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24 アークシュリラに魔法を教える

 私たちは宿屋に戻ってきた。

「アークシュリラ。これからどうする?」

 昨日、印をつけたモノはダルフさんの店からの帰り道で、ギルドや神殿とかによって聞いたりして来た。

 当たり障りのないことなので、思った通り聞いても誰一人として不審に思うモノはいなかった。

 そのためそれの調査は順調に進んでいる。

 印を付けていない項目については、全く目処が立たないでいるけどね……


 それは私たちはエンラント王国やイファーセル国の内部に潜入して、この戦いをやらしている黒幕を見付けだすことは出来ないと言うことだ。

 そばに有るサバラン教の教会や神殿についても潜入調査が出来ずに居る。

 ましてモランデティスと会話する能力も持ち合わせていない。


「ゼファーブル。住み処(すみか)に戻らないでまだここにいるのだったら、私に魔法を教えてよ」

「基本的なことは同じでも、私がいつも使っているのは魔法じゃないよ。私もあれから少しは練習をしているけど上手くいかないんだよ」

「ならば、基本的なことだけで良いよ。ゼファーブルが説明できないことは、小さいけど図書館も有ったからそこで調べるよ」


 アークシュリラが魔法を使えれば、アンデッドも相手が出来るかも知れない。

 それに、私も錬金術以外の技術――物質を変換したり合成したりする以外の魔法や神聖魔法を練習する必要もある。


 ここに居れば食事の準備とかで、練習を中断させることはない。

 しかし、宿屋の部屋で魔力の練り方を実際に行うことは危険を伴う。

 今のアークシュリラだと多分平気だと思うけど、間違って魔力を集めすぎて魔法が発動したら大変だ。

 そこで、私たちは街の外に出て、周囲にナニもない草原に行くことにした。

 先ずアークシュリラに魔力を手に集めてもらう。


「アークシュリラ、体内にある魔力は集められるの?」

「どうするの?」

「私がアークシュリラの体内に有る魔力を動かすから、それを感じてね」

 私はアークシュリラの右手を握り、アークシュリラの体内にある魔力を左手に集めてみる。

「ナンか体の中で動いてるよ」

「これが魔力だよ。これを自分で必要な量を集めて魔法として使うんだよ。先ずは右手でも、左手でも良いから集めてね」


 アークシュリラは何度も挑戦をするが、そんなに簡単には魔力を集めることは出来そうもない。

 魔法を使う職業につくものは、普通は子供の時に遊びながら徐々に覚えていくことだ。

 アークシュリラならば、もしかしたらと思ったけど無理だったね。


 私も手助けとばかりに、幾度となくアークシュリラの体内にある魔力を左右に動かした。

 この感覚だけでも分かって貰えれば良いんだけど……、

 体内にとんでもない量の魔力が有るなら、わざわざ一カ所に集めなくても魔法を発動することは可能だよ。

 しかし、通常はそんなに魔力を持っていないので、どこかに集めないと魔法として使うのは難しい。


 錬金術でも、魔力が多かったり少なかったりすれば、出来上がりに差が出てくる。

 だから、いつでも一定の同じ量を放出する必要が有るよ。

 それからアークシュリラは、夕方になるまで練習を繰り返した。


「そろそろ宿屋に戻ろうか?」

「うん。判ったよ」

 私たちは宿屋に戻ることにした。


「ナンかつかんだ?」

「魔力を移動させることは頭では理解出来るけど、実際にやることが出来ないね」

「そうなんだよね。コツさえ掴めれば良いんだけど、そのコツをつかむのが大変なんだよね」

「そうだよね」


 宿屋に戻って食事を食べ終えてから、大量の魔力を集められないことが判ったのでアークシュリラは部屋でも魔力集めをしている。

 それから気分転換に図書館に行ったり、村の探索をしたりして数日が過ぎた。


「だから俺は見たんだ!」

「ここいらに、そんなのはいないだろ」

「イヤ、俺以外にもドッツらも見たぞ」

 宿屋の食堂はアンデッドを見たと言う騒ぎで賑わっていた。


 私は店員に尋ねた。

「ナンか朝から賑わっているね」

「あっ、ゼファーブルさん、おはようございます。食事ですね準備をしますよ」

「どうしたの?」

「アイツらが薪を取りに行った際に、アンデッドを山中で見たらしいのです」

「アンデッドってここいらにいるの? それはゾンビやスケルトン?」

 少しとぼけてみる。

「イヤ、人魂に連れられている死者の行進らしいです」

「退治は村や国で行うんでしょ」

「多分そうなるかと思います」

 それをやるのは、神殿の神官たちかなぁ。

 どっちにしろ私たちの出番ではない。


 私たちは席について食事がくるのを待つ。

 アークシュリラが私に耳打ちする。

「ゼファーブル。私たちはもっと早くに知っていたのに、今まで騒ぎにならなかったのが不思議だね」

「そうだね。なんで今頃騒ぎ出したかだね」


 食事が運ばれてくる。

 アークシュリラがその店員に聞いた。

「ちょっと聞いて良いですか?」

「ナンですか?」

「あの人たちって鍛冶屋ですよね。普通は薪は使わないんじゃないの?」

「確かに石炭や木炭とかがメインですが、部位によっては薪も使いますよ」

「そうなの、ありがとう」


「ゼファーブル。薪を取りに行った処で遭遇したって感じなんだね。それに一般の人はまだ薪を拾う時期ではないのかなぁ」

「そうだね。今騒ぎになったから、2、3日で結果が判ると思うね。でも暖房用の薪はまだ必要はないけど煮炊きのは年中必用だよね」

「そうだね。薪は早朝……イヤ深夜でなく日中に拾うんじゃないの? じゃ、もうしばらく居る?」

「宿を取ってあるのは一週間だからね。居ても私たちに依頼されることはないと思うけど、どうする?」


 私たちは有名な冒険者ではないから、魔物退治の依頼が向こうからやって来ることはない。

 それに、アークシュリラは魔力を集めることができずにいるし、私もアンデッドに効果のある魔法はあまり使えない。


「私もまだ何も出来ないし、どうしようか?」

「宿泊は延長することが出来ると思うけど、私たちが残っていても今の状態だと全然戦えないよね。困っている人たちを助けてあげたいけど……」

「そうだね」


 少し延長したところでナニも変わらないけど、私たちは様子を見るために更に一週間宿泊を延長した。

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