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249 いったいナンだろう

 私たちは四角柱が、ナニをしているかと相談をしている。

 その相談は、水を汲みだしているのではないかと結論に近付きつつあった。


「水をナニに使っているのかは、あれを設置したモノが判れば判明する。しかし、砂漠が近くにあるから、生活用水ではないかと思うけどな」

「ヴェルゼーアは、サリアがこれをやったと思っているの?」

「そうだが」

「あの国では空気から水を取り出す魔方陣があるから、ここから抜き取る必要はないよ」

「良い推理だと思ったが、違ってたか」

「水だとここから取る必要はないけど、その方向性は間違ってないと思うよ。私は土だと思っていたけど、今の話を聞いて溶岩だと思うよ」


「それはナゼだ」

「鉱物はないんだよね」

「あぁ、貴重なモノはないな」

「それは溶岩の中も?」

「そう言うことか。溶岩中に溶けている鉱物と云うことか」

「私はそう思うよ」


「だから、これは石で出来ていないのだな。ゼファーブルは魔法的と云うが、魔方陣でもなく魔法が組み込んであるのか?」

「そ……」

 私は根本的に大きな勘違い、イヤ見逃しをしているコトに気付いた。

 この四角柱が金属なのは、魔法でなく錬金術で行っているとね。


「ごめん。少し削って、この金属がナニか調べるよ」

「鉄や銀ではなさそうだが……手掛かりになりそうだな」

「なるか判んないけどね」


 私は複数の試薬を取り出してから、出ている部分をダガーで少し削ってシャーレに受け取る。

 そして、試薬を垂らしていく。


「ヴェルゼーアの云う通り、鉄や銀ではないね。錬金術が仕込まれているから発色が違うが、これはバルラデンだね」

「本当にバルラデンなのか」

「そうだよ、この診断に間違いはないよ。これだけは断言出来るよ」


「どのくらい地中に埋もれているか判らんが、そんな貴重な金属を普通は埋めるか」

「普通はしないね。この太さで数メートルもあれば一生、イヤ数代の子孫も、お金で買えるものだけは国王並みの贅沢な暮らしが出来るからね」

「そうだよな。でもそれを使っているというコトは、違うモノを採取しているんだろ」

「ヴェルゼーア。これって何本あるか判って居るよね」

「それは、先ほど確認したからな。四方八方に十六本だ」

「一本でもそれだけの価値のあるモノを使って集めるモノって、そんなに多くはないよね。それにここには溶岩の熱などもあるし、山全体を強化して圧力を高めていると考えれば自ずと答えはでるよね」

「まさか、ルッスラムか!」

「そうだよ。神と云う名を与えられた金属。唯一無二の存在だよ。錬金術ではあらゆるモノを産み出すモノと言われているよ」

「魔法でもアルファであり、オメガであると言うモノだな。私は良く判らんかったが、レファピテルが昔に話してくれたぞ」


「結果がでたよ。やはりこの金属が相互に響き合って、山の内部の圧力を高めているね」

「それでは、これが取り出しているわけでないのか」

「圧力を高めっ放しじゃ、いくら山を強化していてもいつかは爆発するよ。加圧は一つの機能でしかないよ」

「幾つもの機能を付与しているから、バルラデンの様な高価な物を使っていたのだな」

「バルラデンはオリハルコンと同様に丈夫だし、また、ミスリルと同様で魔法を付与し易いよ。錬金術で作成するけど、そもそもそれらの合金だしね」

「両方のいいとこ取りだものな。武器の素材でもそうだったな」


「ヴェルゼーアはルッスラムが手に入ったら、甲冑とか剣を作るの」

「その時の気分によるな。しかし、私にはダルフの鍛えた剣があるから、使うことはないけどな」

「で、これからだけど、どうする」

「どうするとは」

「アークシュリラほど正確じゃないけど、錬金術なら時間はまだ掛かるけど運ばれているところは判るよ」

「そうだな。魔法でなく錬金術なら、相手はゼファーブルと同じ錬金術師(アルケミスト)と言うことだな。アークシュリラほどの力はないが私と二人で行くか」

「良いよ。じゃ、もう少し待ってね」


 私は再度四角柱を削り取って、針の様に細長く加工をしていく。

 そして針の上に置く。

 最初はゆれていたが次第に収まってある方向を指し示した。


「こっちの方向だね」

「距離はどのくらいだ」

「多分だけど、馬で半日も行かない距離だね」

「近いな」

「錬金術だからね」

 錬金術でも術者により、この星の裏側にでも送れる。

 そこにしているのが術者の限界だったのか、はたまた居住する、イヤ使用する場所がそこだったかを、これからでは判断出来ない。

 だから私より力がないと侮らない方が良い。

 なんせ山にあんなモノをぶっさせる力があるのは、紛れもない事実だからね。


 私たちはカヌーで、その針が指し示す方向にカヌーを飛ばした。

 針を見ながらなのでゆっくり飛んでいるが、馬で半日ならカヌーだったら直ぐに着く。


「ゼファーブル。林の傍に家があるぞ」

 家は小さい。他にはそれらしきモノはないけど……

「あれかもね。でもその先に行ってみようよ」

「そうだな。間違ったら悪いしな」

 その家を通り過ぎると、針は反転した。

 家を中心にあっちこっちに進んでも、針はあの家の方向を指し示した。

「やっぱり、あれだね」

「そうか、間違いはなさそうだな」


 私たちは家から少し離れた場所でカヌーを下りて、その家に近付いていく。

「どうやって中に入る?」

 透明になっても、ドアや壁をすり抜けるコトは出来ない。

 閉まっているモノが開いたら怪しまれる。


「ここって人は住んでいるのかなぁ」

「どうだろうな。雰囲気から察すると、住んでいるな」

 小さな家だし、手っ取り早く眠ってもらおうかな。

 でも、この家だと少しおかしなコトになる。

 それは出来たてのルッスラムが、非常に高い熱を持っていて熱いと云うことだ。

 それを保管するのには、この家では狭すぎてとても危険だ。


「少し周りをみてみよう。上空では見落としてたモノがあるかも知れないしな」

「そうだね。この家じゃないかもね」


 ヴェルゼーアも違和感があるのだろうかなぁ。


 私たちは林の中を歩いている。

 ここまでは、おかしな所もなく普通の林だ。


「ゼファーブル。ルッスラムはあの山だけで製品が出来るのか? それともその後にナニかの作業が必要なのか?」

「素材があって圧力と熱があれば、素材としては作れるよ。出来たあとで冷やす必要はあるけどね」

「そうなると、あの家ではやはり無理ではないか」

「そうなんだよ。私も引っかかっているよ」


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