250 傍の林を探索する
私たちは山の土が行っている付近に辿り着き、一軒の家を見つけた。
しかし、その家はなんだか違う気がしたので、傍にある林を探索していた。
「ゼファーブル。この林ってなんだか変だと思わないか」
「特に変な感じはないよ」
「魔法的なモノではない。大型の魔物がいる訳ではないのに、小鳥や小動物が全くいない」
「そう言えば、いないね。ヴェルゼーアはエネルギーが放出されていると云うの」
それらを追い払っているモノが、地上にいないなら地下と云うことだ。でも、木々の状態から言って、地中から出てくるモノではない。
「そうだ。しかし、私たちでは、この下には穴を掘らなければいけないから、確認のしようがないけどな」
あの小さな家は地下への入り口であって、誰も居住はしていないの?
それじゃ家の周りをキレイにしてたのは、暮らし易くではなく入り口としてなの?
私がヴェルゼーアの言ったことに答えずに考え事をしながら歩いていると、ヴェルゼーアが私を呼んできた。
「ゼファーブル。あすこにナニかが居る、ボーっと歩いてないで気を付けろ」
「うん。ごめん」
ヴェルゼーアは抜刀して身構えている。
「人だな」
ヴェルゼーアは念話でなく、小声で言って来た。
少しして、木の陰から二人の冒険者が出てきた。
一人の男性は剣を抜いていて、もう一人の男は、いつでも魔法が放てる態勢の様だ。
まぁ、林の中だとそう言うモノかもね。
ヴェルゼーアは二人を見てから、剣を鞘に収めた。
私はその二人に見覚えがある。
そう、サリアの宿屋であったモノたちだ。
あの時はこんなに目立つ杖を持ってなかったからか、相手は私に気付いていない感じだ。
私たちは会釈をして、すれ違う。
「我々のテリトリーで、勝手なことはするな」
男性の声が聞こえた。
ヴェルゼーアは素知らぬ顔で、先に歩を早めた。
私はどっちが言ったのか、どう言う意味か気にはなったが、ヴェルゼーアがどんどん進むのでそのあとを急いで追った。
「なんで足を速めたの」
「ゼファーブルは、あのモノたちと戦う気だったのか」
「話をしても良いとは思ったよ」
「相手はそんな気は毛頭無かったぞ」
「そうだったんだね。ヴェルゼーアが剣を鞘に収めたから、大丈夫と勘違いをしたよ」
「そうか、それは済まん。私はただ戦う気が無いコトを示しただけだ。それにアイツらと敵対している訳ではないから、殺したくもなかったしな」
「えっ、あのモノたちって弱いの」
「強くはないな。剣を持っていた方は二太刀持てば上出来だ」
まぁ、ヴェルゼーアと渡り合えるとは考えては居なかったが、二太刀しか持たないのか。
自分の実力が判らずに、私たちにケンカを売る様なまねをするなんて残念な人たちだ。
「そうなの。でも、あの人たちはすれ違う時に自分のテリトリーとか言ってたよね。聞こえたんでしょ」
「言っていたな。ここがアイツらの縄張りってコトになるな。一人は剣士っぽかったが、もう一人は錬金術師だったか」
「そう言えば違うかなぁ。どちらかと云えば魔導師かなぁ」
「そうか、では、山に四角柱を仕込んだモノではない可能性が高いな」
「そうだね。魔導師なら魔方陣を使うと思うよ」
「それじゃ、あのモノたちが何者なのか調べるか、それとも最初の目的通りにいくかだな」
「恐れる必要がないのなら、この下にあるものを……いや、ルッスラムを探そうよ」
「そうだな」
また、私たちは林の中を歩き始めた。
まぁ歩かなければ、この林からも出られないので文句も言っては来ないだろう。
少し歩くと、周囲から怪しい霧が立ち込めてくる。
「来たみたいだね」
「そうだな。援護は頼む」
「頼まれたよ」
私たちはその場に佇んで、相手の出方を見守る。
前方に三人だね。
さっきのモノたちの仲間かなぁ。
かなり離れているけど、後方に二人いる。
前方のモノが霧を発生させたとすると、前方の方が強いのか。
『最初の一撃は、相手に撃たせろ』
『判ったよ』
随分待っているが、一向に攻撃が来ない。
相手も私たちと同じ考えなのだろうか。
『攻撃が来ないね』
『居なくなっていないが、このままにらみ合っていても仕方ない。用心して先に進むか』
『そうしよう』
私たちが一歩踏み出すと、前方から矢が飛んできた。
ヴェルゼーアは、難なくそれを剣で打ち払った。
『もう魔法で始末して良い?』
『その必要はないな。散開したと思ったが、既に姿を消したぞ』
『今の攻撃は威嚇だったの』
『お前はバカなのか。どこの世界に心臓を狙ってくる、威嚇があるか』
矢の威力は全く無かったから、そう思っただけだ。
それは、私が昔に拾った枝で弓と矢を作って、生まれて初めて射た時くらいの威力だったよ。
もしかしたら前方の三人は人ではなく、ゴブリンだったのかもね。
「だったら早くここから出ようよ」
「今の攻撃は、霧を起こして目くらましをしてから矢を射てきた。それを防がれたんだ、もう攻撃の手段はないと考えて良いぞ」
「そう言うモノなの?」
「私だったら打つ手がないな。でも、後少しで林は終わるから、引き返すのではなくそこまでは行こう」
「そうだね。隈無く探したいけど、それを許してくれそうにないしね」
私たちは無事に林を抜けた。
やっぱりあの家に入るしかないかなぁ。
「ゼファーブル。もしあの四角柱を破壊したら、やっぱり不味いコトが起こるか?」
「時間をかけて解除出来れば、ナンにも起きないと思うけどね。それでも対角線上のは影響し合ってるハズだから、同時にやるべきだよ」
「そうだよな。それは私でもそう思う」
これ以上は二人だけではナニも出来ない。
最低でもレファピテルが居れば、二人で解析して取り外すコトが可能だ。
取り外せば、山は崩れないでひとまずは落ち着く。
その後に、取り付けたモノの所へ殴り込んでも良いし、そのまま放置しても構わない。
そう結論を出して、私はヴェルゼーアを見た。