239 コチャンティルの召喚
レファピテルと一緒に召喚の魔方陣を描き、コチャンティルを呼ぶ。
「妾を呼んだのはそなたか?」
「はい。私はレファピテルです」「そうだよ。私はゼファーブルだよ」
「一度にしゃべるでない。これからは、順番にしゃべる様に」
レファピテルが私を見たので、私は頷いた。
「コチャンティルに聞きたいコトがあるんだけど、良い」
「内容によるな」
私はアイテム袋から箱を取り出してから言った。
「この鏡と箱を拾ったんだけど貴方のモノ? ナンかマークが似ているからね」
「どれ、よこしてくれ」
箱と鏡を受け取って、色んな角度から見て調べている。
「そうじゃ、妾のモノだ。よく見つけてくれた。礼を言うぞ」
「それじゃ、ここから南方の砂漠にある神殿も、貴方のモノ?」
「それは妾を祀って居たものである」
「あの神殿には他の属性の神も祀っていた感じがしたけど、本当?」
「そうじゃ。建国以前から妾を崇拝していたが、あの国では他の神も崇める様になっただけじゃ」
「それじゃ、サリアの国章が貴方のマークと同じなのは、貴方のマークを使っているからなの?」
「そうだが、妾が与えたモノだから問題はない」
「それじゃ、もしここに神殿を建てるコトになって、闇や水の神々のマークが貴方の神殿にあっても問題はないよね」
「それは……」
「まだ、ここは国ではないけど旗印はあるよ。それに今後それらの神々から、マークをもらうコトもあるかもよ」
コチャンティルは答えないので、私は話を続けた。
「私の個人的なマークはこの杖だよ。まだ、全く同じモノには出会って無いけど、部分的に似ているモノは有ったよ。どうなの?」
「言いたいことは解ったが、妾では今更どうしようも出来ぬ」
「それはサリアが貴方を崇拝していないからなの」
「そうじゃ。あの神殿に妾が現れても、もう神官たちはいない。だから神託も与えられぬ」
「解ったよ。今後もマークを人々に与えても良いけど、全く同じでは使わせないでくれる」
「ゼファーブル。お主は妾に命令をするのか?」
「命令ってほどじゃ無いけど、今、サリアにマークを変えてもらおうと考えているんだよ。そのために約束してくれる?」
「妾一人が約束しても、他の神々はどうするか判らんな」
「貴方ならここに神殿があるコトが解るよね」
「あぁ、判る」
「闇の神殿は今日は誰もいないが、水の神殿にはネプラリオンが来ているよ」
「その様だな」
「サラステーヴァじゃ無いけど、サリアにマークを変えてもらう神託をお願いしてもらっても良いよ。それと火の神々の神殿や風と土の神々の神殿も、この周辺に建てる予定だからね」
「そうか。火の神々に関わるコトは、妾一人が決める訳にはいかない」
「それもそうだよね。なのでアシュミコルとも相談してよ。それとも今から呼ぶ?」
「呼ぶには及ばん。話は判ったマークのコトは、妾が責任を持ってアシュミコルに伝えよう」
言質は取った。
やらなければアシュミコルに言いつけるコトも出来るし、責任者が知らぬ存ぜぬと言い逃れが出来ないくらいの口論をすれば良い。
でも、相手が火だと戦いになると不利だよね。
「お願いね。それと水の神に国教を変えたからって砂漠化をするのはひどいよ。元にとは言わないから、少し小さく出来ないの」
「砂漠化したのは、妾や火の神々とは一切関係がない。それはお主も判っていると感じるが、土の神々の領分だからな」
「そうなの。崇拝されなくなった腹いせにやったんじゃないの?」
「違うぞ。火災や焦土化なら妾たちだがな」
「それじゃ、砂漠化した件は土の神々に聞くよ」
私は振り返ってアークシュリラを見た。
「私はアークシュリラと言うけど、今日の格好は真っ赤なローブじゃないんだね。それが普段の格好なの」
「ナゼその格好を知っている」
「西側にある山の調査に来たときに、街であなたが血まみれのコボルトを助けたでしょ。それを見たんだよ」
コチャンティルは少し考えて、思い出したのか言った。
「あの時か、あれは火山が噴火しても良い様に対策をしただけだ。いつもは着ておらん」
「そうだったんだね。あの山は多分だけど大丈夫と思うよ」
「あの山は、あと数百年は大丈夫だ」
「また調査に行ったの?」
「妾の仕事だからな」
「ありがとうね」
「礼を言われる様なことではないぞ」
「そう。なら、サリアで火の神々が行っていたコトは、全て図書館に記録としてあるの?」
「それはどう言う意味だ」
「ここではガシララ王朝や光と闇の神々の戦いなど抹消された歴史があったから、聞いただけだよ」
「全ての記録があるかは判らないが、妾たちは抹消はしていない。水や土の神々もその様なコトはしないと思う。もし、無ければサリア自身が封印しているか、紛失したのではないか」
「そうだね。もう一つ良い」
「まだ有るのか」
「うん。あの鏡と箱はコチャンティルの持ち物なんでしょ。ならばどうして魔力を全く感じることが出来ないの? 時間が経ちすぎたから?」
「魔力か。それならアークシュリラ、これに魔力は感じるか?」
そう言ってコチャンティルは自分が付けていたブレスレットを外して、アークシュリラに渡した。
アークシュリラはそれを受け取ると、手を重ねて魔力を調べる。
何度か手を変えてそれを行った。
「全く感じないよ。どうして?」
「これはこの星のエネルギーで作動しておるから、お主らが云う魔力は使っておらん」
「それって私にも出来るの?」
「これは神々が使うものだから、普通の人間では無理じゃ」
「そうか」
アークシュリラはとても残念そうに言った。
「ナゼ悲しむ。お主らには魔力があるではないか」
「それってこの星のエネルギーを使っているんだよね。魔力みたいに理不尽なモノでは無くて……」
「そうじゃ、しかし、魔力を理不尽なモノと言うヤツには初めて会ったぞ」
「だから私たちも使えたらと……そうすれば魔法陣と違い他の生き物たちにも影響が少ないと思ったんだよ」
召喚して私たちとコチャンティルの成り行きを見守っていたレファピテルが話に入って来た。
「コチャンティル。私はレファピテルと申します。その方法を使えばあなたが行っている生き物で無いモノの変化も判ると言うことですよね」
「そうだ。判る」
「私たちではあなたの様な力はありませんが、多くの生き物が幸せに暮らせる世を作りたいと考えています。私は口がある生き物なら思いを伝え会う能力があります。どうかその力を与えてくれませんか? 決して悪用することはしません」
「と、言われてもなぁ。判った教えてやるとはならん」
「何年でも待ちますので、お願いします」
「私もずっと待つよ」
アークシュリラがレファピテルに続いて言った。
「判った。この件もアシュミコルに伝えよう。しかし、これも全ての属性の神と相談することなので、直ぐには結論はでないと心得ておけ」
「ありがとうございます」
私たちはコチャンティルの召喚を終えた。