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236 神殿を見つける

 私たちは砂漠で発見した湖の周辺を探索したが、いくら探しても神殿も見付けられなかった。

 その上、湖の数などもギルドの人から言われた内容とも合わなかったので、それでここでは無いと考えた。


「じゃ、先へ進もうか」

 私たちは再びカヌーで、サリアの方角と逆に進むコトにした。


 また数日が過ぎた頃、遥か前方にナニかが光り輝いて見える。

 私たちはカヌーを止めてないから、少しずつだがそれに近づいていく。

 まだ良く見えないが、この感じからして、多分だけど湖か池だろう。それに木も生えている様な気がする。


 その輝くモノの正体が、オアシスにある池であると解った。

 それはサリアより小さいが、水辺に降り立つと水面がわずかに波打っている。

 水底から水が湧いているようだ。


「ゼファーブル、これだね」

「ならば、同じ様なモノがあと二つあるハズだね」

 光り輝いているなら上空からでも見つけ易い。イヤ、逆に上空の方がよく判る。

 案の定、かなり遠いが、二つほど光り輝くモノを見つけた。


 そしてカヌーで光り輝くモノに近づくと、それは先ほどと似たオアシスであった。


「アークシュリラ、通って来た処から建物は見えた?」

「なかったよね」

 砂に埋もれていても、その場所は小高い丘状になっているハズだ。

 それがないとなると……しかし、諦めるのはまだ早い。三点が判っているなら、中心は自ずと解る。

 その周辺を重点的に探せば良い。

 それに私たちが移動中だったので、建物は光り輝いている訳ではないから上手く見えなかったコトも考えられる。


「じゃ、中心付近に行こうか」

「やっと冒険になるね」

 この旅自体も戦いこそないが、充分に冒険だと私は思う。


 私たちは三つの泉から等距離になる様に、それを確認しながら少し速度を落として中心へ進んでいく。

 そして前方に一層の大きな建物を見つけた。


「あれが神殿ナンだね」

「砂で埋もれてなくて良かったね。でも、手入れしているのかなぁ」

 建物自体は大きいが高さはないので、数日ずつでも砂嵐が吹けばいつかは砂に埋もれてしまってもおかしくはない。


 私たちは神殿の正面にカヌーを停めた。


「誰かが掃除をして……イヤ、これは魔法かなぁ。微弱だけど魔力を感じるよ」

「結界が貼られているからそれじゃないの」

「確かに結界のはあるけど、サリアとは違った魔力を感じるんだよ」


 サリアと同じでここでも、対魔物(アンチモンスター)対魔法(アンチマジック)の結界はある。しかし、耐魔法(レジストマジック)の結界は無かった。

 まぁこの二つが有れば、結界としては充分だよね。

 対魔法(アンチマジック)の結界があるのに、そこで魔法を放つ力があるモノならば、いくら耐魔法(レジストマジック)の結界で防ごうとしても防ぎきれないからね。


 でも、アークシュリラの言う魔力って、結界ではないかもね。

 ならば用心しないといけない。


「とりあえず建物の中に行こうか? それともまだ外観を眺める?」

「そうだね。建物自体は大きいけど、外観は普通の石積みの神殿だよね」

 見たところ、建造物には変な所はない。


 私たちは正面入り口に通じる数段の階段を上がって、石畳のエントランスホールを通って石柱の間から中に入る。

 一応天井はあるものの、ここもエントランスホールなのだろう。

 ここまで扉はない。


 その先に観音開きの大きな扉がある。

 これが砂などから礼拝する場所など、建物の中にあるモノを守っているのだろう。

 扉を引いていくと、徐々に中の様子が見える様になる。


 私は中を見て思わず、言葉が飛び出した。

「随分と広い礼拝場だね!」

 誰もいない室内に、私の声だけが響いた。


「確かにね。ゼファーブルが構造物を見て驚くなんて、初めてかもね」

 確かに、今までだいたいの建造物は、想像した範囲を超えるコトは無かった。

 それがこの建物は、私の予想を上回ったからね。

 私は扉の感じからして100人ぐらいは入れるモノかなぁと思っていたが、その10倍の1000人は軽く入れる。

 祭壇もどこかのホールの様で精緻な装飾が施されていて、それにとてつもなく大きい。

 それはあくまでも祭壇であり、ステージでは無いモノの、下手な歌劇場より立派だ。


 中央には大きな鏡にあった紋様と同じレリーフが掲げてある。


「ゼファーブル。同じだね」


 私はそれを見て違和感を覚えた。

「あのマークってサリアのマークだよね。あれじゃ晴天の神アグステルバより高い位置にあるよ」

「でも、この神殿はアグステルバを祀っているんじゃないの? だからあのマークもアグステルバだと思うよ」

「なら、どうしてアグステルバとサリアは同じマークを使っているのかなぁ」

「う~ん。ナゼだろうね。建国にアグステルバが係わったとしても、今はサラステーヴァを崇拝しているなら変えないとおかしいよね」


 昔はアグステルバを崇めていたから、畏れ多いが百歩譲って同じマークでも良い。だがしかし、今はサラステーヴァを崇拝しているのだから、それに関連したマークに変更をするべきだ。

 そうしないと表面上はサラステーヴァを祀っていても、本心ではアグステルバを信仰していると思われてしまう。

 いくら優しい神様でも、素直になれるとは思えない。


 それにサラステーヴァは一般に知られている様な、ただの優しい水の神と云う訳ではない。

 津波や河川の氾濫などを起こして地上にあるモノ全てを消し去る、とても嫉妬深い神である。

 私としては嫉妬と云うのは変だと思うが、水の神からビブラエスに届いた本にはそうあった。

 全てを消し去るから汚れや穢れを嫌うキレイ好きに近いが、これは自分が気に入るキレイであって、万人が思うキレイではないけどね。

 もちろん、津波や河川の氾濫など起こすだけで無く、それを防ぐコトもやるよ。


「サラステーヴァを穏やかな神と思って、表面的なことしかやらないから砂漠化が防げていないのかもね」

「困った場合だけ助けてくれと祈っても、日々の生活で信仰心がなければつながりが希薄たから無駄なのにね」


 私たちだって日々つながりのあるモノと、顔見知り程度なら日々つながっているモノを優先する。

 それは神様であっても変わりはない。

 万人に共通の願いなら良いが、願いには相反するコトもある。そのタメ、双方の願いを等しく聞き届けるコトは不可能だからね。

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