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237 あっれ変だぞ

 私たちは砂漠で見つけた神殿の礼拝場で、掲げられているマークが気になって話している。


「もし、この国がアグステルバ関連を一切なくして、サラステーヴァにしたら肥沃な土地になるのかなぁ」

「水は今より増えるけど、土地は無理かと思うよ」

「そうだね。サラステーヴァは土の神でなかったよね」

「で、鏡はどうするの?」

「私たちが今ここで納めるのはナンだか違うと感じるよ。せっかくここまで来たのにごめんね」

「ゼファーブルがそう感じるなら、反対はないからそれで良いよ。このままイルーツに戻るなら、この建物の中を少し見ていこうか」

「彫刻ナンかも立派だから、見ていこう」

 私たちは、先ず祭壇に近付いて、彫刻などをよく見ることにした。


 イルーツに建てた神殿も神々によって日々立派になっていっているが、まだ私たちが造ったままの状態である所が多い。

 こう言う神々や神官たちによって長い時間をかけて作り直された神殿は、一時の感情で破壊するのでなく後世に残して欲しい。


「これだけキレイだと、たまに神様が来ているのかなぁ」

「来ていると思うよ。それにお供えの果物とかも腐敗してないから、神様で無くても誰かがね」


 神官やこの建物を管理しているモノに出会わさないし、ここには順路などの表示はない。

 なので、私たちは鍵のかかっていない部屋や通路の装飾など、近くから手当たり次第に見学をして進んで行く。

 そう言っても、家捜しをしている訳でもないので、全ての扉を開ける訳ではなく気の向くまま歩いているよ。

 それにしても柱の一本一本まで精緻な彫刻がある。

 いったい、どれほどの時間を掛けたのだろう。

 本当にスゴいと思う。

 もし、壊すのなら代金を支払うので、イルーツに移転させたいくらいだ。


 幾つかの部屋を見ていくと、今までと雰囲気の違う扉があった。

 その扉を開けてアークシュリラが言った。

「ゼファーブル。ここって礼拝場?」

 確かに礼拝する処の様だが、正面にあった大きな礼拝場ではなく、10人くらいしか入れない。

 本当に小さな礼拝場があった。


「人数によって、礼拝する処を変えていたのかもね」

「それなら礼拝する処は、いくつもあるのかもね。建物が巨大な意味も判ったよ」

 私はサリアが一番栄えていた時の人口を知らないし、ここにどれ程の人々が日々祈りに来ていたのかも判らない。

 今解るのは、祭壇にはあのマークがあるので、ここも同じ神様に祈りを捧げる所と云うことだ。


「このマークって、ホントに神様のマークなのかなぁ」

 祭壇を見ながらアークシュリラがぽつりとつぶやいた。

「これってアグステルバのマークだよ」

「そうだけど、ここって大きな礼拝場と感じが違う気がするよ。もしかしたらサリアのマークってコトはない」


 サリアのマークは、旗などと鏡から写し取ったマークを見比べたから同じと言える。

 しかし、アグステルバのマークは、私たちが記憶していたモノとの比較でしかない。

 よって絶対に同じとは云えない。

 少し違っていても今は解らない。


 私たちが今探しているのはアグステルバの神殿ではなく、この鏡のマーク……納める所を探している。


「そうかもね。じゃこれがサリアのマークだから、様々な神様を一つの神殿に祀っていたってこと」

「それって戦うくらいだから、絶対に喧嘩をするよね。だからイルーツには幾つもの神殿を建てたんだよね」


 確かにイルーツが今ほど人々がいない時ですら、神殿は二つも建っていた。

 ここは人々の都合で祈る場所を変えていたのかなぁ。

 そんなコトをするなら、逆に祈りをしない方が良いとさえ思う。

 例えば違う人の食べかけしかなかったら、わざわざ食事を勧めるコトはしない。

 神への祈りとは、それと同じだ。

 同属なら一遍に祈れば良いし、違う神なら順番に祀らないで別々にするべきだ。


「じゃ、これがいけなかったんだね」

「そうなるね。この神殿をどのくらい使ってたか知らないけど、違う属性の神を一ヶ所で祀っていた様だからね」

「属性ごとに別ければ、肥沃な土地になるの」

「それは神様しだいだね。今更別々にしてもダメかもよ」

「そうかぁ、これは仕方ないよね」


 私たちの想像した通り、幾つもの礼拝する処があった。

「やっぱりね。ここの祭壇は他のと混ざっているのか燭台が多いね」

「これは怒るよね。でも、神官がこんなミスをするのかなぁ」

「それもそうだね。何者かが忍び混んでいて間違って置いたとかね」

「私たちも、忍び混んでいるその中の一人だけどね」

「そうだったね」


 そしてあらかた見たので、私たちは正面入り口へ向かっている。


「どうする。ここから転移しちゃおうか?」

「これくらいの対魔法(アンチマジック)ならあっても関係無いけど、ここから転移するのはやめた方が良いと思うよ」

「折角結界を掛けているんだからね。それを無視したら悪いか」

 そんな崇高な思いはない。

 これほど魔法とかが発達していた処なので、対魔法(アンチマジック)を無視すると違ったモノが発動しそうだと云う勘だよ。


 ようやく私たちは一回りして元の場所に戻って来た。

「結構掛かったね」

「如何せん、適当に歩きすぎたからね」

 歩きすぎた理由は、何カ所かの行き止まりもあったのは事実だ。

 しかし、私たちが良く考えもせずに歩いて居たので、行き止まりで引き返した訳では無くて、同じ処を何度も行ったり来たりをくり返していたからだよ。

 念のために言うけど、決して私たちが方向音痴と云うことではないからね。


「ここには、また来ないとダメかもね」

「ゼファーブルは、この神殿に一緒くたに祀られている神々を、別々にする作業もやるつもりなの? それこそサリアの人々がする事だよ」

「ここら辺には湖が幾つかあったよね。それなのに西側に行ったということは、今のここはサリアの領土じゃないと云うコトじゃない」

「そうかなぁ。この神殿もサリアのマークが今も掲げられているから、領土を放棄したとは思えないよ」

「じゃなんで、この付近に村とかを作ってないの?」

「ここに来るのに私たちと同じ方法が使えるから、わざわざ村を作らなかったとも言えるよ」

 確かに転移することが出来れば、あっちこっちに村を点在させる意味はない。

 一ヶ所に国民を集めていた方が、上に立つものとしては徴兵や収税とか何かと都合が良い。


「それなら、私たちに出来るコトはないね」

 どこかの貴族として、砂漠化についてサリアの国主に文句を言うコトは出来る。

 それはやはり違う。


「考えて見ると、ここって、まだ水が湧いているんだよね」

「そうだね」

「それは、水の神々が祈りを受け入れてるんじゃないの?」

「水の神殿はイルーツにもあるから。アークシュリラ、一旦イルーツに戻ってじっくり考えようよ」

「そうだね。ここで召喚するのはマズいよね」

 私たちは神殿から離れて、イルーツに転移した。


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