違和感はここにあったんだと気付かされた。

 アークシュリラは先ずナニをしても褒めてくれるが、ヴェルゼーアの場合は行っても当然って感じの対応だった。

 ヴェルゼーアも気付いて、変えようとしているんだね。

 でも、子供の時の教育や躾けられたコトって、中々抜けないんだよね。


 それから二人で今の自分に出来るコトを言い合った。

 それを再度検討して、やることを決めた。


「じゃ、そうするか」

「そうだね」

 私たちは山に戻った。

 先ず先にやることは四角柱を取り外すことだ。

 これが無ければ、あとのコトはゆっくりやっても問題はない。


「じゃ、解析をするよ」

 最初よりか真剣に解析を試みる。

 これは魔方陣でないから、レファピテルでもダメかなぁ。

 素材を少し削っては試薬に付けて、その反応を調べる。

 これだけでは、この金属に混ぜられている物質しか判明しない。

 でも、錬金術なら混入しているモノが判れば、ナニをしているかも解る。


 これしか使ってないの?

 これでは圧力を上げるどころか、土すら吸い込めない。

 ヴェルゼーアは、話しかけるコトもなく、ただ黙って私の気が散らぬ様に少し離れて見守ってくれている。

 私はそんなヴェルゼーアに声を掛けた。

「退屈だよね」

「確かにナニもやるコトが無いからな。でも、蒸留や燻製と違って動きがあるのでそれ程ではないぞ」

 私はヴェルゼーアに含まれている物質と、それらを合わした場合に起こる効果を説明した。


「そうか、これだけではゼファーブルの言ってったコトは出来ないのだな」

「そう。だから他の場所に移るよ」

 私たちは、場所を変えて同じコトを繰り返した。

「やっぱり、ここも同じだね。私の考えが、間違ってたのかなぁ」

「ルッスラムは有ったから、ゼファーブルの意見は正しいと思うぞ」

「そうなんだよねぇ」


 ルッスラムは有ったから、絶対に高圧を掛けているハズだ。

 でも、これには圧力を高める効果はない。


「ゼファーブル。素人の思い付きだが、これって地中も全て同じなのか? 錬金術でこう言うモノを作ると、マダラとか部分的に違う素材では作れないモノなのか?」

「部分ごとに強度が変わるから難しいけど、作れなくはないよ。ヴェルゼーア、ありがとう」

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