241 ウィンデールからの呼び出し
今日はサラステーヴァが神殿にいる様だ。
それで私が水の神殿に着くと待っていたかのごとく、サラステーヴァが出てきてサリアの神官たちに神託を授けたと言われた。
律儀なコトだと思ったが、サラステーヴァとしては自分を崇めている国の紋章が、違う神のモノなので困っていたと言われた。
神託はそもそも何度も授けるモノでないし、自分だけでそのコトの神託を与えても度量のない器の小さな神と思われるのがイヤで出来なかった。
今回コチャンティルと同時に現れるコトで、その様なことを気にせずにサリアの神官たちに神託を与えられて、非常に感謝していると言われたよ。
これでサリアにある、コチャンティルのマークが無くなれば、多少は環境が改善されるかなぁ。
それとも崇拝する神をサラステーヴァから、元のコチャンティルに戻すかなぁ。
私が冗談でそう話すと、サラステーヴァは崇拝されなくなっても構わないと言っていたよ。
それは、決して本心ではないと思う。
だって、コチャンティルのマークが掲げられていても、砂漠地帯に地下水とかで泉や湖を作っていたんだからね。
折角ここまで来たのだから闇の神殿にもよって、ゴーレムやホムンクルスの様子を確認した。
自分たちが属している属性の魔法はほぼ使える様に、神々たちにより改造されていた。
それに、ただの雑用係ではなく、神官としての知識や属性に関する教育もしてくれている様だ。
私が思っていたより、それらを気に入ってくれているみたいだね。
邪険に扱われてなくて、本当によかった。
改造されていた箇所を一体一体調べて、レファピテルに報告をした。
水の神殿にいるモノたちは防水仕様になっているので、もしかしたら泳げるのかなぁ。
闇の神殿に配置されているモノは、さすがに霊体や幽体とはなっていなかった。
今後に万が一にでも破壊されるコトがあれば、各神殿で改造された状態で配置がしたいからね。
最初に建てたのは闇と水の神殿で、最近建てたのが火、土、風の神殿である。
私は神殿建設を言い出した手前、神殿が近くにあることによる問題がないかをたまに現地に行って確認しているよ。
近くと云っても、一日弱の距離だけどね。
でも、神殿の傍に植林した木を違う種類に変えたいとか、川や泉を作りたいとか、その神殿だけで完結する問題しか発生していない。
問題が軽いのは良いことであるが、なんだか拍子抜けがする。
最初から連絡をするつもりだったのか、それとも神殿があるからかは判らないが、新たな神が誕生したり、権能が追加されたりする度にビブラエスの処へ連絡が来ているらしい。
その度に本にして配本をするコトはしないが、その連絡は内容を私たちや街を運営しているモノで検討をして、日を置かずに手紙を送る装置で内容を送っている。
ここの図書館にあるモノは、きちんと製本をし直しているよ。
また、神々が属する属性が変わる場合もたまにある。
まだ本が届いてからそれほどの年月が過ぎた訳でもないのだから、昔にまとめたモノでは使い物にならないよね。
それに依頼してないのに、たまに神々が自主的に本を持ってくるコトがある。でも、そのまま公開はしないよ。
必ず私たちか運営しているモノが読んで内容を確認しているし、他の属性に影響するモノだったら、その属性にも渡して確認してもらっている。
それからしばらくして『ウィンデールを呼ぶように』とナニモノかが言っている夢を見た。
ウィンデールは風の神殿を建設するタメに呼んだコトはあるけど、ナンか問題が起きたのかなぁ。
まぁ“呼べ”なら緊急性はない。
ここには風の神殿も有るのだから、緊急なら神官たちを使ってでも直接言いに来ると、高を括って私は朝の支度をしだす。
「ゼファーブル、いますか?」
レファピテルが訪ねて来る。
「こんなに朝早くに、訪ねてくるなんて珍しいね」
「私たちは、ウィンデールにナンかしましたっけ」
「もしかしたら、レファピテルもウィンデールを呼ぶようにと云う夢を見たの?」
「それは夢ではないですよ。私は既に起きて祈りをしていましたから」
う~ん。なんだか、私を見下している気がするけどなぁ。
「それじゃ、これはご神託なの」
「ご神託と言うより、私たちに話したいことが有ると考えるべきですね」
「じゃ、みんなで風の神殿に行って、ウィンデールを呼ぼうか」
「そうですね」
みんなに声を掛けて、風の神殿に集まった。
ここなら魔方陣を使用せずとも、その属性の神々を召喚するコトが可能だ。
少ししてウィンデールが現れる。
「あなたを呼ぶようにと言われたから呼んだよ。ナンか問題があったの?」
「問題か。問題と云えば問題だな」
「勿体ぶらずに、早く言ってよ」
「これだけ神殿が有るのに、ナゼここには光の神殿がない」
「えっ、光の神殿? どうしてあなたがそんな心配をするの?」
「今回は風の神としてここに来た訳ではなく、全ての神々の代表として来ているからだ」
「それは、この地が闇の神々を封印した地だから、イヤかと思ったからだよ。それに光のモノって、他の神々と仲良く出来なそうだよね。ここに来る神々は、自分たちの属性以外の神々とも仲良くしてくれているよ。更に道の整備なども、ここの人々と相談してやってくれてもいて助かっているんだよ。わざわざ、波風を立てるモノを呼ぶ意味は薄いからね」
ウィンデールは納得しているのか、私の言葉に頷いている。
「理由は納得出来たが、お主らがコチャンティルに頼んだこの星のエネルギーについて我々で議論したところ、光の神が神殿すらない所にそんな力を教えたくないと言い出した。そこでだが、今後も光の神殿は建てる気持ちは一切ないで良いか」
「ウィンデール。ここに無いのは光の属性だけなの? 他の属性は全てあるの?」
「そうだなぁ。時と空間はないな」
「空間?」
「重力とも云うが、我々は空間と呼んでいる」
「だったら、それらの神殿も作らなくて良いの?」
「その神々は、そんなことで一々目くじらは立てん」
ウィンデールもこの対談をやりたくない様だ。
言葉の端々に光の神に対するトゲがある。
「私たちは、それらの神々を知りません。神殿は建てますから、紹介して頂けませんか? それとビブラエスの処へ神々についての書籍が届いていますが、そう言った知られざる神々の分も来るのでしょうか」
レファピテルが一気に言った。
「レファピテルだったな。その属性の神殿も建ててくれるのか、それはとても喜ぶだろうな。ビブラエスの処へ届く書籍は、依頼して来たのが水の神なので、その属性は含まれていないだろうな。それはワシから言っておく」
「ありがとうございます」
「それで紹介だが、今から呼ぶか」
「この話が終わりましたら現地を案内しますので、その時にお願いします」
「判った。それでお主らはそのエネルギーを制御出来る様に成ると我々に近づくが、全ての生き物たちがその力を扱える訳ではない。少し調査をして良いか」
「別に構わないよね」
私はみんなの方を見た。
特に反対意見はなさそうだった。